エチオピア・ドルゼ族の文化を素材に,神話,言語から,礼儀作法の所作までを広く分析の対象にして,象徴表現の一般理論を提出しようとする意欲作――. 西欧の認識論は,ルネ・デカルト(René Descartes)の提起した「外界によってもたらされる知識に対して,何が,どのように貢献するのか」ということをめぐって争われてきた.本書で扱われる象徴概念と象徴表現理論そのものは,「認識論」の理論的側面の一翼を担うものではあるが,概念そのものは定義されない.本書に与えられた使命は,以下の概念を示すことにある. 一揃いの雑多な現象(神話から言葉の文彩[あや]まで,宗教儀礼から礼儀作法の所作まで)が同じ処理による…