ゴダール/映画誌 山田宏一 著 本書は2022年9月に91歳で自死したジャン=リュック・ゴダール監督について書かれた山田宏一氏の映画評論集であり、氏のゴダール論の集大成である。と言っても書かれているのは1960年代のゴダールのみ。『勝手にしやがれ』(1959年)から『ウイークエンド』(1967年)までの15本の長編と9本の短編、いわゆるポーリン・ケイル女史の言う「豊穣の60年代ゴダール」についてだけである。さらに若干の追悼文が収められている(「キネマ旬報」と「ユリイカ」への寄稿文)のみ。なぜそうなっているのだろうか。 山田宏一氏は処女評論集『映画について私が知っている二、三の事柄』(1971年…