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森嶋通夫

(一般)
もりしまみちお

経済学者。


http://www.ichigobbs.net/cgi/15bbs/economy/0260/302-306

302: ドラエモン  2004/07/21(Wed) 13:36
森嶋先生こそは、経済学の分裂つまりミクロとマクロへの分裂をThe Economicsへ統合す
ることを主張し実践した最初の大物の一人です。具体的には、全ての経済理論は、彼の
博士論文である「動学的経済理論」つまりノイマンモデルを基礎に置く動学的一般均衡
理論に収斂することを主張し、リカード、マルクス、ワルラス、ケインズらの業績を、
この立場から統一的に再解釈したのです。この結果、ことにマルクス体系の中に隠されて
いた論理構造が明らかにされたことが最も目覚しいことだったために、一部には彼を
マルクシストだと思い込んで批判する向きもありますが、完全な勘違いです。

要するに、毎度お馴染みですが(爆)、彼はThe Modelを求めていたわけですな。これが
彼が普通の日本の経済学者のスケールを大きく超えていた理由でしょう。もっとも、その
背景には高田保馬の影響が明確に存在し、統一社会理論グランドセオリーからみれば、
この大統一経済理論すら部分理論に過ぎないという壮大なリサーチプログラムが存在して
いたことを忘れてはならないでしょう。(続く)
 
303: ドラエモン  2004/07/21(Wed) 13:39
訂正 >>3023行目は、

>博士論文である「動学的経済理論」

から

>博士論文「の題名」で予告された「動学的経済理論」

に訂正。ノイマンモデルを全ての経済学の基礎におくという着想は、ずっと後になって
ヒックスと成長理論の共同研究をやっていたころに到達したものと思う(間違っている
かもしれない。その場合はスマソ)
 
304: ドラエモン  2004/07/21(Wed) 14:06
>>302の続き

そういう大理論を念頭に、森嶋経済学は個別のテーマでも(少なくとも当時は)重要な
貢献を行っている。

1)最も単純化された一般均衡体系であるカッセルモデルと、その実証的な適用を可能
にしたと解釈できるレオンチェフ体系(産業連関表)の研究。代表作に「産業連関論入門」
がある。

2)数学的にはナンセンスの謗りを免れないが、経済学的には重要な含意を持っていた
ヒックスの安定条件論と、数学的には(当時は)より先進的だったサムエルソンの動学的
安定条件論の経済学的無意味さの橋渡しをしたのが、ハーンと根岸だが、その結論である
粗代替性を拡張した森嶋行列の発見。

3)安井や青山など日本の景気循環論(マクロダイナミックス)研究者は、戦前において
すでに世界的なレベルの研究を行っていたが、その過程でリアプーノフ安定という誰もが
忘れていた数学上の概念を再発見・発掘し、それを適用することで非線形体系のリミット
サイクルという循環論の定式化を行った。森嶋も、このグループに属し、非線形景気循環
モデルの開発に貢献したといえると思う。これは、力学系の研究成果の摂取、そして今日
のフラクタル、ケイオスの議論に通ずるものだ。代表作に「資本主義経済の変動理論」。

(さらに続く)
 
305: ドラエモン  2004/07/21(Wed) 14:06
>>304続き

4)資本理論。新古典派資本理論の中核にくる生産関数という概念は、定常状態でなけれ
ば、深刻な問題を孕んでいる。例えば、減価償却概念の曖昧さを見よ。これはケインズの
資本の使用者費用などにもあるわけのわからなさの原因である。森嶋はノイマンによって
一般化されたオーストリア資本理論(固定資本という概念を放棄する)を主張した。この
結果、ケンブリッジ資本論争ではUK側に立ち、サムエルソン一派を手酷く批判したのが、
サムエルソンをして「森嶋はマルクシストに転向した」と言わしめた原因ではないかと
邪推する(笑)

以下、当然ながら30代でエコノメトリックソサイエティー会長に就任するような巨人
であるので、僕ごときでは荷が重過ぎるので要約しきれないような広範かつ重要な業績を
挙げている。

特攻隊の基地で、高木概論を抱えて研究を忘れなかった森嶋先生の霊に、黙祷。
 
306: ドラエモン  2004/07/21(Wed) 14:19
>>302-305への追加

なお、いわゆる「フレンチケインジアン」の不均衡理論の走りであるクラウワーの再決定
仮説(1965)のエッセンシャルな部分は、1955年に発刊された「資本主義経済の変動理
論」の第1章26ページ前後に既に示されている。その意味では、マクロ経済学のミクロ
的基礎に関するケインジアンサイドからの最初の貢献が森嶋によってなされたということ
ができる。

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