J・S・ミル 自由を探究した思想家 (中公新書)作者:関口正司中央公論新社Amazon 2023年6月刊。J・S・ミルといえば、父ジェームズやジェレミー・ベンサムの薫陶を受けた早熟の天才との印象を持つ。本書では、評伝という形式で、ミルの思想の全体像をみる。 マンデヴィル『蜂の寓話』により、人々の欲求が勤労と消費需要を促し文明社会が進展すると主張されたのは17世紀半ば。本書においてミルが大きな影響を受けたとされるベンサム『立法論』は、その数十年後に出版されている。功利主義、自己利益優先の普遍的原理は、先天的で固定的なものとされる道徳や立法観に対置された「最大幸福原理」と結びつく。ミルは、ベンサム…