だからどうだって言うんだ? そんなことは知らない。 「だから」と思考を急いで統合しないで、しばらく考えが出てくるのに任せよう。「だから?」と言われたら、「そんなことは知らない」だ。人間はただ単線的に成長(進歩)して、成長(進歩)した知性からは不合理とみなされる思考を成長(進歩)した思考にきれいさっぱり置き換えるわけではなくて、爬虫類時代の記憶のように古層として持ちつづける。というか、それが最もプリミティブな思考様式や感受性であれば、その後どれだけ知のあり方が更新されても世界に対する感触として鼓動しつづけ、おそらくはリアリティとはそこから供給される。 (保坂和志『小説の誕生』 p.379) 8時…