今回は最近読んだばかりの本のご紹介です。著者は椎名亮輔さん(同志社女子大学教授)、タイトルは『狂気の西洋音楽史〜シュレーバー症例から聞こえてくるもの』。ご本人曰く「あまり反響がなかった」そうですが、私は純粋に楽しめました。知的・音楽的好奇心を大いに刺激する一方で確かにやや難解な面は否めなかったですが。 この書籍が大胆にも試みているのが、西洋音楽史を「狂気」から読み解いていくというもので、ラモーの甥、シューマン、マーラーが取り上げられています。時代区分的にはバロック、ロマン派を経て近代に至る謂わば西洋音楽史の「表舞台」ですが、こうした時代区分というのは基本的には便宜的なものであると考える私には、…