木走日記

場末の時事評論

『捏偽変創』だと?そのままのし付けて返したい韓国トンデモコラム

 うむ、読者のみなさんは「ファクション(Faction)」という英語をご存知でしょうか?

 ファクト(Fact)にフィクション(Fiction)が適切に加味されている「創造ストーリー」のことであります。

 また「捏偽変創」という四文字熟語をご存知でしょうか?

 これは(捏造+偽造+変造=創造)という意味なのだそうです。

 4日付け韓国中央日報のコラムがNHKで始まった朝の連続ドラマ『マッサン』のことを取り上げてボロクソにこき下ろしております。

【グローバルアイ】「捏偽変創」は完全な排除対象か
2014年10月04日07時58分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版] comment320hatena1
金玄基(キム・ヒョンギ)東京総局長
http://japanese.joins.com/article/919/190919.html

 コラムは大ヒットしている『マッサン』は、日本のウイスキー会社「ニッカウイスキー」を創立した竹鶴政孝(1984−1979)の愛称であることの説明から始まります。

今週NHKで始まった朝の連続ドラマ『マッサン』が大ヒットしている。平均視聴率21.8%。過去10年間で最高記録だ。『マッサン』は日本のウイスキー会社「ニッカウイスキー」を創立した竹鶴政孝(984−1979)の愛称。ニッカとともに2大ウイスキー会社の「サントリーウイスキー」で初代工場長まで務めた「日本ウイスキーの父」だ。

  日本人が竹鶴に熱狂する理由は「日本人特有の勤勉さ」と「オンリーワン(only one)」へのこだわりであると説明していきます。

日本人が竹鶴に熱狂する理由は大きく2つあるという。まず日本人特有の勤勉さだ。竹鶴は高校を卒業する前、醸造場に入り、24歳で単身でスコットランドに渡った。夜には化学の勉強、昼には町のウイスキー蒸留場を渉猟した。大型蒸留器の中に「清掃夫」として入り、内部の構造をすべて覚えた。もう一つは「オンリーワン(only one)」へのこだわり。「最高の正統日本産ウイスキーを作る」として、いかなる妥協もしなかった。「飲みやすいウイスキー」を主張するサントリー創業者のそばを離れてニッカを創業したのもそのためだった。スコットランドと気候・風土が最も似ているという理由で、あえて輸送費が数倍かかる北海道余市に工場を建設した。80歳まで一日にウイスキー1本を飲んで眠ったという竹鶴らしい固執だ。

 しかしここからコラムはこの「立派な偉人伝」は「本当にそうだろうか」と疑問を呈します。

これくらいになると立派な偉人伝だ。しかし、本当にそうだろうか。

 言葉は「オンリーワン」だが、英国のウイスキー製造技術の秘密をすべて盗み出した結局は「コピー」だったと貶します。

62年に日本を訪問したリチャード・バトラー英副首相は「ある青年が万年筆とノートでウイスキー製造技術の秘密をすべて盗み出した」と述べた。竹鶴のことだ。言葉は「オンリーワン」だが、結局は「コピー」だったという冗談性の抗議だ。

 サントリーを辞めた理由も大した志があったわけではなかったと指摘します。

 サントリーをやめた理由も「所信」よりも創業者の長男の2世授業が終わったからだった。

 北海道に創業した会社も実はウイスキー会社ではなくリンゴジュース会社だった、“ついで”に少量のウイスキーを作り始めたというのが「隠れた定説」だと喝破致します。

 また、北海道に創業した会社も、実はウイスキー会社ではなくリンゴジュース会社だった。実際、会社名「ニッカ」も「大日本果汁」の略字。数年後、リンゴジュースの商売がうまくいかなくなると、在庫のリンゴを利用して蒸留酒を作り、“ついで”に少量のウイスキーを作り始めたというのが「隠れた定説」だ。

 このように、日本の「成功神話」の多くはファクション(Faction)であり、「捏偽変創(捏造+偽造+変造=創造)」であるとボロクソです。

日本の「成功神話」の多くはこのようにファクション(Faction)だ。ファクト(Fact)にフィクション(Fiction)が適切に加味されている。結果が良いため過程が美化され、このような「創造ストーリー」となる。誇張を少し混ぜて表現すれば「捏偽変創(捏造+偽造+変造=創造)」だ。

 ドラマ『マッサン』から中国のiPhoneパクリ会社が思い浮かぶとさんざんです。

ドラマ『マッサン』から中国のモバイル会社シャオミ(小米)が思い浮かぶ。iPhoneのデザイン模倣はもちろん、社長までがスティーブ・ジョブズの服装を真似た。しかし模倣力が競争力となった。シャオミはアップルだけでなくアマゾンなどすでに成功した数多くの事業モデルを組み合わせて完全に自分のものにした。中国式「新捏偽変創」だ。

 コラムは、韓国も高尚な「創造経済」ばかり叫んでいるだけでいいのかと結ばれています。

問題はその成功ストーリーが恐ろしい速度で増えているという点だ。なら、韓国はどれほど多くの「捏偽変創」を持っているだろうか。あまりにも高尚な「創造経済」ばかり叫んでいるのではないだろうか。世の中は速く動いている。中国の国慶節連休を迎え、中国人観光客で賑わう銀座の街で思ったことだ。

 ・・・

 ふう。

 なんでわざわざ新聞コラムで他所の国のテレビドラマの中身まで批判をするのか、それほど隣国日本に関心があるというのか、よく理解できないのですが、このコラム自体が「捏偽変創(捏造+偽造+変造=創造)」の見本となっているのが微笑ましいのではあります。

 まずリチャード・バトラー英副首相が「ある青年が万年筆とノートでウイスキー製造技術の秘密をすべて盗み出した」と述べた件ですが、もちろんこれは1962年英副首相が来日した際の社交辞令として英国ジョークを混ぜた発言ですが、その文意は竹鶴に対する賞賛であったことは言うまでもなく、このコラムの「結局は「コピー」だったという冗談性の抗議」というのは、拡大解釈のしすぎであります、「捏偽変創(捏造+偽造+変造=創造)」の見本であります。

 サントリーを辞めた理由は、確かに帝王教育を竹鶴に任されていたサントリー(当時は寿屋)社長の鳥井の長男・吉太郎に一通りの事を教え終わったことがありますが、それだけではないのです。

 1924年鳥井は竹鶴を年俸四千円という破格の給料で採用します、この年俸は、スコットランドから呼び寄せる技師に払うつもりだった額と同じと言われていますが、この契約期間が10年であり、単に約束の期間が経過したことから、もともと独立志向が強かった竹鶴はサントリーを辞めたわけです。

 ここが一番ひどい印象操作部分なのでありますが、「北海道に創業した会社も実はウイスキー会社ではなくリンゴジュース会社」「“ついで”に少量のウイスキーを作り始めたというのが「隠れた定説」」なのでありますが、ひどい解釈であります。

 竹鶴は、サントリー社員時代、日本初のウイスキー製造工場はスコットランドに似た風土の北海道余市に作るべきだと提案しますが、社長である鳥井は消費地から遠く輸送コストがかかることなどからこの提案を却下しています。

 つまり少なくとも竹鶴が余市という場所を選択した決断には、ウイスキー作りを意識していたことは間違いなく、ただウイスキー作りは数年間を要しますので、実際はジュース作りから始めるしか選択肢はなかったのだと思われます。

 なんだかな、いくつかの事実誤認(曲解?)と拡大解釈でこれを持って「日本の「成功神話」の多くはファクション(Faction)であり、「捏偽変創(捏造+偽造+変造=創造)」である」という結論はどうなんでしょうか?

 「捏偽変創(捏造+偽造+変造=創造)」ですが、そのままのしを付けてお返ししたくなる、韓国トンデモコラムなのでした。

 ふう。



(木走まさみず)