安藤礼二『縄文論』作品社二〇二二年一一月一〇日第一刷発行、「南島論」を再読した。短いが、これまたじつに刺激的だ。《 つまり、列島における国家の起源には〈母系〉制の社会が位置づけられ、その最も古くまた最も典型的な構造は、「〈姉妹〉が神権を掌握したときは〈兄弟〉が政権を掌握する」というものであった。 》 224頁《 吉本隆明は、列島に生まれた国家が変容を重ねながら、この現代に至っても、古来以来の、いまだ呪術的宗教的な共同の幻想であることを明らかにした。それでは、なぜ『共同幻想論』に引き続いて、来たるべき「南島論」が書き上げられなければならなかったのか。列島の中心部で形となった天皇制国家は、歴史以前…