『ゼロからの『資本論』』 斎藤幸平著, NHK出版, 2023 本書は、非常に難解なマルクスの『資本論』を近年の研究成果を踏まえながら新しい視点で『資本論』を読み進めようというものである。 マルクスの『資本論』は、著者の斎藤氏も言っているように、非常に難解であり、また未完とは言え、第三部におよぶ大作である(マルクス自身が書いたものは第一部のみ)。『資本論』は、「商品」から始まるのであるが、ここで商品には2つの側面がある、という。1つは、「使用価値」である。これは、人間にとっての有用性、つまり人間のさまざまな欲求を満たす力である。もう1つは、「価値」(交換価値)である。この価値が資本主義において…