木走日記

場末の時事評論

一番悪いのは誰だ

kibashiri2006-03-31


 ある小学校のあるクラスの道徳の時間のことです。

(先生)「今日の道徳の時間は、橋本君が班長の橋本班で最近起こった困った事件についてみんなで児童劇として考えてみたいと思います。」

児童劇「一番悪いのは誰だ」


(登場人物)

村岡くん
滝川くん
橋本くん
元宿くん
野中くん
青木くん
日本歯科医師連盟幹部くん
学級委員長くん

(シーン1)(給食の時間)

<説明>舞台中央に四人掛けのテーブルがありそこに四人分の給食が配置されている。
左側には日本歯科医師連盟幹部くんが一人、向かい合って右側には橋本くんと野中くんが並んで座っている。

日本歯科医師連盟幹部くん「橋本くん、この封筒には「いちおくえん」の小切手が入っています。僕たちは、橋本くんたちにいっぱいお世話になってるしこれからもお世話になりたいからこの「いちおくえん」を君たちに差し上げます。どうぞ、受け取って下さい」

日本歯科医師連盟幹部くんはそういって「いちおくえん」と書いた封筒を橋本くんに手渡す。)
(橋本くんと野中くんは顔を見合わせ笑顔になる。)

橋本くん「どうもありがとう。」
野中くん「・・・(微笑)」

(橋本くん、封筒をズボンのぽっけに入れるが、ぽっけが小さくて一端床に封筒が落ちる。)
(観客失笑)
(橋本くん、あわてて封筒を拾いぽっけに強引にしまう)
(舞台下手より青木くんが慌てて登場、着席)

青木くん「いやすみません、遅れました」

(橋本くん、ズボンのぽっけからくしゃくしゃの封筒を取り出し「いちおくえん」という字を青木君に見せながら)
橋本くん「青木くん、今、日本歯科医師連盟幹部くんから「いちおくえん」をもらいました」
青木くん「ほほう、それはそれはありがとうございました」

(橋本くんはまたぽっけに封筒を詰め込みそして4人は楽しそうに大声で笑う)

・・・舞台暗転・・・




(シーン2)(学級会)

<説明>舞台左手に学級委員長くんが座っている。右手には、日本歯科医師連盟幹部くん、橋本くん、野中くん、青木くん、滝川くん、元宿くん、村岡くんの7人が座っている。

学級委員長くん「今の話しに間違いはありませんね、日本歯科医師連盟幹部くん」

日本歯科医師連盟幹部くんは泣きながら起立する)
 
日本歯科医師連盟幹部くん「はい、間違い有りません。(えーん、えーん)」
学級委員長くん「よろしい、日本歯科医師連盟幹部くんは退場して下さい」

日本歯科医師連盟幹部くんは泣きながら退場する)

学級委員長くん「橋本くん。今の話が事実ならば、橋本班に「いちおくえん」が渡されたことになりますが、事実と認めますか」

(橋本くん、頭のポマードを気にしながら起立する)

橋本くん「(斜め上を見上げながら)僕はその日のことは全然覚えていません」
学級委員長くん「野中くんはどうですか」
野中くん「(口をへの字にして)記憶にございません」
学級委員長くん「青木くんは認めますか」
青木くん「他の人がその場に僕がいたというならば、いたんでしょうなあ、たぶん」

(観客失笑)

学級委員長くん「やれやれ、渡した本人の日本歯科医師連盟幹部くんがすべて白状しているんですよ。「いちおくえん」を橋本班が受け取ったのは間違いないはずです。橋本班会計係の滝川くん、班の会計ノートに「いちおくえん」の記載がないのはどういうことですか?」

(滝川くん、となりの元宿くんとひそひそ相談をし始める。時々、ちらちらと横の村岡くんの顔を見ながら内緒話をする。)

(観客失笑)

滝川くん「委員長。本当の話をします。「いちおくえん」は確かにもらいましたが、会計ノートに書かなかったのは、村岡くんが班の会議で僕に「この「いちおくえん」はないしょにしちゃおう、だから滝川くんは会計ノートに書いちゃだめだよ」って命令したからです」

(観客ザワザワ)

(村岡くん、驚いた顔で思わず立ち上がる)

村岡くん「そんな馬鹿な話があるわけない。僕は「いちおくえん」を受け取った給食のとき、同席していなかったし、班の会計係でもなかった。だいいち、僕は最近、橋本班をやめたどころか転校したじゃないか」

学級委員長くん「村岡くんは着席して下さい。滝川くん、今の話しに間違い有りませんね」
滝川くん「はい、間違い有りません。僕はお母さんにも本当のことを言ってと言われました」

(観客失笑)

学級委員長くん「よろしい、犯人は村岡くんと認めます。先生に報告しましょう」
村岡くん「そんな・・・」

・・・舞台暗転・・・

(先生)「児童劇はこれで終わりです。
 先生は学級委員長くんからこの話を報告受けて、いろいろな子からも話を聞きました。先生の結論は、村岡くんは無罪です」

(観客ザワザワ)

(先生)「みなさん、一緒に考えてみましょう。そもそも「いちおくえん」はどこにいったのでしょうか。先生は、滝川くんの発言をまったく信用していません。そもそも橋本くん達の責任にしないために、今はこの学校にいない村岡くんに罪をなすりつけただけなのかも知れません。」

(観客シーン)

(先生)「もういちど、みなさんに考えてほしい。そもそも「いちおくえん」はどこにいったのでしょうか。」

(先生)「一番悪いことをしたのは誰なのでしょうか」

(観客)「そんなの決まってるじゃないか」

(観客)「そうだよあいつに決まってる」

(観客)「でも、先生もう橋本班の話はあきちゃったよ、こんな話ばかりだし。それよりさあ、永田くんのインチキ手紙の話をしおうよ、あっちのほうが全然おもしろいよ、なあ、みんな」

(観客)「うん、ぜんぜんそっちがおもしろいよな。永田くんと西澤くんを呼び出してどっちがどれくらい嘘つきか、みてみたいよな」

(そうだ、そうだ、の声多数)

(先生)「・・・」

(先生)「やれやれ、一番の問題は君たちこのクラス全員にあるのかもしれませんね。」


*このエントリーはフィクションであり実在の人物・団体とは一切関係がありません。(たぶん)



(木走まさみず)



<参考記事>
本日(31日)の各新聞社説

【朝日社説】村岡被告無罪 橋本氏が答える番だ
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【読売社説】[1億ヤミ献金]「政界の闇の深さを示す無罪判決」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060330ig90.htm
【毎日社説】裏献金判決 では、一番悪いのは誰だ
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060331k0000m070171000c.html
【産経社説】村岡氏無罪判決 真相は一体どこにあるか
http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm
【日経社説】「真犯人」を示唆した村岡判決(3/31)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20060330MS3M3000430032006.html