東の院の対《たい》の夫人も品位の添った暮らしをしていた。 女房や童女の服装などにも洗練されたよい趣味を見せていた。 明石の君の山荘に比べて近いことは 花散里《はなちるさと》の強味になって、 源氏は閑暇《ひま》な時を見計らってよくここへ来ていた。 夜をこちらで泊まっていくようなことはない。 性格がきわめて善良で、無邪気で、 自分にはこれだけの運よりないのであると あきらめることを知っていた。 源氏にとってはこの人ほど気安く思われる夫人はなかった。 何かの場合にも 紫夫人とたいした差別のない扱い方を源氏はするのであったから、 軽蔑《けいべつ》する者もなく、 その方へも敬意を表しに行く人が絶えない。…