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スパイ防止法

(社会)
すぱいぼうしほう

1985年(昭和60年)、大日本帝国の防諜法・軍機保護法・国防保安法*1の復活のため、伊藤宗一郎、北川石松など9名によって議員提案された「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」および前述の法案に修正を加えた「防衛秘密を外国に通報する行為等の防止に関する法律案」のこと。国家機密法(国機法)、国家秘密法(国秘法)とも呼ばれる。
守秘義務の無い一般国民や新聞・雑誌が、取材活動や海外報道などで知りえた「秘密」を伝達したり報道(漏洩)した場合、その取材ルートがどのようなものであれ(海外報道によって知ったものであっても)、五年以下の懲役となる。
「壁に耳あり障子に目ありとお互いにお互いを監視し合った暗い時代を、カメラを向けることはおろか地図も黒塗りにされた要塞の町の暮らしがどんなものであったかを思い起こすとき、とても許せる法案ではない」*2など、国民各層からの大規模な批判と論争の末、世論に押される形で、昭和60年12月20日、法案は審議未了廃案となった。
 
スパイ防止法の歴史
戦前の軍機保護法では機密漏洩防止のため新聞や雑誌の出版物に対する「検閲」が実施され、出版・発行前にあらかじめ軍又は警察等の政府機関によって報道・表現物は審査され、不許可となるケースもあった。
軍機保護法・国防保安法などの治安立法は、ポツダム宣言受諾以降に実施された戦後民主化の過程で、昭和二十年十月四日、GHQ覚書「政治的、民事的、宗教的自由に対する制限の撤廃」によりその効力は停止し、昭和二十二年四月十八日、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」によって終局的に廃止された。
現在では、日本国憲法第二十一条の規定により検閲など情報人権を制限する制度の再立法は固く禁止されており、情報人権を制限する立法・制定法は日本国憲法第九十八条により無効となる。
 
スパイ防止法の問題点
日本弁護士連合会の決議*3が示した「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」の問題点は次の通り。
 

  • 防衛・外交にかかわる「国家秘密」の内容が、実質的に、広範囲・無限定であり、行政当局の恣意的専断を許すことになる。
  • 「探知・収集」、「外国に通報」、「他人に漏らす」などの実行行為及び過失犯など、その行為類型もすべて、広範囲・無限定であり、調査・取材活動、言論・報道活動、日常的会話等のすべてが含まれる。
  • 死刑を含む重罪の提案は、合理的な根拠を欠き、時代の流れに逆行して、著しく異常なものである。
  • 予備・陰謀罪と独立教唆犯の提案も、また、罪刑法定主義と行為責任主義の原則に違反する。

 
尚、現行法では、公務員法、自衛隊法などの立法により、公務員の漏洩行為自体に対する制裁は既に実施済みであり、宮永事件では自衛隊法で厳密に適用され、有罪判決により処断されている。
秘密漏洩行為を処罰する制度が無いとの主張*4があるが、前述の通り現行法で公務員の秘密漏洩は処罰制度があり、事実ではない。

*1:両法とも戦後民主化により廃止。

*2:昭和60年沖縄タイムス社説。

*3:昭和60年10月19日人権擁護大会決議 http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/1985_2.html 修正された「防衛秘密を外国に通報する行為等の防止に関する法律案」に対しては「日弁連第38回定期総会・国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案に反対する決議」がある。 http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/ga_res/1987_2.html

*4:世界基督教統一神霊協会(統一教会)及びその政治組織である国際勝共連合が本法の必要性を特に強く主張しており、両組織の系列紙とされる世界日報がたびたび「スパイ防止法の早期制定」を訴える社説や記事を掲載している。

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