佐野洋子の『100万回生きたねこ』という絵本がある。めちゃくちゃ有名な絵本なので、みんな知っていると思う。何度でも転生できるふしぎなオスねこが、何度も生まれては死に、100万回目のねこ生においてある白いメスねこと出会い、死に、二度と生き返らなかったというお話である。 私が生まれる前から家にあったので、幾度も読んだ絵本であるが、正直なところこの絵本がなぜ名作扱いされているのか、子どもの頃からふしぎでならなかった。 母に訊くと「これは大人の物語だから」と意味深なことを言うのみで、するとその「分からなさ」がますます高尚めいてきて、私の中で『100万回生きたねこ』は特別な絵本に位置づけされ、いつかこの…