木走日記

場末の時事評論

平成時代の各国首脳在任期間比較(米・日・韓・中・露)〜日本の政党政治の有るべき姿について、読者の皆さんとともに俯瞰(ふかん)的な視座でもって考えてみたい

 自民党総裁選で安倍晋三元首相が返り咲きを果たしました。

■表1:一回目投票結果

氏名 議員票 党員票 合計
石破 34票 165票 199票
安倍 54票 87票 141票
石原 58票 38票 96票
町村 27票 7票 34票
24票 3票 27票

■表2:国会議員による決選投票

氏名 議員票
安倍 108票
石破 89票

 うーん、党員票では石破氏が300票中165票と過半数を取ってトップでしたが、国会議員による決選投票で2位の安倍氏に逆転を許したわけです。

 石破さんとしては大善戦だったと思いますが、あえて敗因を挙げればやはり国会議員票が1回目の時点で38票と第三位と伸び悩み、党内議員票の基盤の脆さが表出されてしまいましたね、脱派閥の主張や過去の離党経験が党内長老議員の反発を呼んだことも影響したのでしょうか。

 まずは、安倍さん自民党総裁返り咲きおめでとうございます。

 ぜひこの国のため国民のためがんばってくださいと、エールをお送りさせていただきます。

 さてこの度の自民党総裁選の結果、また先の民主党代表選の野田総理の再選、その結果この先の解散総選挙はどうなるのか、今後の政局の展開などの論考は他の論客達にいったんお任せするとして、当ブログとしては、民主代表選、自民総裁選が結果が出たこの機会に、短期的な政局ではなく我が国を取り巻く厳しい環境の中、日本の政党政治の有るべき姿について、読者の皆さんとともに俯瞰(ふかん)的な視座でもって考えてみたいのであります。

 ・・・

 今般、私達日本人にとって領土問題が戦後最悪といっても過言ではないでしょう、危機的状況になっております。

 ロシアのメドヴェージェフ首相(当時)の北方領土上陸に始まり、韓国大統領の竹島への不法上陸、中国・台湾による尖閣諸島への度重なる挑発行為、そして中国国内における大規模な官製デモ及び、投石・放火・器物破壊・商品略奪等の犯罪行為、このような危機的状況を招いた要因は、歴代政権が確固たる対策を怠ってきたことや、日米安保体制が弱体化してしまっている隙を突かれたことなど、個々に分析できましょう。

 がしかし、それらも含めて国際的に日本のポテンシャルが下がっていること、失われた20年とも言われる経済不振の日本と、対照的に経済面で台頭する中国や韓国、国力の接近し均衡(もしくはGDPでは中国には逆転され)、結果相対的に日本の存在感が弱まってしまったことがこの事態を招いている要因のひとつであることに議論の余地はないでしょう。

 以下の、竹島上陸後の奢(おご)り高ぶったとあえて申しましょう、韓国大統領の言葉が象徴しています。

「国際社会での日本の影響力も以前とは違う」

 残念ながら確かに日本経済はここ20年伸び悩んでおり、もっかデフレ下で昨年の大震災からの復興事業と原発事故対策をしながら破綻しつつある社会保障の問題をクリアしつつ財政再建を果たさねばならない、少子高齢化の問題もあり、難題が山積みの中で今回の安全保障上の危機を迎えています、そんな中で国政はあいも変わらず混乱を重ね、多くの国民は出口の見つからない閉塞感に包まれておるわけです。

 今回は取りあえず今のところ尖閣において中国による軍事行為はありませんが、5年後、10年後までに、つまり彼らの軍備がさらに強大になり日本を凌駕するような情勢を迎えたとき、はたして中国が軍事的野心を実行に移すことはないと誰が断言できましょう。

 少なくとも今この国は、10年先20年先まで見据えたしっかりとした戦略と強力なリーダーシップを併せ持った指導者を必要としているのだと言えます。

 ・・・

 先日、ある実業家とランチ・ミーティングをさせていただいたとき「この20年で日本経済はある意味で世界で一番たくましくなった」といった興味深い意見をいただきました。

 彼曰く「この20年でこの国の経済界は時の政権がどんなに不安定で短命であろうと自衛するようになった」というのです。

 「政界が混乱しても株は乱降下しなくなり、円高などに政府が無策でもそもそもあてにせず自助努力で克服してきた」というのです。

 「『失われた20年』とよく言われるが政府がここまで無能無策でも経済が「まあまあ安定」していることのほうが実はすごいことだと思う、日本経済はある意味で世界で一番たくましくなった」。

 「もしこれでしっかりとした本格政権が誕生すれば鬼に金棒、再び日本は成長を取り戻し力強い国家となるだろう」とこう申すのです。

 別に日本のこれまでの経済不振がすべて政治家の無策が原因とは私は思いませんが、彼の主張の中で「しっかりとした政権が誕生すれば日本経済と日本国にとって必ずプラス」という点は大いに頷いたのでした。

 経営トップというものは最初の1年は当たり前ながら経営者としてビギナーです、ドライバーで言えば初心者マーク付きです。

 どんな優れた手腕を持った優秀な経営者でも1年目から目覚しい結果を出すことはまず不可能です、経営者として多くのことを学習・経験し、2年目以降その人のトップとしての実績が問われていくことになります。

 ここに2006年の立命館大学の経済レポートがあります。

各業界における 経営者流動性の 比較
http://www.jaist.ac.jp/coe/library/jssprm_p/2006/pdf/2006-2H08.pdf

 このレポートによれば06年度の日本における企業経営者の平均在任期間は6.9年とあります。

 トップの在任期間が長ければいいと言うものではないでしょうが、少なくともこのレポートの数値が意味することは、トップが中期的に結果を出すためには1年や2年の短期では話にならないと言うことでしょう。

 ここで当ブログならではのデータ検証を行ってみましょう。

 平成24年間(1989〜2012)における、トヨタ・日産・ホンダの日本の三大自動車メーカーの社長の在任期間と、日本国内閣総理大臣の在任期間を図表にまとめてみました。

■図1:平成時代の日本首脳在任期間比較(総理大臣と自動車メーカー社長)

 作成していて、悲しくなってしまいましたが、この平成24年間でこの国の首相は野田さんで17人目なのであり、その平均在任期間はわずか1.4年なのであります。

 この間小泉さんを例外に丸三年の任期を迎えた首相はゼロなのに対し、3大自動車メーカー社長の中で任期が3年未満の者は逆にゼロなのです。

 このような短命な総理大臣でどうして確固たる政策が実現できましょうか、毅然とした外交戦略を構築できましょうか、国際的な信用を高めることができましょうか。

 平均1.4年の在任期間ではしっかりとした政策を実践することは不可能だし、事実過去24年間まったくと言ってよいほどできませんでした。

 国家のトップと民間企業トップの在任期間を比較しても意味は無いのではと思われる読者もおられるでしょう。

 では、平成24年間(1989〜2012)における、我が同盟国アメリカ、我が国と島嶼の帰属問題で問題が生じている、中国、韓国、ロシア、この5国で国家トップの在任期間を図表にまとめてみました。 


■図2:平成時代の各国首脳在任期間比較(米・日・中・韓・露)

 何も言いますまい、ただこれで外交シーンで軽く見られないほうが不思議でしょう、来年にはこの人はどうせもういないのだろうと思われているのです。

 ・・・

 本当に私達日本人が将来にわたり領土をしっかり守りこの国を破綻させず、子孫のために繁栄に導くとするならば、今このときにこそ、日本の政党政治のあり方について、国民一人ひとりがしっかりとした視座でもって考えるべきだと考えます。

 国会議員数の問題、一票の格差の問題、選挙制度の問題、二院制の有り方の問題、すべてはそれぞれ重要な問題でありましょう、がしかし、最終的にはこの国の政党政治がしっかり機能することに繋がらなければ意味を持たないと考えます。

 これ以上トップが毎年のように入れ替わる不安定な政治を続けることはこの国の将来の国益にかないません。

 繰り返しになりますが、少なくとも今この国は、10年先20年先まで見据えたしっかりとした戦略と強力なリーダーシップを併せ持った指導者を必要としているのだと言えます。



(木走まさみず)