木走日記

場末の時事評論

いじめ自殺問題。一人の医師の暴論〜首吊り自殺体のリアルな写真を当事者達に見せよ

●「自殺の連鎖止めたい」 中1の遺族、実名で訴え 大阪

 今日の朝日新聞記事から・・・

「自殺の連鎖止めたい」 中1の遺族、実名で訴え 大阪
2006年11月14日23時37分
 大阪府富田林市立第一中学校1年の女子生徒が自殺した問題で、生徒の父親の大川和夫さん(49)と兄の敏夫さん(28)が14日夜、自宅近くで報道各社の取材に応じた。和夫さんらは、亡くなった次女の理恵さん(12)の実名を公表したうえで、亡くなる直前、理恵さんが毎朝のように「しんどい」と訴えて登校を渋っていたことを明らかにした。和夫さんは「娘のように自殺する子がいなくなってほしい。いじめに悩んでいる子は一人で抱え込まず、周りに相談してほしい」と呼びかけた。

 実名を公表したことについて、和夫さんは「娘がなぜ死んだのか明らかにして全国で続く自殺の連鎖を止めたい」と述べた。

 同中学校の調査で、理恵さんに対するいじめや嫌がらせがあったことが分かっている。和夫さんは「いじめた子たちには謝罪をしてほしいが、それを言っても娘は帰ってこない。怒りをどこに持っていけばいいのか。せめて真相を知りたい」と話した。

 2人によると、理恵さんは生まれつき体の成長が遅くなる病気で、小学校時代から、たびたび「チビ」とからかわれていた。理恵さん自身も気にしていたが、医師から処方された成長促進の薬が入った注射を打ちながら「がんばって大きくなるねん」と話していたという。かかりつけの病院の看護師にあこがれ、「看護師になりたい」と夢を語っていた。

 ところが今春、中学校に入学してから様子が変わってきたという。無言で帰宅し、自室に閉じこもって泣くことが何度かあった。母親が「学校に相談しよか」と持ちかけても「いじめられるからやめて」と拒んだ。

 最近では毎朝のように「しんどい」と訴え、登校を渋っていた。亡くなる1週間ほど前には「学校には行きたくない。家庭教師を雇ってほしい」と頼んだ。自殺する3日前も「学校に行きたくない」と言って休んだ。

 自殺の前日、部活を終えて帰宅した理恵さんは「カラオケに行きたい」と言い、家族で出かけた。理恵さんは好きなアニメの主題歌などを笑顔で歌っていたという。敏夫さんは「妹は何かサインを出していたのかも知れない。見つけられていれば」と悔やむ。

 自殺の理由について、2人は「中学校からの十分な説明もなく、はっきりとは分からない」としながらも、和夫さんは「体のことでからかわれたり嫌がらせを受けたりしたことで、すごい屈辱感を味わったことが原因ではないか」と話している。

http://www.asahi.com/national/update/1114/OSK200611140089.html

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●一人の医師の暴論〜首吊り自殺体のリアルな写真を当事者達に見せよ

 昨日、久しぶりに高校の時の友人Sと会食をしました。
 Sは都内の某大学病院に勤務医としてつとめているオヤジでして、酒が入ると時事問題から趣味の音楽の話まで実に話し好きでまたその話がなかなか含蓄があって興味深いのです。

 で、話が最近のいじめ自殺問題になったのでした。

木走「最近いじめによる自殺が連鎖的に起きているよね。どうも俺らの頃といじめの陰湿さがちがってきているんだろうか。それともいじめられるほうにも耐性とかが弱くなっているんだろうか」
S「俺は教育問題は門外漢だからなあ、よくは理解していないが、おそらくいじめる側に手加減をする能力が欠落してきているのが主因なんじゃないかな」
木「昔から悪ガキのいじめはあったが加減を知っていたよな。そういえば昔のガキは喧嘩の仕方も知っていたよな、道具など使わず素手で喧嘩して致命傷をおわせないようにしたもんだ」
S「肉体的打撃も苦痛だが、精神的打撃のほうが若年者にはこたえてしまうのだろうな。自殺に追いつめてしまうまでにエスカレートしても、誰もことの重大さに気づいていないのが怖いことだよ」

 などと思いつくまま無責任な話をしていたのですが、どうすればいじめによる自殺をなくすことになるのかという話になったとき、Sがしばらくの沈黙のうち思いがけない質問を私にしてきました。

S「木走、お前は首吊り自殺体をその目で見たことがあるか」
木「首吊り自殺体? あるわけないだろう」
S「俺は職業柄、何回も自殺体を検死した経験がある。中でも首吊りは最も悲惨だ、顔は紫に変色し苦痛と溢血により醜く腫れあがる。」
木「うーん、あまり想像したくないなあ」
S「首吊りによる窒息死体の特徴は、①顔がうっ血し黒紫赤色に膨れる、②口唇などに青紫のチアノーゼ、③目の結膜に溢血点、④鼻や口から出血などがあるが、絶命直後に体中の筋肉が弛緩するので多くの場合糞尿も垂れ流されている。それはひどいもんだ」
木「しかしなんで、首吊り自殺体の話なんかするんだ」
S「暴論だが、俺はいじめによる自殺者を救う究極の手段は、首吊り自殺体のリアルな写真を当事者達に見せることなんじゃないかと思うんだ」
木「いじめっこ達にかい」
S「いじめている加害者の連中にも、いじめられて自殺を考えている被害者にもだよ。死体のひどい有様を包み隠さず見せることによって、いじめてる連中には自分たちのしている行為が犯罪行為でありどのような悲惨な結果が待っているのかを認識させる。これはゲームじゃないんだと、人の死を身近なものに捉え直させ改めていじめという人権侵害犯罪の罪の大きさをトラウマになるぐらいうえつけるんだ」
木「なるほど、高速道のパーキングエリアで交通事故現場の写真が展示されているのと同様の効果を期待してるのか」
S「一方、いじめられている子には、自殺体の悲惨な姿を見せることにより、自殺することは決して現実から逃避できる楽な逃げ道ではないこと、そのこと自体が苦痛を伴うこと、を教え、自ら命を絶つ行為の愚かしさを理解させ自殺行為を抑止する」

 Sに言わせれば、戦前までの日本は幼児死亡率の高さや医療技術の未熟から、子供たちの周囲にも人の死はとても身近であったというのです。

 多人数の5人6人の子供がいる家が当たり前でありその兄弟姉妹に幼くして病死した者がいたり、産後のひだちが悪く母親が亡くなっていたり、人の死は子供たちの周囲に身近にいつも存在していました。

 人の命がいかにはかなく失われてしまうものか、子供たちは身内の死を通じてごくごく自然におぼえていったのです。

 命がはかないものであると理解しているからこそ、命の尊さをも理解することができるのでしょう。

 ひるがえり現在の子供たちの周囲からは人の死は、戦前に比べればはるかに遠のいてしまったのは事実でありましょう。

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 首吊り自殺死体の写真を見せることによっていじめ行為やいじめによる自殺行為を抑止する、というS医師の過激な意見でありますが、個人的な暴論とはいえ、考えさせられるのであります。

 もちろんこの暴論は、個人の尊厳や教育的配慮を全く欠いた非現実的なものでありましょう。

 しかしながら、このような暴論さえも傾聴したくなるほどに、いじめといじめによる自殺の連鎖を食い止める手段が、我々大人社会に用意されていないのも現実なのであります。

 本日はこの深刻ないじめといじめによる自殺問題にささやかに一石を投じるつもりで、一人の医師の暴論をご紹介したのでした。

 この問題、読者のみなさまはいかなるご意見をお持ちでしょうか。



(木走まさみず)