大岡信『美をひらく扉』講談社一九九二年四月一日 第二刷を少し読んだ。「ギュスターヴ・モローとモロー美術館」。《 ぞっとするほど清純な裸身を惜しげもなく淫らなシチュエーションの中に置いて、まなざしを遥かな時空に吸いとらせている女や男たち。モローの絵はいわば矛盾の塊りである。だが思えば、矛盾したもの同士の緊密で美しい一体化こそ、美というものの発生装置にほならなかった。 》 75頁《 そのまなざしには、いわば狂おしい肉欲を一瞬にして冷凍させ、非現実世界への憧れに転じてしまったようなある虚無の輝きが宿っている。 》 78頁 こんな文から、味戸ケイコさんの少女、女性のまなざしを連想する。まなざしの向うの…