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阿部宣男

(動植物)
あべのりお

阿部宣男(あべのりお)、元板橋区職員。職務としてホタルの人工飼育に取り組み、各地のホタル復活プロジェクトにも協力。マルハナバチの飼育研究も行う。人呼んで「ホタル博士」。ただし、生物学系の博士号を持っているわけではない。法政大学文学部中退。「社会人特別選抜」により茨城大学大学院理工学研究科後期博士課程に学び、学位論文「人の感性に共鳴するホタルの光と快適水圏環境の創成について」*1により、博士(理学)を取得している。

略歴

1955年、板橋区の酒屋の家の男三人兄弟の末っ子として生まれる。
小学生時代、母の郷里、福島県大熊町で水辺の生き物と親しむ。
中学・高校時代、熱帯魚の飼育に熱中する。自著によると、中学時代は不良を気取り、高校時代には暴走族に入って集団走行を繰り返したが、それでも魚の世話は怠らなかった。学校の勉強はからきしでも、趣味の生き物の飼育方法は熱心に独学した。
一浪して、従妹の国会議員のコネで法政大学文学部に進むが、4年で中退。
1980年、板橋区の職員に採用され、父のコネを生かして区立こども動物園に配属される。
1983年、板橋区こども動物園に淡水魚水族館が併設されて、こちらの担当になる。
1989年、温室植物園に転属して、温室の無農薬化に取り組む。同年7月、無農薬化を聞きつけた議員の思いつきから植物園でのホタル飼育を命じられる。
大熊町でホタルの卵とカワニナを採取し、冷房室の小川にはなす。世話らしい世話はしなかったものの、ホタルは無事に羽化し、市民の要望に応えて区は1990年、1991年とホタル観賞会を実施。
1992年、区は温室植物園の閉園と熱帯環境植物館の建設を決定。
阿部は区長の理解をとりつけ、区所有の空き建物を改造して「板橋区ホタル飼育施設」(のちの 東京都板橋区ホタル生態環境館)とし、ホタルの飼育と夜間公開を、以後20年以上にわたって続けることになる。※地方自治体の職員として、同じポストにこれほど長期間勤務し続けることはあまり例を見ない。

1999年から、茨城大学大学院理工学研究科の稲垣輝美の研究(光が人間に与える効果の研究)に協力。

2002年には「ホタルの累代飼育システム及び方法」特許出願(出願人は東京都板橋区)。2003年、公開。

茨城大学の稲垣は、阿部に「社会人特別選抜」により茨城大学大学院理工学研究科後期博士課程を受けることを勧める。阿部は助言に従って受験し2002年に同課程に合格、46歳の大学院生となる。
2005年、修了し、博士(理学)を取得。学位論文名は「人の感性に共鳴するホタルの光と快適水圏環境の創成について」*2
このころ、出向してきていた職員の不手際(阿部の言)により、蛍の卵が大量にカビに犯されてしまう。このとき、カビに対する有効な対策として「日本工業技術研究所」(所長 窪田規)の「ナノ銀」に出会う。これはナノ銀を豚のコラーゲンに担持させたものだった。この後、阿部はホタル飼育のあらゆる場面でナノ銀を活用するようになる。

1996年、栃木県栗山村の蛍再生事業に協力。これを皮切りに、各地のホタル復活プロジェクトに協力(無報酬とのこと)。

2011年、「板橋区ホタル飼育施設」は「板橋ホタル生態環境館」に改称。

「板橋ホタル生態環境館」と「ナノ銀」

阿部はかねてからホタルの発光と自然放射線(ガンマ線)の関係を調べ、毎時0.5マイクロシーベルトを超えると(ホタル自身は元気でも)ホタルの発光器の細胞に異常が生じることを観察していたが、2011年3月、東北地方太平洋沖地震の翌日、ホタル館での放射線計測値がどんどん上がり始めていることに気付く。ナノ銀に除染効果があるのではないかと考え、様々な濃度で試験を繰り返す。
阿部はナノ純銀除染の効果を信じ、推進に向けて活動を開始。政治家の中にも、ナノ純銀除染の信奉者が現れ始める(が、それとともに疑似科学の推進者としてネット上で批判を受けるようにもなる)。

2012年6月、ホタル生態環境館のホタルに奇形出現と下村博文に語る(ホタル生態環境館のホタルの奇形出現

2012年7月、「ふくしま復興ホタルプロジェクト」「いわき湯本温泉ホタルフェスティバル2012」のホタル放流に協力してホタル多数を提供。(これは別の川由来のホタルを放流するのは生態系を軽視した暴挙ではないかとの疑義をネット上でうける)

2012年9月、平成24年度板橋区行政評価結果で「施設の室内通路等が乱雑な状態で、予告もなく休館となる場合も散見され、公開を前提とした施設の体を成しているとは言い難い。」「中長期的な視点に立てば、施設の老朽化や属人的な能力に依存した施設運営がなされていることから、建て替えを契機に廃止を検討されたい」として「休廃止」の評価がくだされた[http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/047/047762.html:title=PDF No.166]が、2013年も板橋区ホタル生態環境館でホタルの夜間一般公開を実施し、多くの人がホタルの夕べに足を運んだ([http://togetter.com/li/519082:title=Togetter])。

2013年12月3日 板橋区議会区民環境委員会で「陳情第94号 板橋区ホタル生態環境館の存続を求める陳情」が取り上げられ、事業の継続や施設の老朽化のほか、他地域へのホタルの提供や公共施設であるホタル館でのクロマルハナバチ飼育なども審議される。*3守る会サイト

2014年1月、区はホタル館のせせらぎに立ち入りホタル幼虫の生息調査を実施し、2月19日の板橋区議会区民環境委員会に対して「ホタル生態環境館におけるホタル等生息調査の結果について」でホタルの幼虫を2匹しか発見できなかった と報告。*4

阿部は退職願いを提出したと2月3日にブログで報告。*5

2014年3月28日、板橋区は阿部を地方公務員法第29条第1項第2号及び同第3号の規定に基づく懲戒免職処分としTogetter*6、残ったホタルの引き受け団体を広報「いたばし」で募集した(※飼育場所・経費などは自己負担)PDF。阿部は、この処分の取消を求めて訴訟を提起(平成26年(行ウ)第256号)*7

4月3日、「板橋区ホタル生態環境館職員の懲戒免職問題に関する」記者会見が行われた。*8

4月10日、「板橋ホタル館の存続を求める会」と「いたばしホタルの安全<いのち>を守る会」は 『ホタルの棲む町』を守るための区民運動記者会見を開催。このなかで支援者は「1月に行われた板橋区によるホタル生息調査が、生態系への配慮を欠いたものであり、実際には、ホタル幼虫を殺し生態環境を破壊するものであった」と指摘*9

板橋ホタル施設の存続を求める会、いたばしホタルの安全<いのち>を守る会の両会は4月21日、「板橋区ホタル生態環境館の再調査を求める陳情」を区議会議長宛に提出*10

板橋区報告「ホタル等生息調査結果と元飼育担当職員の報告数との乖離について」

平成27年1月20日、板橋区は「ホタル等生息調査結果と元飼育担当職員の報告数との乖離について」という報告を発表した。

それによると、夜間公開時には毎年約2万匹飛んでいたと報告されていたが、飼育施設で発見されたホタルは調査時で推定23匹、羽化したものは211匹程度。公開時に飛んでいたホタルのほとんどが外部から持ち込まれていたものと考えられる。また施設で見つかったゲンジボタルのDNAは西日本グループに属するものであり、東北・北関東に属する遺伝子を持つゲンジボタルはみつからなかった、よって25累代飼育されていた大熊町由来のホタルは現時点で存在しない、と結論付けている。(( http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_oshirase/066/066991.html http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_oshirase/066/attached/attach_66991_1.pdf)) (([http://www.sankei.com/region/news/150121/rgn1501210086-n1.html))

名誉棄損で批判区議を提訴

2014年、松崎いたる板橋区議を提訴。これは、阿部の「ナノ銀で放射能除染ができる」との主張やほたるの「累代飼育」について、松崎区議がフェイスブックなどでさまざまな「事実の指摘」を行い、阿部の「社会的評価」を低下させたと主張するものである(平成26年(ワ)第29256号)*11 *12

法政大学教授でニセ科学批判を活発にしている左巻健男は松崎区議の主張を支持して、共産党に
「ニセ科学とたたかう松崎さんを党としても支えていただきたい」と要望を出したが、共産党はこれに反応を示していないことをブログで公開している*13 *14 *15

なお、松崎は会派離脱したことを理由に、2016年12月の赤旗で共産党から除籍処分を受けたことが公表された*16

論文

  • 『人の感性に共鳴するホタルの光と快適水圏環境の創成について』

特許

特許特許情報プラットフォーム

  • 公開特許公報(A)特開 2003−210068(P2003−210068A)
  • 【公開日】平成15年(2003年)7月29日
  • 【発明の名称】ホタルの累代飼育システム及び方法
  • 「ホタルの累代飼育システム及び方法」(特許第3902476号) 出願人は東京都板橋区。特許使用許諾料も区の収入となる。
  • 「ホタルの発光パターン再現システム及びその再現方法、並びにコンピュータ読み取り可能な記録媒体」(特許第4150207号) 出願人は東京都板橋区・安久正紘・稲垣照美

著書

ホタル、こい!―ホタルの光を科学する (ASAHI ECO BOOKS 15)

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ホタルよ、福島にふたたび

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関連図書

ホタルがすきになった日―都会にホタルを取りもどした阿部宣男 (感動ノンフィクションシリーズ)

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