2016年発表の本書は、昨日「生存者ゼロ」を紹介した安生正の<ゼロシリーズ>第三作。作者は建設会社勤務とあって、感染症の恐怖を描いた第一作、軍事スリラーとしての第二作より、専門に近い内容かもしれない。今回日本政府や関係者が向き合うことになる脅威は、地球のコアからくる地震や噴火。しかし純粋な自然災害と言えないところが、いかにも作者らしい。 主人公は、地球物理学と土木工学を学んだ技術者木龍。ゼネコン太平洋建設の現場責任者として、浦安人工島で立坑を掘る工事を指揮し、事故を起こしてしまった過去を持つ。退職して50歳となった今は高校教師、事故でPTSDを患って家庭も失ってしまった。 浦安人工島の立坑はそ…