ノッティンガム出身の二人組ユニット(Neil Tolliday&Simon Mills)。現時点(2007年)でリリースされているアルバムは4枚。アルバムごとに内容はかなり異なるが、「クレバー、かつ微妙にアイロニカルなトラックにきわめて美しいメロディが乗る」という部分では一貫している。
フロア向けに有名ハウス・プロデューサーたち(Ashley Beedle、Francois K)などによってリミックスされた12インチは日本国内のDJたちにも人気が高く、入荷する枚数も限られているため、発売後、即完売してしまうことは都内のレコード店、ハウスDJたちにおいてはすでに常識となっている。『Always』(2001)『Swollen』(2001)『Magic Love』(2003)などの初期シングルは日本でもクラブ・ヒット。なお、bent自身もロンドンのクラブやイベントなどでさかんにDJ活動を行っている。Mix CDは『Fabliclive』『later』の2枚が入手可。
bent名義でリリースされている4枚のオリジナル・アルバムに収録されている曲群はフロア向けとは言い難い。(ときに大胆な)カット・アンド・ペーストや古いレコードからのサンプリング、New Wave時代を彷彿とさせるチープなシンセ音を中心に据えたサウンドは、強いてカテゴライズするなら「レイドバック・ダウンテンポ・ポップス」とでも呼ぶべきだろうか。有名チルアウト・コンピレーション・アルバム『Cafe Del Mar Ibiza Volume 7』にはbentの曲の中でも人気の高い『Swollen』が収録されているので、まずはこの曲から聴いてみることをお薦めする。
ヨーロッパを中心とした世界中のダウンテンポ・ファンに根強い人気を誇っているが、日本のレコード店などで「同ジャンル」の音として分類されるであろうRoyksoppやAir、Zero7などと比べるとまだまだ「カルト」な存在感は否めないところだ。前述のユニットが巧みなプロモーションと口コミによって日本国内でもそれなりのセールスを記録し、来日公演まで果たしたことを考えると、これは主に国内レコード会社、レコード店の怠慢と言わざるを得ない。
しかし2006年10月、bent史上、はじめて男性ヴォーカル(Simon Lord)を前面にフューチャーしたアルバム『Intercept!』がCisco Internationalから国内版リリースされた。だが残念なことに、このアルバムはプロモ展開するにはあまりにも地味、かつストレンジなアルバムであった(アルバム大半の曲はbentにしてはやや凡庸な出来だが、『Stay out all night』や『Leavin'me』はbentの新たな魅力を開花させているように思う)。
bentのアルバム4枚中、もっとも日本のリスナーに好まれるであろうアルバムは、(私の独断だが)おそらく3枚目の『Ariels』(2004)だと思われる。このアルバムで、bentは過去2枚で押し進めた方向性をがらりと変え、DidoやLambも真っ青の「フィメイル・ヴォーカル・ポップス」の「マスターピース」を作ることに成功したと言っても言い過ぎではないだろう。冒頭曲『Comin'back』を聴いた時は、同名別ユニットのCDを誤って購入してしまったのかと思ったくらいだ。
『Ariels』でbentが用いた方法論は驚くほど「普通」かつ「まっとう」なものだ。素直で美しいメロディと流麗な生演奏を前面に押し出し、これまでbentの「顔」であったアイロニカル、かつ(意識的な)キッチュなアレンジは排されている。そして、その試みは驚くほど有効に(そして完璧に)機能している。まずは冒頭の『Comin'back』を聴いてみてほしい。ソウルフル、かつナイーヴな女性ボーカルと(BPM遅めの)四つ打ち、多幸感にみちみちているストリングス・オーケストラ。この曲を筆頭に、ほとんど「神がかっている」と言うしかない、めくるめくポップでメロウな全トラックはあらゆるリスナーの胸にまっすぐに届くことだろう。とくに出勤前、お気に入りの香水をたっぷりつけて、スターバックスでラテかマキアートを飲まないことには会社に行けないような可憐な(?)OLにも胸をはっておすすめしたいアルバムだ。なお、bentはリミキサーとしても活躍しており、Faithless、Funki Porcini、ATBなどのシングル曲を(bent色たっぷりに)リミックスしている。
Album
『Programmed to love』(2001)
Programmed to Love/New Version
Single
『Swollen』(2001)
『Always』(2001)
『Magic Love』(2003)
『Stay The Same』(2003)
『Comin'Back』(2004)
『To Be Loved』(2006)
E.P
『Go!Kommando』(2002)
『Flavour Counntry』(2004)
『To Be Loved Remixed』(2006)
Mix Album
『Fabliclive11』(2003)
『Later』(2005)