宮廷でハープを奏でる王妃マリー・アントワネット 画・Jean-Baptiste André Gautier-Dagoty / Wikimedia, Reprocessed by Vosot Ikeida 文・ぼそっと池井多 歴史をつくるのは嫉妬である 「パンがないならケーキを食べればいいのに」(*1) と言ったために、マリー・アントワネットは殺されたようなものだと思う。 フランス王妃であった彼女はぜいたくな暮らしをしているから民衆の貧困を知らない、と反感を買ったのだ。 しかしこれは、それぞれの認識の中にしか棲めないという人間の宿命を物語っている。彼女はケーキというものがあるのが当たり前の世界に…