「アフリカビジネス入門」を読む

アフリカビジネス入門 ―地球上最後の巨大市場の実像


 アフリカ経済を俯瞰する手始めとしてふさわしい書籍。アフリカのことをまったく知らなかった自分には非常にためになりました。


 著者は言います、本書の目的は、「アフリカ」と「ビジネス」という2つの言葉を結びつけることである、と。近年(大体2000年以降)のアフリカの経済は、多くの日本人(または日本企業、日本)がイメージするそれとは異なっているのではないか。近年のアフリカ経済の特徴は、ICT(Information and Communication Technology)と金融市場の拡大、中国・韓国・インドの進出、PEファンドの殺到、である。そこに日本の存在感はあまり無い。実は日本はこの波の少し前までアフリカに大きく投資していた(ある意味その果実を受け取ることなく投資は最近縮小傾向にある)。ICTにより大きく変わりつつあるアフリカ市場(資源→資源、金融、ICT)にもう一度チャンスを見いだし、共にアフリカ市場を育てていくべきではなかろうか。
自分がこの本から感じた著者の主張はこのようなものでした。


 著者はケニアで2009年よりベンチャー投資プロジェクトを始めた経験からこの本を書いており、1.アフリカ市場偏重、2.東アフリカ偏重、な印象を受ける部分も多かったですが、データ(数値)を見ると、著者の主張がまったく根拠の無いものではないことも分かります。個人的にデータで面白いなと思ったのは労働人口で2040年にアフリカが世界一となるというものです。比較対象の中に中国、インドといった国が混ざっていたり、そもそもアフリカ全土で集計するのは間違っているのではというつっこみはあるとは思いますが、自分はこと労働人口に関しては分散していてもいいのではないかと思っています。

アフリカの人口の特徴として、他にも注目すべきポイントは、単純に数が多いだけではなく、豊富な若年労働力を多く有しているところである。図1・7は、主要地域、国の労働人口を比較したものであるが、これを見ると今から30年後の2040年にアフリカは、高齢化が進みつつある中国やインドを横目に、世界で最も労働力を有する市場になることが予想されている。(P025)


 なんにせよ、アフリカ市場を世界の何番目に魅力的な市場と捉えるかはともかく、今の日本企業の「中国→インド→ブラジル→アフリカ」という発想では無く、世界の多国籍企業の「中国とインドとブラジルとアフリカ」といった発想でアフリカ市場を捉える必要があるのだと思いました。

日本でアフリカ市場について語られる際に、まずは中国、次にインド、アフリカはその次、もしくはさらにブラジルの次ということで、アフリカ大陸は未来の市場として捉えられることが少なくない。その一方で、世界の多国籍企業にとって、世界市場の獲得方法は階層構造ではなく平面化している。グローバルでシェアを押さえるためには、世界地図上でココと、ココと、ココといったように、である。(P206)


 アフリカのこと少しだけ分かった気がします。読みやすいし、おすすめです。
[他人に勧める度合:★★★★★☆☆☆☆☆]

アフリカビジネス入門 ―地球上最後の巨大市場の実像

アフリカビジネス入門 ―地球上最後の巨大市場の実像