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2006-01-11 台湾政権を揺さぶる中国パンダ外交のしたたかさ

kibashiri2006-01-11

[]台湾政権を揺さぶる中国パンダ外交のしたたかさ 20:19

 しかし、ここ数日間の中国外交のしたたかさには、舌を巻いてしまいます。

 何の話かと申しますと台湾に対する中国のたくみなパンダ外交のことであります。

 パンダまで利用するとは、さすが中国4000年のしたたか外交術なのであります。

 あまり注目されていないようなので今日はこの話題を取り上げてみましょう。



●中国が贈るパンダ2頭決定に、怒りまくる台湾政府〜なんだかよくわからん構図

 まず、7日のCNNニュースから・・・

中国が台湾に贈るパンダ2頭決定

北京──中国政府は6日、台湾に寄贈するパンダ2頭を決定したと発表した。台湾で親大陸感情を高め、独立志向の強い陳水扁総統をゆさぶるのが狙いとみられる。

中国国家林業局の報道官によると、台湾に贈られる予定のパンダは、1歳4か月で体重46キロの雄と、1歳5か月で同48キロの雌。名前は28日に中国国民の投票で決定され、この模様はテレビで放送される。

パンダ寄贈は昨年5月、台湾の最大野党・国民党の指導者2人が、1949年の中台分断以来初めて訪中したことを受け、中国側が発表した。

台湾当局はパンダを受け入れについてまだ結論を出しておらず、中国側の一方的な情報発表に不快感を示している。

2006.01.07 CNNニュース

http://www.cnn.co.jp/world/CNN200601070005.html

 同じく7日の毎日新聞から・・・

中国:台湾へパンダ2頭 陳政権、受け入れ表明せず

 【北京・飯田和郎】中国政府は6日、台湾に贈るジャイアントパンダのオス、メス各1頭を発表した。中国はペアを6月にも台湾側に渡したい考えだが、台湾の陳水扁政権は統一工作の一環として警戒し、受け入れを表明していない。会見した国務院台湾事務弁公室の戴肖峰交流局長は「台湾側が民意に応え、関係部門が積極的に協力することを望む」と語った。

 2頭はいずれも生後約1年4カ月で、四川省のパンダ研究センターで人工飼育された。若さや健康状態などを基準に11頭が選ばれたのち、2頭の相性などをもとに最終決定された。 

毎日新聞 2006年1月7日 東京朝刊

http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/taiwan/news/20060107ddm007030112000c.html

 中国政府が台湾に寄贈するパンダ2頭を決定したらしいですが、「名前は28日に中国国民の投票で決定され、この模様はテレビで放送される」そうですが、いや国を挙げてのイベントのようであります。

 しかし、せっかく贈呈してくれると言うのに、「台湾当局はパンダを受け入れについてまだ結論を出しておらず、中国側の一方的な情報発表に不快感を示している」とはどういうことでしょうか。

 中国側は「台湾側が民意に応え、関係部門が積極的に協力することを望む」と催促しているとは、たかだかパンダの贈呈ごときで、ちょっと変な図式なのであります。

 ・・・

 で、同じく7日の毎日新聞から・・・

中国:台湾へのパンダ選定 「統一工作意図」−−台湾政府が批判

 【香港・成沢健一】台湾行政院(内閣)で対中国政策を担当する大陸委員会の呉〓燮(ごしょうしょう)主任委員(閣僚)は6日、中国政府が台湾に贈るパンダを選定したことについて「統一工作を意図したもので、宣伝を通じて受け入れざるを得ない状況を作り出している。台湾の手続きが終わっていないのに大々的に報道させたことは、台湾を全く尊重していない行為だ」と批判した。台湾の中央通信が伝えた。

 一方、野党・国民党の馬英九主席が市長を務める台北市の市立動物園などは既にパンダ受け入れを表明、同園では特別展示館をパンダ館に改造する計画も進んでいる。 

毎日新聞 2006年1月7日 東京朝刊

http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/taiwan/news/20060107ddm007030113000c.html

 うーん、台湾政府は「統一工作を意図したもので、宣伝を通じて受け入れざるを得ない状況を作り出している。台湾の手続きが終わっていないのに大々的に報道させたことは、台湾を全く尊重していない行為だ」と怒りまくってるようです。

 なんで、たかがパンダをもらうのにそんなに目くじらをたてるのでしょう。

 よくわからない構図であります。

 ましてや、「野党・国民党の馬英九主席が市長を務める台北市の市立動物園などは既にパンダ受け入れを表明、同園では特別展示館をパンダ館に改造する計画も進んでいる」そうじゃないですか。

 ・・・

 台湾政府は少々大人げないと誰しもが思ってしまいます。

 しかし、台湾政府が怒るのも無理はない中国の巧みな外交戦術が裏に隠されていたのでございます。



●台湾政府怒りの拒否表明「パンダのために主権放棄せず」

 昨日(10日)の毎日新聞から・・・

台湾:謝行政院長「パンダのために主権放棄せず」

 【台北・庄司哲也】中国が台湾への贈呈を発表した2頭のジャイアントパンダについて、台湾の謝長廷行政院長(首相)は9日、「台湾に来る可能性は低い」との見方を示した。絶滅の恐れがある動植物の輸出入を規制する「ワシントン条約」では、パンダの移動には輸出国と受け入れ国双方の証明が必要。謝行政院長は、パンダ受け入れには中国が台湾を主権国家と認める必要があると指摘し、「中国はこの点を受け入れず、台湾も2頭のパンダのために主権を放棄することはできない」と述べた。

 中国は6日、台湾に贈るパンダ2頭の選定結果を発表。中国側は「国内移動」だとしているが、台湾政府は、受け入れれば「一つの中国」の原則を認めることにつながりかねないため「ワシントン条約を順守する」との見解をとっている。

毎日新聞 2006年1月10日 東京朝刊

http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/taiwan/news/20060110ddm007030072000c.html

 うーん、なるほどそういうことかあ。

 中国としては中国と台湾は「一つの中国」の建前があるので、台湾へのパンダ寄贈はまさに「国内移動」だから「ワシントン条約」など関係ないという論法で、一方的に計画を進めていたのですね。

 台湾政府の「パンダのために主権を放棄することはできない」とは、オーバーな話ではないわけです。

 ・・・

 いや、中国外交恐るべしであります。



●周到に準備された中国パンダ外交〜中国接近政策の台湾野党国民党とたくみに連携

 ここまでの中国の巧みな外交戦術をまとめてみましょう。

 まずことの発端ですが、今回のパンダ寄贈は昨年5月、台湾の最大野党・国民党の指導者2人が、1949年の中台分断以来初めて訪中したことを受け、中国側が発表したことから始まります。

 ここでポイントなのが昨年訪中したのが「台湾の最大野党・国民党の指導者」であり、現台湾政権与党の民進党は完全に無視されていたのです。

 で、台湾政府の公式のパンダ受け入れ表明を待たずに、野党・国民党の馬英九主席が市長を務める台北市の市立動物園などが、既にパンダ受け入れを表明、同園では特別展示館をパンダ館に改造する計画も進めてきたのでした。

 そのように台湾現政権を無視する形で、一方的に中国政府と台湾野党・国民党の間で進めてきたのが今回のパンダ贈呈計画であったわけです。

 で、中国政府は6日台湾政府を最後まで無視したまま、台湾に寄贈するパンダ2頭を決定、しかもはでなイベントとして「名前は28日に中国国民の投票で決定され、この模様はテレビで放送される」予定まで公表したわけです。

 そして上記記事の台湾政府のパンダ拒否発言とつながっていくのであります。

 ・・・

 台湾野党の国民党は、昨年の歴史的訪中でも示されたとおり、明らかに中国接近の政策をとっています。

 一方、与党の民進党は台湾独立綱領をもちながら、政権発足早々から李登輝氏の「二国論」を廃棄し、中国傾斜路線に一旦転換した過去があります。

 陳水扁氏はかつてテレビ談話で「統合論」を発表し、「中国とは、文化経済の統合をはかり、最終的には政治統合に至る」と明言し、中国傾斜の姿勢をみせていました。

 しかしながら、与党民進党は国民党ほどには中国接近政策に舵を切ってはこなかったのです。

 そのような民進党を揺さぶるために、今回の中国パンダ外交は、中国接近政策の野党国民党とたくみに連携をとりながら周到に準備されたモノでありました。

 ・・・

 うーん、この平和と友好のシンボル的存在であるパンダをも、たくみに利用する中国外交のしたたかさはどうでしょう。

 パンダとはずるいなあ(苦笑

 しかし、この中国の小ずるさはなかなかなものではあります。

 ・・・

 ああ、日本外交も、この中国外交に負けないで少しはしたたかさを示して欲しいと思ったのは、私だけでしょうか。


(木走まさみず)

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飯大蔵飯大蔵 2006/01/11 23:46 お邪魔します。
 パンダ外交は昔もありましたね。夢よもう一度と言うことですかね。パンダが日本に来た時にはワシントン条約はなかったのでしょうか?

 日本の外交もしたたかで、しなやかであって欲しいですね。

 でも変なことを思うのです。過去の日本外交も、決してしたたかではなかったように見えます。しかし今は貿易も活発に出来ていて、世界第2位の経済繁栄にいたっています。
 これは結果論なのでしょうが、延長線上で考えると、今の靖国外交が”実はしたたかだ”と言うのは、夢or悪夢orたわごと?

IRIACIRIAC 2006/01/12 00:34 日本がパンダを贈ったら、全面解決。
・・・なわけないか(w

こえだこえだ 2006/01/12 10:41 パンダかぁ・・かわいいなあ。46kgに48kgって意外と軽いんですね。もっと重いのかと思った。

飯大蔵様
ワシントン条約が採択されたのは1973年、日本が批准したのは1980年、中国からパンダがやってきたのは1972年ですって。
ワシントン条約の歴史って浅いんですね。私もしりませんでしたが・・

しかし・・その国にしかいない野生動物を使って外交を展開するってのは・・やってるのは中国だけじゃないんでしょうけど、なんだかなあ・・って感じですね。

ふにふにふにふに 2006/01/12 10:54 木走さんあけましておめでとうございます。

飯大蔵さん
ワシントン条約が出来たのは1973年ですが、日本が締結したのが1980年なので、最初のパンダの時は関係ないですね。
その後は、寄贈はなくて名目上繁殖目的の貸し出し(パンダの権利は全部中国が持っている)という形ばかりだったと思います。
てことでIRIACさん、日本には台湾に寄贈できるほどの数のパンダさんはいないです(みんな借り物で、1つがい1年間100万ドルだそうなw)
そのため今は唯一上野動物園のリンリン(雄)だけが日本に所有権のあるパンダさんなのです。
寄贈組の子孫が唯一残っているメキシコのチャプルテペック動物園と、2001年から共同繁殖事業(お見合いw)に乗り出していましたが、芳しい結果は出ていないようです。
 
 今の日本の外交ですが、基本的に隣り合った国同士(それも実力が近ければ近いほど)で仲良しこよしというのは、古今東西、殆ど例がないんですよね(仏国と英国・独国なんか典型的ですよね。アジアでもイランとイラク、インドとバングラディッシュ・パキスタン、中国とベトナム・ソビエトetc etc)
 外交ってのは、結局のところ武力の伴わない戦争ですから、使えるネタは何でも使うのが当たり前です。
 中国は靖国を外交の手段として使えると判断している、というか、今までならとっても有効なカードだったということでしょう(韓国は外交手段というより内政対策だけどね)。
そして、小泉首相はそのカードを無意味なものにしたいと思っているわけです(結果うまくいくかどうかは中国のしつこさ次第ですけど、まあ他にも南京だの遺棄化学兵器だのまだまだ種はたっぷりあるし、50年くらいはいちゃもんつけに困らない罠)。
 戦後、焼け野原になったとはいえ、米国が援助してくれる日本の周辺には経済的に日本を脅かすほどの勢力は存在せず(韓国はほっといたらあのざまだし、中国は国内で内戦やってたし)、結果アメリカだけを向いていれば何とかなる(そしてアメリカもそれを望んでいた)ということから、したたかである必要が無かったということなのだと思います。
 そして、国交が復活し、中国・韓国が何か言ってきても、頭を下げているように見えて、「ハイハイ、ワロスワロス」と実際のところ関心を向ける必要が無かった(ある意味、腐れ縁の知人が小金をせびりに来てるので何がしか浮いているお金を渡す)ということでしょう。
 米ソという超大国が争う冷戦下の世界というのは、ある意味外交的には今よりずっとわかりやすい状態だった(選べる選択肢は西側か東側か、日和見か)のだと思います。
 だから”実はしたたか”というか中国・韓国に対する外交のスタンスが変化してきたのは、中国・韓国の(経済的・軍事的)台頭により無視できない存在になってきたということであり、日本が望む望まざるに関係なく、中国・韓国に従属するのではない限り、当然の流れなんだと思います。
 まあ、国同士がいがみ合ってるからといって、国民同士がいがみ合う必要はないんだけどね・・・国が教育で子供の頃から煽っちゃってる上に、それについて日本がどうこう言えないですからねぇ〜
 日本はいわなくても中国・韓国はなんだかんだ言ってきますが、あれは愚痴みたいなもんだからほっとけばいいです(まあ国内で声の大きい各種団体は、反応して騒ぐことがお仕事になっちゃってるので、お察しくださいということで・・・)

ふにふにふにふに 2006/01/12 10:59  うわ、こえださんが先に書いてた orz
 で、ふと思ったんですが、台湾にパンダが貸し出しじゃなくて寄贈されるのなら、これは中国に影響されないパンダ繁殖のチャンスになるんじゃないかなぁと少し思いました。
 メキシコって台湾と国交ないのかなぁ〜

kibashirikibashiri 2006/01/12 17:36 飯大蔵様

>パンダ外交は昔もありましたね。夢よもう一度と言うことですかね。パンダが日本に来た時にはワシントン条約はなかったのでしょうか?

 なかったみたいですね。

> 日本の外交もしたたかで、しなやかであって欲しいですね。
 でも変なことを思うのです。過去の日本外交も、決してしたたかではなかったように見えます。しかし今は貿易も活発に出来ていて、世界第2位の経済繁栄にいたっています。
 これは結果論なのでしょうが、延長線上で考えると、今の靖国外交が”実はしたたかだ”と言うのは、夢or悪夢orたわごと?

 総じて戦後日本の外交政策は大きな「戦略」としては悪くなかったと言うことでしょうね。ただ個別の「戦術」としては、先の国連常任理事国入りの根回し失敗など、反省して欲しい点はけっこうある気がしますです。

IRIAC様

>日本がパンダを贈ったら、全面解決。
・・・なわけないか(w

 コメントどうもです。ええ、「全面解決」には至らないでしょうねえ(苦笑


こえだ様

>パンダかぁ・・かわいいなあ。46kgに48kgって意外と軽いんですね。もっと重いのかと思った。

 たぶん、1才半はまだ子供なのではないでしょうか。大人なら数百キロはあると思いますよ。

>しかし・・その国にしかいない野生動物を使って外交を展開するってのは・・やってるのは中国だけじゃないんでしょうけど、なんだかなあ・・って感じですね。

 オーストラリアなども「コアラ外交」してますしねえ。

ふにふに様

>木走さんあけましておめでとうございます。

 こちらこそ今年もよろしくお願いいたしますです。

>てことでIRIACさん、日本には台湾に寄贈できるほどの数のパンダさんはいないです(みんな借り物で、1つがい1年間100万ドルだそうなw)
そのため今は唯一上野動物園のリンリン(雄)だけが日本に所有権のあるパンダさんなのです。
寄贈組の子孫が唯一残っているメキシコのチャプルテペック動物園と、2001年から共同繁殖事業(お見合いw)に乗り出していましたが、芳しい結果は出ていないようです。
 ふーん、ためになりました。
 しかし、ふにふにさんは、なんでそんなにパンダに詳しいのですか(笑

>そして、小泉首相はそのカードを無意味なものにしたいと思っているわけです(結果うまくいくかどうかは中国のしつこさ次第ですけど、まあ他にも南京だの遺棄化学兵器だのまだまだ種はたっぷりあるし、50年くらいはいちゃもんつけに困らない罠)。
 戦後、焼け野原になったとはいえ、米国が援助してくれる日本の周辺には経済的に日本を脅かすほどの勢力は存在せず(韓国はほっといたらあのざまだし、中国は国内で内戦やってたし)、結果アメリカだけを向いていれば何とかなる(そしてアメリカもそれを望んでいた)ということから、したたかである必要が無かったということなのだと思います。
 なるほど、今までは苦労がなかった環境だということですね。

> まあ、国同士がいがみ合ってるからといって、国民同士がいがみ合う必要はないんだけどね・・・国が教育で子供の頃から煽っちゃってる上に、それについて日本がどうこう言えないですからねぇ〜
 日本はいわなくても中国・韓国はなんだかんだ言ってきますが、あれは愚痴みたいなもんだからほっとけばいいです(まあ国内で声の大きい各種団体は、反応して騒ぐことがお仕事になっちゃってるので、お察しくださいということで・・・)

 ウフフフ(苦笑



 みなさま、コメントありがとうございます。

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