木走日記

場末の時事評論

内と外で見事にダブスタな麻生さんの政治指導力

●「良」太郎〜日本がIMFへ1000億ドル融資

 日経新聞記事から。

(11/17)日本、IMF向け融資など独自提案 金融サミット

 【ワシントン=矢沢俊樹】今回の緊急首脳会合(金融サミット)で、日本は1000億ドル(約10兆円)に上る国際通貨基金IMF)向け融資など独自提案を打ち出した。ただドルの基軸通貨体制や金融規制を巡っては各国で主張の隔たりが大きく、調整は難航しそうだ。サミットでは財政・金融政策面での景気刺激策でも協調することを決めたが、日本の手詰まり感は強く、主導権を握るのは容易ではない。

 15日の昼食会で、麻生太郎首相は新興国など複数の首脳から声をかけられた。「具体的な提案に感謝したい」IMF向けには外貨準備を活用した融資に続き資本金の倍増を提案。14日のサミット当日には世界銀行と途上国の銀行に直接資本注入する新基金設立で合意するなど、「新興国支援に熱心な日本」を演出した。
http://markets.nikkei.co.jp/features/15.aspx?site=MARKET&genre=y5&id=AS3S1600A%2016112008

 麻生首相の提案したIMFへの1000億ドル融資案ですが、これはとてもよい提案だと評価してよいと思います。

 まずこの政策がよいのは費用面です。

 日本の一兆ドルに近い世界第2位を誇る膨大な外貨準備金の中から貸し出すわけですから、新たな予算確保などの負担がいらないことです。

 さらに、米国債などの形で寝かせているお金を国際機関を通じて新興国貸し出し支援などに有効利用してもらうのはアイディアとしても素晴らしいと思います。

 さらに、IMFの最大のスポンサーであった米国が自国のことで精一杯なときに、経済力ナンバー2の日本が代行することは、国際的義務でもありましょうし、産経的に言えば、このタイミングで「新興国支援に熱心な日本」を演出したことは、今後の日本の発言権を強化したという意味でも「日本の国益」にかなっています。

 つまり費用対効果の面で、日本にとっても世界にとっても、とても優れた提案だと言えましょう。

 ・・・

 この麻生さんのIMFへの1000億ドル融資案ですが、日本のマスメディアはもっと彼の政治的指導力を大きく評価していいと思います。

 素晴らしい指導力です。

 彼は国際的には麻生「良」太郎になったのであります。

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●「悪」太郎〜第2次補正予算案先送り

 18日付け毎日新聞紙面トップ記事から。

自・民党首会談:2次補正の今国会提出、首相が明言避ける

 麻生太郎首相と民主党小沢一郎代表は17日夜、首相官邸で約30分間会談した。小沢氏は、政府の追加経済対策の裏付けとなる08年度第2次補正予算案について「直ちにまとめて国会に提出すべきだ」と述べ、今国会への提出を要求。首相は「今の段階で答えることはできない。出せるように努力している最中だ」と明確な回答を避け、会談は決裂した。民主党は対決姿勢を強めており、インド洋給油活動を延長する新テロ対策特別措置法改正案や金融機能強化法改正案の会期内成立は流動的になった。30日に会期末を迎える今国会の延長は不可避との見方が政府・与党内で強まっている。

 自民、民主両党の党首会談は昨年11月2日の福田康夫前首相と小沢氏以来で、麻生政権では初めて。

◇民主、給油延長法案の採決に応じず

 党首会談が平行線に終わったことを受け、民主党は18日の参院外交防衛委員会での給油延長法案の採決に応じない方針を自民党に伝えた。与党は、野党が多数派の参院本会議での法案否決を経て、20日の衆院本会議で3分の2以上の賛成で再可決する構えだったが、来週以降にずれ込むのは必至。同法案は10月21日に衆院を通過しており、民主党参院で採決に応じない場合、「60日ルール」によって12月20日までは再可決できない。一方、金融機能強化法改正案は今月6日に衆院を通過したばかり。同法案再可決が可能になるのは来年1月5日以降となる。首相側近は「会期を延長するなら金融機能強化法改正案まで成立させるしかない」と述べ、越年延長の可能性を示唆した。

 小沢氏は会談で、給油延長法案などの採決日程先送りと絡めて、2次補正の今国会提出を首相に強く迫り、「審議をいたずらに引き延ばすことはしない」とも述べた。しかし、首相は「参院で決めた話を党首が一方的に破棄するのは納得しかねる」と反論し、補正提出の有無と重要法案の審議は無関係と強調した。

 会談後、首相は首相官邸で記者団に対し、2次補正の今国会提出について「その考えがないわけではない」と語った。また、政府高官は「財務省の検討状況を慎重に見極めて判断する」と語り、延長幅次第では2次補正を提出する可能性に言及した。

 党首会談は民主党自民党に要請した。自民党細田博之幹事長、民主党鳩山由紀夫幹事長、山岡賢次国対委員長河村建夫官房長官らが同席した。【中田卓二】

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081118k0000m010074000c.html

 政府与党では30日の会期切れで国会を閉じ、来年1月の通常国会補正予算案を審議するという方向が強まってきたそうです。

 「今の段階で答えることはできない。出せるように努力している最中だ」

 「その考えがないわけではない」

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 ふう。

 あのですね、なんなんでしょう、この体たらくは。

 ちょっと待って下さい。

 首相は常々、世界経済の現状を「100年に1度の経済の暴風雨」といい、「今は解散より経済対策が優先だ」とし、「政局より政策」だと、緊急経済対策を実施することが何よりも政治の優先課題だと語っていたではないですか。

 ならば、緊急景気対策などを盛り込んだ第2次補正予算案をできうる限り速やかにこの国会に出すのが筋というものでしょう。

 迷走の末、所得制限を自治体に丸投げした、社会政策なのか景気対策なのかすら不明確な定額給付金の問題とか時間経過と共に下がり続けている支持率の問題とか、いろいろな「政局」判断があるのでしょうが、「政局より政策」のかけ声はどうなったのか。

 あれほど首相が国民生活支援は一日を急ぐ緊急課題と言っていたのに、その「政策」を盛り込んだ第2次補正予算案を「政局」のために、今国会では提出しないというのです。
 ・・・

 皮肉を込めて。

 この麻生さんの第2次補正予算案先送りですが、日本のマスメディアはもっと彼の政治的指導力の無さを大きく評価していいと思います。

 素晴らしい無指導力です。

 彼は国内的には麻生「悪」太郎になったのであります。

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 ふう。

 「悪」太郎と「良」太郎。

 内と外で見事にダブスタな麻生さんの政治指導力なのであります。



(木走まさみず)