密教はインドにおいて発生した、仏教の一派である。初期の密教は呪術的な要素が多く入っており、極めて土俗的な性格が強いものであった。こうした初期密教を「雑密」と呼ぶ。例えば、初期に成立した「孔雀王呪経」は毒蛇除けの護身呪であり、おまじないに近いものだった。 だがその後、インドでは後発のヒンズー教が急速に力をつけてくる。これに対抗する必要上、密教の理論化が進んだため、洗練された教義に生まれ変わった。これが中期密教である。 唐が西域まで進出したことにより、8世紀前半にインドから中国に入ってきたのが、この中期密教であった。伝えられたのは、主に「大日経」と「金剛頂経」の2つの経典であるが、この2つは中国に…