2008年7月、アーツアンドクラフツから刊行された正津勉(1945~)の詩集。 前詩集『遊山』(二〇〇二年思潮社)以来、六年ぶりの詩集である。 一集は二章立て。一章は、稜線の詩。この十余年、持続してきた山巓へ向かう詩篇を収める。山川草木、鳥獣虫魚……。ここにきてようやくその途もおのずから定まってきたようだ。ほぼ四季に準じ構成する。 二章は、下界の詩。この章には日々に属目する詩篇を収める。故郷離心、痼疾病理……。いまさらながらわが精神の暗い傾斜はどうしようもない。 第一詩集『惨事』(一九七二年国文社)の「後書」に書いた。「自嘲、どうもそれだけがのこるものとしてのこったようだ」 じつになんと三十六…