あれは寒い夜だった。 ずっと頭に違和感を感じていた。再就職した新しい仕事の研修でも集中力に欠けた。ある日歩行中に転倒、その夜は食器を落としてしまい、慌てた妻は救急車を呼んだ。即座に取ったCTで脳腫瘍を告げられたがその辺りの記憶は混然としている。今日であの晩から丸二年が経ったことになる。半年を超える治療を経て、今がある。無我夢中だった。 病の事はいつも頭にある。再び来るかもしれぬという怖れは今の自分の思考回路や行動力の根底に居座ってしまった。毎月経過観察するがそれが全てを解決してくれるわけでもない。しかしくよくよするわけにもいかない。共生するしかない。そんな日々だ。 クルマを運転しながら、隣に座…