ずっと見てきたように、第一書房はモダニズム出版に携わってきたが、その一方で古典籍の出版にも執着を示していた。『近代出版史探索Ⅵ』1107で、『古事類苑』の流通と販売にふれておいた。それを簡略にトレースすれば、『古事類苑』出版企画は明治十二年に文部省大書記官にして、明六社の西村茂樹によって提出された。それは日本最大の百科事典を想定したものであった。その編纂に一貫して寄り添ったのは国学者の佐藤誠美で、明治二十九年の第一冊『帝王部』刊行から大正三年の『索引』を含めた完結まで、企画以来三十五年を閲したことなる。 それらの編纂史は第一期の明治十二年から二十三年までだが、文部省編輯局、第二期の二十三年から…