甲辰年三月十四日。気温摂氏13.1/20.0度。曇。先日、柯宗明『陳澄波を探して - 消された台湾画家の謎』(岩波書店)を読んで岩波から台湾モノでは『台湾の少年』といふ作品も上梓されてゐるのは知つた。 本書の主人公、蔡焜霖は、1930年、日本統治時代の台湾に生まれる。読書が好きで成績優秀な子どもであり、教育者になることを夢見ていたが、少年時代は戦争の色濃い時代でもあった。終戦後、国民党政権が台湾に移ってからは北京語を改めて学び、高校卒業後は町役場に勤めるのだが、ある日憲兵が訪ねてきて……。日本統治時代から戒厳令下の時代、民主化を経て現代まで、時代の荒波に揉まれたある非凡な個人の歴史からたどる台…