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2005-07-17 「未来を開く歴史」は未来を開けるのか?

kibashiri2005-07-17

[][][]「未来を開く歴史」は未来を開けるのか? 12:40

 昨日エントリーのコメント欄においても、有意義な真摯でアツイコメントをたくさんいただいており、本当にありがとうございます。今日は昨日のエントリーの追記となります。引き続き、教科書問題を取り上げてみたいと思います。



●JANJANに書評が掲載されました。

「未来を開く歴史」は未来を開けるのか? 2005/07/17

http://www.janjan.jp/book_review/0507/0507159618/1.php

 なんだかだらだらと読みづらいなあ(苦笑)

 以下は記事の元原稿です。

「未来を開く歴史」は未来を開けるのか? 2005/07/17

 話題の『未来を開く歴史』を読み終えた。「新しい歴史教科書をつくる会」による歴史教科書のオルタナティブ(代替案)として、日中韓の教育者たちが3年をかけて編纂してきた歴史の副教材である。

 読み物として大変興味深く223ページの本を時間も忘れて一晩で一気に読み終えた。一市民記者としてのこの興味深い歴史副教材に対する個人的書評を述べてみたい。

●とてもユニークな構成

 この本の最大の特徴はその構成にあるだろう。ある時代に起こった出来事を、基本的には日本・中国・朝鮮それぞれの国の視点から平等に記述されており、読者は並列に書かれているその内容から一国だけの歴史ではない幅の広い東アジア地域というスコープで何が起きていたのかという視野で考察できるように配慮されている。

 この特徴は本文でも節の構成でいかんなく発揮されていて、たとえば「第1章開港と近代化 3節 3国の改革運動」では、日本の自由民権運動、中国の清朝の改革と義和団運動、朝鮮の農民戦争と独立協会運動が、2ページづつ解説されているのだが、じつに斬新な叙術法である。

 もうひとつの特徴は、各節ごとに設けられているコラム欄が充実していることであろう。たとえば、序章2節では当時の3国の首都であった北京・江戸・漢城(ソウル)の様子を併記して詳述されていたり、第1章4節では、「近現代史のなかの漢字」の見出しで、3国の漢字文化の変遷をわかりやすくまとめている。

 本全体の構成は以下のとおりである。なお括弧内は執筆担当国である。

序章 開講以前の3国

 1節 3国の相互の関係(韓)

    コラム:昔の人たちは「世界」をどう見ていたのか(日・中・韓)

        3国の間の漂流民(日)

 2節 3国の国内状況

    1.日本−−武士と民衆(日)

    2.朝鮮−−両班と民衆(韓)

    3.中国−−郷神と民衆(中)

    コラム:3国の首都−−北京・江戸・漢城(ソウル)(中・日・韓)

        儒教思想と3国(中)

第1章 開港と近代化

    概説(日)

 1節 欧米列強の圧力と3国の対応

    1.中国−−アヘン戦争と洋務運動(中)

    2.日本−−開国と明治維新(日)

    3.朝鮮−−門戸解放をめぐる葛藤(韓)

    コラム:3国の開港場−−上海・横浜・仁川(中・日・韓)

        近代日本の天皇制(日)

 2節 東アジアを巻き込んだ戦争

    1.3国の争い(韓)

    2.日清戦争(中)

    3.日露戦争(日)

    コラム:福沢諭吉・金玉均・李鴻章

 3節 3国の改革運動

    1.日本−−自由民権運動(日)

    2.中国−−清朝の改革と義和団運動(中)

    3.朝鮮−−農民戦争と独立協会運動(韓)

    コラム:中江兆民・康有為・東学農民戦争のリーダーたち(日・中・韓)

 4節 3国の民衆生活と文化

    1.朝鮮社会の変化と民衆(韓)

    2.中国社会の変化と民衆(中)

    3.日本社会の変化と民衆(日)

    コラム:近現代史のなかの漢字(日)

    まとめ(日)

第2章 日本帝国主義の膨張と中韓両国の抵抗

    概説(韓)

 1節 第一次世界大戦前後の3国

    1.日本の韓国併合と朝鮮人の抵抗(韓)

    2.日本の台湾に対する植民地支配(中)

    3.辛亥革命と中華民国の成立(中)

    4.第一次世界大戦と日本帝国主義(日)

    コラム:安重根と伊藤博文(韓)

        日本は韓国を「強占」したのか「併合」したのか(日)

 2節 日本の朝鮮支配の強化

    1.憲兵警察統治(韓)

    2.「文化政治」の実像(韓)

    3.経済政策と収奪(韓)

    4.教育文化政策(韓)

    コラム:鉄道を掌握せよ(韓)

        東洋拓殖会社(日)

 3節 独立・抵抗の運動と社会運動

    1.三・一運動(韓)

    2.五・四運動(中)

    3.3国の社会運動(日)

    4.関東大震災と朝鮮人・中国人の虐殺(日)

    コラム:申采浩・布施辰治・李大ショウ・陳鉄軍・チョン鍾鳴・金子文子(韓・中・日)

 4節 変わりゆく社会と文化

    1.朝鮮の社会と文化の変化(韓)

    2.中国の社会と文化の変化(中)

    3.日本の社会と文化の変化(日)

    コラム:羅恵錫・平塚らいてう・何香凝(韓・日・中)

    まとめ(韓)

第3章 侵略戦争と民衆の被害

    概説(中)

 1節 日本の中国東北地方への侵略

    1.満州事変(中)

    2.「満州国」の出現(中)

    3.「満州国」の社会と経済(中)

    4.中国・朝鮮、両国民衆の連合抗戦(中・韓)

    コラム:張寒暉と抗日歌曲−−「松花江のほとり」(中)

        上海「義挙」と尹奉吉(韓)

 2節 日本の侵略戦争

    1.日中全面戦争(日)

    2.アジア太平洋戦争(日)

    3.「大東亜共栄圏」のまぼろし(日)

    4.総力戦体制(日)

    コラム:昭和天皇の戦争指導(日)

        伝単(ビラ)のなかの戦争(日)

 3節 日本軍による中国民衆への残虐行為

    1.戦場における民衆と難民(中)

    2.南京大虐殺(中)

    3.無差別爆撃・三光作戦と「無人区」の設定(中)

    4.細菌戦・毒ガス戦と人体実験(中)

    5.日本軍の性暴力(中)

    コラム:鳳儀萍−−強制労働者の証言(中)

        元日本兵の証言(日)

 4節 朝鮮の戦争基地化と民衆の被害

    1.皇民化政策(韓)

    2.戦時体制下の軍需産業(韓)

    3.戦争物資動員(韓)

    4.人力動員(韓)

    5.日本軍「慰安婦」として連行された朝鮮人女性たち(韓)

    コラム:「親日派」と「漢奸」(韓・中)

        姜徳景ハルモニ−−絵画で「慰安婦」の被害を告発(韓)

 5節 日本民衆の加害と被害

    1.戦時総動員と民衆の戦争協力(日)

    2.民衆の生活と抵抗(日)

    3.東京大空襲と都市空襲(日)

    4.沖縄戦(日)

    5.広島・長崎への原爆投下(日)

    コラム:特攻隊と青年学徒(日)

        日本の総力戦と女性(日)

 6節 日本の侵略戦争の失敗

    1.中国の抗日戦争(中)

    2.朝鮮人の抵抗と建国準備(韓)

    3.東南アジア占領地民衆の抵抗(日)

    4.反ファシズム戦争の勝利と日本の降伏(日)

    コラム:大韓民国臨時政府(韓)

        日本兵反戦同盟(日)

    まとめ(中)

第4章 第二次大戦後の東アジア

    概説(日)

 1節 3国の新しい出発

    1.日本の敗戦と戦後改革(日)

    2.朝鮮の解放と分断(韓)

    3.中華人民共和国の成立(中)

    コラム:マッカーサーの2つの顔(日)

        遠かった故国(日)

 2節 問われる日本の「過去の清算」

    1.東京裁判(日)

    2.サンフランシスコ講和条約と賠償・補償問題(日)

    3.植民地支配と戦争が残した社会問題(日)

    コラム:その他の戦犯裁判(日)

        戦後補償の国際比較(日)

 3節 東アジアの分断と国交正常化

    1.東アジアの冷戦と朝鮮戦争(日)

    2.日韓国交樹立(韓)

    3.日中国交正常化(中)

    4.中韓国交樹立(韓)

    コラム:在日朝鮮人の権利獲得のたたかい(韓・日)

        中国帰還者連絡会の人々(日)

    まとめ(日)

終 章 21世紀の東アジアの平和のための課題

    概説(韓)

    1.残された個人補償問題(中)

    2.日本軍「慰安婦」問題と女性人権運動(韓)

    3.歴史教科書問題(韓・日)

    4.靖国神社問題(中・日)

    コラム:教科書裁判をたたかった家永三郎(日)

        民衆法廷としての女性国際戦犯法廷(日)

        博物館展示と戦争(日・韓・中)

    5.東アジア3国青少年の交流(韓)

    6.反戦平和運動と市民運動(日)

    7.東アジアの和解と平和のために(韓)

●残念ながら検証性を欠いた記述が散見される

 上記のような構成で興味深い副読本であるが、個々の記述の詳細では、首を傾げたくなる信憑性に問題があると思われる箇所も散見される。中でも特に中国側が執筆を担当した箇所にかなり偏った描写や中国政府発表の一方的な数字の転用が目立つようだ。

 たとえば、「第3章 侵略戦争と民衆の被害 3節 日本軍による中国民衆への残虐行為 2.南京大虐殺」において、被害者数の記述は以下のとおりである。

「1946年の中国政府の南京軍事法廷の調査によれば、日本軍によって集団虐殺され遺体焼却、証拠を隠滅されたものは19万人余り、個別に虐殺され、遺体を南京の慈善団体が埋葬したものは15万人余りでした。

 東京裁判の判決書では、『日本軍が占領してから最初の6週間に、南京とその周辺で殺害されて一般人と捕虜の総数は、20万以上であったことが示される』としています」(126ページより引用)

 ここに現れている数字はその数字の信憑性に関して国際的に論争を巻き起こしているものである。このように国際的に定説が定まっていない数字を具体的に記載するのはいかがなものだろうか?

 また、「第3章 侵略戦争と民衆の被害 6節 日本の侵略戦争の失敗 1.中国の抗日戦争」において抗日戦争における中国側の損害についての記述は以下のとおりである。

 「中国政府の発表によれば、抗日戦争における中国の軍人と民間人の死傷者は総計約3500万人、財産の損害は約6000億ドルにのぼります。中国の人民は民族の独立と解放のために大きな犠牲を払ったのです。中国の抗日戦争は、日本の陸軍へ威力の60%以上および相当の海空軍力を牽制し、世界の反ファシズム戦争の勝利に大きく貢献しました。このことは、戦後、中国の国際的地位の向上をもたらしました。」

 この中国の犠牲者数に関しては、ジャーナリストの櫻井よしこ氏は『文藝春秋』05年8月号の討論記事で以下のように発言している。

 「中国は東京裁判の当初、日中戦争で犠牲になった中国人の数は320万人であるとしていました。それがいつの間にか570万人に増えました。さらに国民党政府から中華人民共和国政府になると数字がとたんに増えて、2160万人というとんでもない数字になりました。最初の数字に比べると、7倍近くです。この2000万人強という数字がずいぶん長く、中国の公式の数字とされていました。ところが1995年、江沢民総書記の時代になって突如3500万人という数字を言い出してきました。

 (中略)

 ところが、中国の教科書、これは国定教科書で1種類しかありませんが、そこに書かれている数字は、1960年まで1000万人、85年には2100万人、95年には3500万人と、何の説明もなく増えていく一方です。」

(文藝春秋8月号108ページより引用)

 本文では「死傷者」としているが、3500万という数字根拠が薄弱であることに変わりは無いと思われる。

●章の構成にかなり偏りがある〜ほとんど無視される各国の戦後60年の歩み

 特に残念だと思われるのは、目次を見ていただければ一目瞭然なのであるが、各国の戦後60年の歩みがほとんど記述されていない点である。

 日本軍の侵略戦争と朝鮮支配に関する詳述さに比し、第2次世界大戦後の各国の動勢に関しては、正直ほとんど描かれていないのである。

 日本で言えば、戦後平和憲法の元で平和主義国家として曲がりなりにも、一度の国内国外の流血紛争に関わらず経済を発展させてきたことや、中国に対する日本のODA援助には簡単にふれているが、ODAなどを通じての日本の国際貢献に対する評価はほとんどされていない。

 また、驚くべきことに、戦後中国の内政問題には1行も触れていないのである。チベット問題、天安門事件、中国ベトナム紛争にふれないのは、中国国内教科書と同様であるのでご愛敬なのかも知れないが、文化大革命、大躍進政策に関しても1行も記述がないのである

 はたしてこれで東アジア近現代史と呼べるのであろうか?

 象徴的なのは、「終章 21世紀の東アジアの平和のための課題」の内容であろう。

 もう一度、目次を参照いただきたい。

終 章 21世紀の東アジアの平和のための課題

    概説(韓)

    1.残された個人補償問題(中)

    2.日本軍「慰安婦」問題と女性人権運動(韓)

    3.歴史教科書問題(韓・日)

    4.靖国神社問題(中・日)

    コラム:教科書裁判をたたかった家永三郎(日)

        民衆法廷としての女性国際戦犯法廷(日)

        博物館展示と戦争(日・韓・中)

    5.東アジア3国青少年の交流(韓)

    6.反戦平和運動と市民運動(日)

    7.東アジアの和解と平和のために(韓)

 この教材が取り上げている「21世紀の東アジアの平和のための課題」は、ほとんどすべて100%日本の責任なのである。

 この教材だけでもし歴史を学んでしまうと、現在東アジアの平和を脅かしているのは日本一国であり、たとえば北朝鮮の独裁体制の問題も拉致事件も核疑惑も、いっさい語られることはないのである。

●この副教材は未来を開けるのか〜まずは歴史事実を一致させる努力を

 以下は本のあとがきである。

 「東アジアに平和の共同体をつくるためには、その前提として歴史認識の共有が不可欠です。それはもちろん若い人たちだけの問題ではありません。歴史認識を共有することへの展望は、東アジアに生きる市民が、侵略戦争と植民地支配の歴史を事実にもとづいて学び、過去を克服するための対話と討論を重ねることを通じて、確実に切り開かれます。

 (中略)

 国境を越えた共同の取り組みを通じて、私たちは多くのことを学びました。多くの新しい友人と出会い、友情と信頼を深めることができました。対話と討論、そして、未来に向けての連帯こそが、自らを豊かにし、新しい歴史の可能性を開いてくれる。それは、この歴史教材作りを通じて得た私達の確信です。」

 日本が犯した侵略戦争に関し、真摯に日本国民が反省すべきである点は同感である。しかし、問題は「事実にもとづいて」いるのかどうかである。目的のために数字を水増ししたり、記載事実を都合良く取捨選択してはならないであろう。

 たとえば、南京占領時に、日本軍が中国人を何人虐殺したのか、問題は虐殺の事実であって、30万人であろうが100分の一の3000人であったとしても、ものすごい数字には違いないのである。だからといって、根拠のない数字を記載していい理由には全くならない。それどころか、教材としての信憑性が問われるのは確実である。せめて、議論のある数字は両論併記は最低限すべきではないか。

 また「新しい歴史教科書をつくる会」による歴史教科書のオルタナティブ(代替案)として、誕生した本書の目的から有る程度、日本の侵略戦争の蛮行に的を絞り詳しく記述するのも理解はする。しかし、ここまで戦後60年の3カ国の国内動勢をほとんど記述していないのはやはり問題であろう。

 歴史学者に言わせれば、歴史は3つのレベルに分けて考えることができるという。一番上のレベルが歴史観であり、次に当たるのが歴史認識、そしてそれらのベースにあるのが歴史事実である。

 この副教材を読み終えて、正直、3国には歴史観や歴史認識で一致するには、現状では不可能であると言わざるを得ないと思う。それどころか、歴史の事実の一致ですらむずかしいのが現実である。

 では、この本は価値がないのであろうか?否、この興味深い歴史副教材を肯定的に評価したいのは、3カ国の歴史学者等が3年の月日を費やして共同で歴史副読本を作成した今回の挑戦的試み自体が実にすばらしいことであるといえる。

 ただ、本書の現段階での内容では、無理に歴史観の一致までを目指してしまっているところに限界があるのではないだろうか?

 3カ国の今後の努力により歴史事実の共有することをまず目指してもらいたい。異なる国同士で完全に歴史認識、歴史観まで一致させることはおそらく不可能である。しかし、互いの歴史観の差分を認め合った中で、互いに尊敬しあえる関係を構築することは可能であると思う。

 とにかく、肯定的に評価したい人にも批判的に対峙したい人にも、歴史教科書に関して深く考察させられるひとつの読み物としてお奨めの一冊であることは間違いない。

 最期に余談ながら、この副教材は本当に韓国や中国で使用されるのであろうか、とても興味深いことである。率直な個人的感想で言わせてもらえば、日露戦争や日本の対中国ODA援助や日中共同声明の日本の謝罪文の記述すらない現在の中国の教科書に比べれば、この副教材がもし中国で使用されるのであればある意味で「大躍進」なのかも知れない。

(木走まさみず)

 ちょっと長すぎますか(苦笑)



●正直ツッコミどころ満載で焦りました

 ここの読者のみなさまだけにエピソード的読後感を正直に語りますと、「おいおいここまで偏ってよいの?」と思わずにはいられない構成でした。

 特に終章「21世紀の東アジアの平和のための課題」は、上記記事でも指摘しましたが、個人補償問題、日本軍「慰安婦」問題、歴史教科書問題、靖国神社問題と、今盛んに論争されている問題が、一方的な視点から(両論併記ではなくです)検証もあまりされず、これでもかこれでもかという感じで列記されており、コラムでも「家永三郎教科書裁判」や、最近でもNHK・朝日問題で話題になった女性国際戦犯法廷の話など、もう、鼻血がでそうでありました。(苦笑

 ただ、不肖・木走としては、教科書としてではなく、一読み物としてとても面白かったのは事実です。

 書評にも書かせて貰いましたが、3国併記形式でひとつの事柄が見開き2ページにコンパクトにまとめられているので、とても読みやすく、節ごとにコラムとしてエピソードや雑談も載せてあり、歴史家でもない私にも、理解しやすい工夫が随所にありました。

 やはりまだ未読の読者の方には是非一読をお奨めしたいですね。



●真面目さはよくわかるのだけれど、やり方が露骨で下手なんだよなあ

 しかし、やはり本の構成は誉められたモノではありません。JANJAN記事の公式(?)書評にはとても書けなかった本音トークを語っちゃいますと、もし、私がリベラル派でこの本の編集委員に参加したならば、もっと中庸といいますか、両論併記型の記述を断固主張したでしょうねえ。

 だって、この本がもし日本社会に本当の意味で話題を呼ぶとしたならば、一般の人々から「実際読んでみたけれど、わりと読みやすくて偏りが少なくて驚いた」というような中立的評価を貰えたほうが、短期的には戦術的勝利なわけでしょう。

 中国や韓国の編集者がそんなこと認めないでしょうから無理だったのかも知れませんが、3国で共同編集するとなると現状ではこれが限界なのでしょうが、本のあとがきによれば、読者の意見を参考に今後も改正していくそうなので、日本側編集者にはぜひがんばってもらいたいものです。

 書評にも書きましたが、 歴史学者に言わせれば、歴史は3つのレベルに分けて考えることができるといいます。一番上のレベルが歴史観であり、次に当たるのが歴史認識、そしてそれらのベースにあるのが歴史事実であります。

 この副教材を読み終えて、正直、3国には歴史観や歴史認識で一致するには、現状では不可能であり、それどころか、歴史の事実の一致ですらむずかしいのが現実でありましょう。

 ですから、いきなり歴史認識を共有しようと試みた本書の挑戦は、言葉は悪いですが、最初から失敗することは、自明だったのであるとおもいます。

 しかし、このような試み自体は、私としては頭から否定するのではなく、暖かく応援したいですね。

 方法論としては、やはり歴史的事実の共有の努力をじっくりとしていただきたいです。その上で、歴史観・歴史認識は両論併記でもいいじゃないですか。

 差分は差分としてお互いに認め合う、そのような関係を目指すべきじゃないでしょうか?

 読者のみなさまの教科書問題に対する考察の一助になれば幸いです。



(木走まさみず)



<関連テキスト>

●こりゃ歴史観の共有などは夢のまた夢?

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050712/1121139213

●韓国が連帯する日本の「良心勢力」に本当に良心はあるのか?

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050716/1121485328

つーさんつーさん 2005/07/17 13:54  おもしろい。本読んでませんが、すごく興味を持ちました。これは早速買って読んで見たいと思いましたよ。さっき予約しちゃいました。JANJANの木走さんの記事のコメント欄で、歴史学者の鮎川さんも激賞されていましたが、木走さんの書評読んで本当にこの本を読みたくなりました。木走さん、貴兄は「高文研」の回し者ですか? ハッハッハ

masashimasashi 2005/07/17 15:11 >木走さん
『最期に余談ながら、この副教材は本当に韓国や中国で使用されるのであろうか、とても興味深いことである。 (中略) ・・、この副教材がもし中国で使用されるのであればある意味で「大躍進」なのかも知れない。』
には深く同意します。ただ、この書籍が中国や韓国でそもそも本格的に発行されるのでしょうか?それが一番知りたいところなのですが。。私は、「日本の捏造教科書の頒布に手を貸した」くらいの反応が返ってきそうに予測していますが、どうでしょうか?
発行元の高文研のサイト(http://www.koubunken.co.jp/0350/0341.html)では、『日本は高文研、中国は社会科学学院・社会科学文献出版社、韓国はハンギョレ新聞出版部が発行元となります。』とされていますが、発行されても相手にもされないような気もします。そのあたりを注意深く見てみたいですね。

中身については、プチリベラルを自称される木走さんをもって、「偏っている」と言わしめるものの実物を確かに拝見させて頂きたくなりました。今から本屋に行ってきます(笑)。

なお、最近は中国の軍人からきな臭い発言が数多く出てくるようになってきました。アメリカに核攻撃をするなどという発言を、個人的とは言え許している胡錦涛政権は、対内的にかなり苦しい状態にあるのかも知れませんね。江沢民本人もいろいろと動き回っているような情報も漏れ聞きますし。
内部闘争を解消するための手法としての膨張主義や反日は、ある意味麻薬のようなものですから、続ければ続けるほどその反動は大きなものになるような気がします。反動が出ること自体が日本にとって良くないことなので、あまりヒートアップさせないような対応が重要かと思います。
ただ、中国人や韓国人は、日本人の言う「冷静に」が裏での小細工に見えていると言うことでしょうか? なんか、まともに付き合うのもあほらしいです(苦笑)。面子の問題ではなく、実質的な話をしたいですね。
では。

masashimasashi 2005/07/17 15:28 補足的に、私のイメージを。
私は一個人としての中国人や韓国人が、みんな典型的な反日であるとは考えていません。そうではなく、社会風潮として反日が蔓延し、それに対する多彩な意見が日の目を見ない現状が、国として大きな問題があるのではないかと思います。共産党独裁の中国でそれがあることは肯定はしませんが理解できます。しかし、民主主義を標榜する韓国でそれが生じているというのは、正直悲しい限りです。さらには、その雰囲気に頼らなければ支持率を維持できない政権はもう(溜息)。
日本でも、むこうの一部の暴走に対抗する形で、変な暴走が生まれないことを切に願っています。

mmmmmmmm 2005/07/17 18:08 歴史事実に関係する最後の部分、とっても共感です。民間レベルでここまでやれたこと自体が評価されるべきです。今後さらに発展していくことを望みます。
ところで歴史の3レベルですが私は少し違うイメージで思っていました。私の3レベルは、歴史評価、歴史背景、歴史事実です。このうち歴史背景は回想録や日記の類で思想や人物を検証する部分です。裁判に例えれば、犯罪行為、動機、判決と言ったところでしょうか。質問ですが「歴史観」と「歴史認識」はどのような概念なのですか?
この本については書評と目次で大変良く分かりました。こちらの読者専用もありましたが、両方見る人が多いと想像していますので意味無いのかな????分かったことは「最初の方は素晴らしく、最後は鼻血が出そう」かな。
戦後の歴史が無いのはびっくりですね。日本撤退後の共産党勝利とか台湾征服とか朝鮮戦争とかもあるのですが。
と言うことで書評が良すぎたので分かった気になってしまいました。そのうち図書館で見てみようと思います。

鮎川龍人鮎川龍人 2005/07/17 21:48 mmmmさま。
歴史学の方法論的には、木走さまので正解です。
歴史資料(史料)から導き出されたものが歴史事実(史実)。
歴史事実の意味付け、あるいは対象とする時代、分野、地域に関する基本的解釈が歴史認識。
歴史認識を元に歴史を叙述する際の態度、あるいは姿勢が歴史観(史観)。
つまり歴史の最終目的は歴史叙述です。

マルクス史観などが有名です。
フランスのアナール派という、一種の環境主義の学者集団がありますが、これも史観といって良いでしょう。
しかし、普通は個人が特有の歴史観を持っています。
司馬史観などといいますね。

司馬遼太郎は歴史家というよりも歴史小説家ですが、ノンフィクションや史実に由来する歴史物語を多く書いたので、ファンがこのように呼ぶようになったのですね。

mmmmさまの言われる歴史評価は、いわゆる歴史学というよりも、ジャーナリズムのなかで、歴史上の事象を評価すること、あるいはすの結果でしょう。
また歴史背景は、フィクションの映画や小説を作る場合に、設定となる時代の基本的様態のことと思われます。

以上、チラシの裏的に。

antonianantonian 2005/07/18 00:08 民族主義で凝り固まった国同士が共同で歴史観など出来るはずもありません。三国志は蜀の視点で書かれた物語ですが、魏志と呉志と蜀志が勝手にそれぞれ存在するのが一番健康的な歴史書のあり方で、例えば曹操があそこまで非道で悪いやつではなかったことや赤壁の孔明の万能ぶりは大げさということは他の資料を照らし合わせていくことで、証明されていきます。
我々がよしとする資料を増やし続けるしかないでしょうね。イデオロギー色の強い資料はいずれそれは看破されてしまうと思われます。

antonianantonian 2005/07/18 00:15 鮎川様>
仰られるとおりです。
歴史というものは本来善悪の彼岸にあると思うのですよ。ただ事実(史実)がそこにあり、善悪、価値の重要性などは時代の価値で簡単に変動します。どのような歴史観に於いても、完全なる相対というものはありえないとわたくしは思います。つまりアナール学派もマルクス史観も独自の偏りは避けられない。

rice_showerrice_shower 2005/07/18 01:43 “歴史目的”とでも言えばよいのでしょうか、史実の共有すら不可能なのは、中韓の御用歴史家達がそもそも日本を貶めることをモチベーションとしているからでしょう。 自国民がAmericanize、Europeanizeされることは許容出来ても、Japanizeされることには耐えられない、との心情、意志をベースにしているから、日本(人)は邪悪であると言い続けねばならない。
だとすれば「歴史的事実の共有の努力」など、片思いの虚しい取り組みかと。

mmmmmmmm 2005/07/18 11:09 鮎川様 解説有難うございました。それに沿って少し整理してみたいと思います。「歴史事実の意味付け、あるいは対象とする時代、分野、地域に関する基本的解釈が歴史認識」という鮎川様の歴史認識の定義にある「歴史事実」と「対象とする時代、分野、地域」を私は歴史事実と歴史背景と言っていたようです。これらを意味付け、基本的解釈を歴史評価と言っていました。歴史認識という言葉が広い意味で使われることが多くなってきたと感じた為、歴史評価と言ったものです。歴史を構成する要素に歴史観があるというのは考えていませんでした。
antonian様が「アナール学派もマルクス史観も独自の偏りは避けられない」と言っておられますが、私は偏りのある歴史より無味乾燥の事実だけの歴史の方が好きです。
rice_shower 様>
「Japanizeされることには耐えられない」のは何故なのでしょうか?
私の思いつく範囲で言えば、中国文化が朝鮮半島経由で日本に来たから、日本が韓国を併合したから、ですか?
テレビで見た一場面ですが、韓国の女子学生に日本は好きかと聞くと嫌いと答え、日本のアニメや歌手を聞くとニコニコしてあれが良い、これが良いと答えるのは何なのでしょうね。私には彼らの心情は良く分かっていません。

e_r_i_c_te_r_i_c_t 2005/07/18 11:53 私としては「中国で発行できる歴史教科書の内容にて、日本に関して記述する際にはどの程度の内容がが許容できるか」というのについて、この冊子が現在の中国における、ひとつの許容範囲を示した指標のようなものにもなる、という風にも読めたりします。(両論併記ができたら、果たして形だけでも販売できたのか、という疑問もあったり。)
韓国はまだ中国よりも制限がゆるいと仮定した上で、上記の話を述べたものですが。(あと、韓国で両論併記の冊子を出すと、どのような書評になるかは興味深いところですね。)

kibashirikibashiri 2005/07/18 13:31 つーさん様

>木走さん、貴兄は「高文研」の回し者ですか? ハッハッハ

 ・・・んなわけないでしょうが(苦笑)

masashi様

>この書籍が中国や韓国でそもそも本格的に発行されるのでしょうか?それが一番知りたいところなのですが。

 私の感触では発行はされると思います。ただ、教育現場で使用されるかは、特に中国では眉唾ですねえ(苦笑
 韓国では、JANJAN経由の韓国情報によれば大統領も賛意を表しているので使用されるかもですね。

>中身については、プチリベラルを自称される木走さんをもって、「偏っている」と言わしめるものの実物を確かに拝見させて頂きたくなりました。今から本屋に行ってきます(笑)。

 はい、一読ものですよ。

>内部闘争を解消するための手法としての膨張主義や反日は、ある意味麻薬のようなものですから、続ければ続けるほどその反動は大きなものになるような気がします。反動が出ること自体が日本にとって良くないことなので、あまりヒートアップさせないような対応が重要かと思います。

 感情的に対立を煽るような大人げない対応は厳に慎みたいですよね。

>共産党独裁の中国でそれがあることは肯定はしませんが理解できます。しかし、民主主義を標榜する韓国でそれが生じているというのは、正直悲しい限りです。さらには、その雰囲気に頼らなければ支持率を維持できない政権はもう(溜息)。

 うーん、ここなんですが、実際この本とか読んだ現在の私は、同じ反日でも韓国の方に少し同情的なんですよね。中国のやりたい放題の数字水増しに比べると、韓国の方は、数字を捏造しようにも「日本人」「日本軍」として終戦を向かえた事実の前には、限界があり、端で見ていてもいじましいぐらい、苦労して自国中心の歴史を見出そうともがいている感じがしてます。(苦笑

mmmm様

>歴史事実に関係する最後の部分、とっても共感です。民間レベルでここまでやれたこと自体が評価されるべきです。今後さらに発展していくことを望みます。

 御意。2チャンあたりではきっとぼろくそな評価なんでしょうが、このチャレンジ自体は応援したいです。

>、歴史評価、歴史背景、歴史事実です。このうち歴史背景は回想録や日記の類で思想や人物を検証する部分です。裁判に例えれば、犯罪行為、動機、判決と言ったところでしょうか。質問ですが「歴史観」と「歴史認識」はどのような概念なのですか?

 歴史ご専門の鮎川先生がお応えいただいたようなので、そういうことのようで(汗

>分かったことは「最初の方は素晴らしく、最後は鼻血が出そう」かな。

 はい、ページが進むに連れて香ばしくなり、過激なジェットコースターに乗ってるような目眩を覚えましたです。(苦笑

鮎川龍人様

 おお、JANJANでもコメントありがとうございました。
 また。歴史学のミニ概説、ありがとうございます。ためになりますです。

antonian様

>民族主義で凝り固まった国同士が共同で歴史観など出来るはずもありません。三国志は蜀の視点で書かれた物語ですが、魏志と呉志と蜀志が勝手にそれぞれ存在するのが一番健康的な歴史書のあり方で、例えば曹操があそこまで非道で悪いやつではなかったことや赤壁の孔明の万能ぶりは大げさということは他の資料を照らし合わせていくことで、証明されていきます。

 三国志ですか・・・ 考えてみればそうですよね。ちなみに私の息子は三国志をTVゲーム「三国無双」でしか知りませんので、そのころの中国にはかっこいい武人ばかりだと勘違いしております。(苦笑

>歴史というものは本来善悪の彼岸にあると思うのですよ。ただ事実(史実)がそこにあり、善悪、価値の重要性などは時代の価値で簡単に変動します。どのような歴史観に於いても、完全なる相対というものはありえないとわたくしは思います。つまりアナール学派もマルクス史観も独自の偏りは避けられない。

 そう思います。

rice_shower様

>“歴史目的”とでも言えばよいのでしょうか、史実の共有すら不可能なのは、中韓の御用歴史家達がそもそも日本を貶めることをモチベーションとしているからでしょう。 自国民がAmericanize、Europeanizeされることは許容出来ても、Japanizeされることには耐えられない

 そうですね。この本を読んでも彼らの反日モチベーションをすごく感じました。

>だとすれば「歴史的事実の共有の努力」など、片思いの虚しい取り組みかと。

 うーん、まさに・・・ それでもこの本の試み自体は肯定的に評価したいのです。

e_r_i_c_t様

>私としては「中国で発行できる歴史教科書の内容にて、日本に関して記述する際にはどの程度の内容がが許容できるか」というのについて、この冊子が現在の中国における、ひとつの許容範囲を示した指標のようなものにもなる、という風にも読めたりします。(両論併記ができたら、果たして形だけでも販売できたのか、という疑問もあったり。)

 そうなんですよね。指標として成立するのか、とても興味深いです。実際に中国でどこまで販売されるのか注目していきたいですね。

>韓国はまだ中国よりも制限がゆるいと仮定した上で、上記の話を述べたものですが。(あと、韓国で両論併記の冊子を出すと、どのような書評になるかは興味深いところですね。)

 韓国は中国よりはまだ出版の自由度があると思いますので、両論併記を出版できる可能性はあると思っています。



 みなさま、ためになるご意見ありがとうございます。

2005-06-24 ヌルイ朝日新聞の検証能力とイタイ産経新聞の検証姿勢

[][][]ヌルイ朝日新聞の検証能力とイタイ産経新聞の検証姿勢 11:41

 以下のエントリーの追記です。

●戦艦大和の最後までつまらない論争になるこの国のメディアの憂うべき検証能力

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050620/1119259102

●産経社説に強く反論する〜善悪で検証態度を決めては断じてならない

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050621/1119320955




●本日のインターネット新聞JANJANで記事掲載

 両エントリーの内容をまとめて構成し直し、ひさしぶりに記事を作成しました。本日、私が市民記者登録しているインターネット新聞JANJANに掲載されました。

インターネット新聞 JANJAN

http://www.janjan.jp/

掲載された木走の記事

http://www.janjan.jp/media/0506/0506218656/1.php

 以下は掲載された記事の元原稿です。

産経社説に強く反論する〜善悪で検証態度を決めては断じてならない

●昭和20年4月7日、悲劇の戦艦大和の最期

 昭和20年4月1日、圧倒的兵力でもって米軍は沖縄に上陸した。支援兵力は、艦船1,500隻以上、航空機1,700機あまりである。

 もはや反撃する組織的兵力をほとんど有さない日本海軍であったが、大本営は4月5日、事実上の水上特攻とも呼べる「天1号作戦」を発令、徳山沖に待機中の大和に出撃命令が下った。

 目的地は沖縄。作戦は、片道分の燃料を積んで特攻、自ら沖縄の浅瀬に乗り上げて動かぬ砲台となり、敵の陸上部隊を砲撃するものだった。

 4月6日午後4時、戦艦大和は出撃した。しかし、4月7日早朝、大和出撃を察知したアメリカ軍は、新鋭空母12隻、艦載機800機でもってこれを迎撃し、大和には1機の護衛機もなかった。

 4月7日14時22分、大和は3,000人以上の乗組員と共に海に沈んだのである。

●60年後の朝日新聞の天声人語

 今年の4月7日、60年前に大和が沈没したこの日に、朝日新聞のコラム「天声人語」では、戦艦大和乗組員として奇跡的に生き残った吉田満氏が、終戦直後にてんまつを記した『戦艦大和ノ最期』を引用している。

 その中で、「漂流者で満杯の救助艇では、こんなこともあったという」として次の文を引用している。

 「船ベリニカカル手ハイヨイヨ多ク、ソノ力激シク……ココニ艇指揮オヨビ乗組下士官、用意ノ日本刀ノ鞘(さや)ヲ払ヒ、犇(ひし)メク腕ヲ、手首ヨリバツサ、……敢ヘナクノケゾツテ堕チユク、ソノ顔、ソノ眼光、瞼ヨリ終生消エ難カラン」

 引用の後、コラムは次のような文で結ばれている。

 「吉田氏は戦後日本銀行に入り、支店長や監事を務めた。『吉田満著作集』の年譜を見る。詳細な記述の中で、あの4月はこう記されている。『沖縄特攻作戦に参加。生還』。参加と生還の間に一文字もない。しかしその字間に、どれほどおびただしい修羅があったことか。大和の最期に限らず、あらゆる戦場で命を奪われ、また命を削られた人たちの慟哭(どうこく)を思った」

●朝日新聞天声人語の引用部分を批判する産経新聞記事

 これに対して、6月20日の産経新聞記事は、朝日新聞の引用部分は信憑(しんぴょう)性のないとした批判記事、「吉田満著書 乗組員救助の記述 戦艦大和の最期 残虐さ独り歩き 救助艇指揮官『事実無根』」(http://www.sankei.co.jp/news/050620/morning/20iti001.htm)を掲載した。

 「戦艦大和の沈没の様子を克明に記したとして新聞記事に引用されることの多い戦記文学『戦艦大和ノ最期』(吉田満著)の中で、救助艇の船べりをつかんだ大和の乗組員らの手首を軍刀で斬(き)ったと書かれた当時の指揮官が産経新聞の取材に応じ、『事実無根だ』と証言した。手首斬りの記述は朝日新聞一面コラム『天声人語』でも紹介され、軍隊の残虐性を示す事実として“独り歩き”しているが、指揮官は『海軍全体の名誉のためにも誤解を解きたい』と訴えている」

 この書き出しで始まるこの記事は、やはり当時の生存者である救助艇指揮官の発言から、以下のように反論を展開する。

 「これに対し、初霜の通信士で救助艇の指揮官を務めた松井一彦さん(80)は『初霜は現場付近にいたが、巡洋艦矢矧(やはぎ)の救助にあたり、大和の救助はしていない』とした上で、『別の救助艇の話であっても、軍刀で手首を斬るなど考えられない』と反論」

 「その理由として(1)海軍士官が軍刀を常時携行することはなく、まして救助艇には持ち込まない(2)救助艇は狭くてバランスが悪い上、重油で滑りやすく、軍刀などは扱えない(3)救助時には敵機の再攻撃もなく、漂流者が先を争って助けを求める状況ではなかった−と指摘した」

 「松井さんは昭和42年、『戦艦大和ノ最期』が再出版されると知って吉田氏に手紙を送り、『あまりにも事実を歪曲(わいきょく)するもの』と削除を要請した。吉田氏からは『次の出版の機会に削除するかどうか、充分判断し決断したい』との返書が届いたが、手首斬りの記述は変更されなかった」

 「松井さんは『戦後、旧軍の行為が非人道的に誇張されるケースが多く、手首斬りの話はその典型的な例だ。しかし私が知る限り、当時の軍人にもヒューマニティーがあった』と話している」

●社説でも批判を展開する産経新聞

 産経新聞は批判記事を掲載した翌日(6月21日)に、「戦争の真実 常に実証的な目で検証を」(http://www.sankei.co.jp/news/050621/morning/editoria.htm)というタイトルの社説を掲載した。

 社説の書き出しはこうである。

 「戦記文学の名著『戦艦大和ノ最期』(吉田満著)の記述に疑問が提起された。問題とされる個所は、救助艇の船べりをつかんだ大和の乗組員らの手首を、救助艇の指揮官らが軍刀で斬(き)ったと書かれたくだりである」

 以下前述の記事の反論をそのまま展開しつつ、朝日新聞の天声人語について批判的に触れている。

 「その信憑性に疑問が提起されたとはいえ、戦記文学としての価値が下がるわけではない。しかし、この部分はすでに新聞のコラムなどに引用され、旧日本軍の残虐性を表す一面として、独り歩きする危険性がある。新証言を機に、改めて再検証が必要だろう」

 社説の後半では歴史教科書にも偏向があると指摘する。

 「同じように不確かな記述は、歴史教科書にも多く見られる」

 「南京事件について、中国が宣伝する『30万人虐殺』や東京裁判が認定した『20万人虐殺』は日本の実証研究で否定されたにもかかわらず、これらの誇大な数字が高校教科書で独り歩きしている。慰安婦についても、『従軍慰安婦』という戦後の造語や『日本の官憲に強制連行された』とする誤った記述は中学教科書から姿を消したが、高校では増える傾向にある」

 そして社説の結語はこう結ばれている。

 「『旧軍の悪』とされる戦争の記述に対し、絶えず実証的な目をもって事実関係を検証する姿勢が、歴史学者やジャーナリストなどに求められる」

●問われる朝日新聞の検証能力

 コラムとはいえ、戦史小説の実証性が問題視されている部分を「事実」として引用した朝日新聞には、メディアとしての検証能力が問われるだろう。

 産経記事によれば、作者の吉田氏自身の「次の出版の機会に削除するかどうか、充分判断し決断したい」との返書があるわけであり、歴史書でもない戦史小説の引用を事実のようにした後で、「しかしその字間に、どれほどおびただしい修羅があったことか。大和の最期に限らず、あらゆる戦場で命を奪われ、また命を削られた人たちの慟哭(どうこく)を思った」と結ばれても、その主張に共鳴するほど、やりきれないものがある。

●問われる産経新聞の検証姿勢

 一方、産経新聞の社説での論説もその姿勢が厳しく問われるであろう。

 産経新聞は、社説の結語で「『旧軍の悪』とされる戦争の記述に対し、絶えず実証的な目をもって事実関係を検証する姿勢が、歴史学者やジャーナリストなどに求められる」と主張している。

 しかし、正しいメディアの検証姿勢は、「旧軍の悪」とされる戦争の記述に対しても、「旧軍の善」とされる戦争の記述に対しても、等しく絶えず実証的な目をもって事実関係を検証する姿勢ではないだろうか?

 そもそも、「善」とか「悪」という主観的な分け方自体、冷静に学問的に事実検証する際に必要な「ものさし」とは思えない。

 さらに付け足せば、産経の主張する「旧軍の悪」とされる戦争の記述に対してだけ厳しく検証するというその態度そのものが、他者から「偏向している」という批判を浴びることとなるであろう。

 「偏向」している教科書の記述を訂正するために、「偏向」した態度で望むとするならば、まさにミイラ取りがミイラになってしまうのではないだろうか?

 左右に関わらず、偏った視点からの論説は、読者に真実を伝えるというメディアの最大の使命を放棄する愚かな姿勢であると思う。

(木走まさみず)

http://www.janjan.jp/media/0506/0506218656/1.php



●ヌルイ朝日新聞の検証能力とイタイ産経新聞の検証姿勢

 ろくな検証もせず「事実」として報道してしまうメディアと、恣意的に基準を設けてある範囲に検証対象を閉じてしまうメディアと、いったいどちらがより大きな偏向報道を生むのでしょうか?

 私の考えでは両者は同罪です。客観的・論理的でなく公正さを欠いているという点に置いてもです

 ある人が「私はかつてある現場で幽霊を見た」と主張した本を出版したとしましょう。メディアが事実検証もせず、その本の記述を単純に引用して「幽霊は存在した」と記事にしたら、噴飯ものでありましょう。

 これが今回の朝日「天声人語」の手法です。単純である意味でわかりやすい手法ですから、読者のリテラシー能力がある程度のレベルにあるならば、この「偏向」は見破りやすいでしょう。

 一方、産経社説の手法はどうでしょう。産経のとった手法はこうです。同じ現場に居合わせていた別の人に「私もその現場でいたが幽霊などいなかった」と証言させた上で、より信憑性があると思われる根拠を3つ上げている。そして、このように疑わしい「幽霊は存在した」発言を検証もぜずに引用するのはメディアとしてダメでしょうと主張する。

 ここまでは、産経の手法・主張としてはメディアとしてまったくの正論です。問題はこの後です。

 他にも「幽霊は存在する」という「悪の主張」が教科書などにも散見するのでこれは徹底的に検証していかなければならないと主張するのです。

 これは危険です。このたとえ話は実証されていない「幽霊」ですから、一見産経が正しく見えますが、これがたとえば現在では実存が確認されている「シーラカンス」におきかえて見たならばどうでしょう。

 自分が間違っていると判断した事象に対してだけ厳しく批判的に検証・対峙し自分が正しいと判断した事象を検証対象外にしているという点で、とても危険な姿勢なのです。

 ある恣意的なベクトル(しかも善か悪かといったあいまいな基準)を持って事実検証の範囲に、メディア自ら枠をはめることは、決して論理的な姿勢とは言えないでしょう。

 メディアは「大義の信者」に陥ることなく、あくまでも「真理の追究者」として、あらゆる事象に対し、批判的に対峙し検証すべきだと考えます。

 その意味で、今回の朝日新聞の検証能力は厳しく問われるべきであるのと同様、今回の産経新聞の検証姿勢も厳しく問われるべきであると思いました。

 同罪ではありますが、産経新聞のほうが「後出しじゃんけん」だし、社説まで載せて強く自己主張している分、木走としても強く批判してみました。

 読者のみなさまのご意見をうかがいたいです。



(木走まさみず)



<関連テキスト>

●朝日新聞はリテラシーが低すぎます

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050226/1109419483

●『大義の支持者』と『真理の探究者』

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050222/1109041662

海岸通り海岸通り 2005/06/24 13:14  朝日にしろ産経にしろ自らの信じる大義があって、その大義に基づき記事を作成しているという点で同族ですよね。向きは逆ですが同じ臭いがします。 前もコメントしましたが、朝日も朝日ですが、産経も一歴史小説の一部の実証性を社説に載せるほど目くじら立てることなのか疑問ですよね。
 PS:JANJAN記事の書き出しの部分を読んで疑惑(?)を持ったのですが、木走さん、結構軍事ものお好きなのではないですか?
 なんか書き慣れているというかみょうにお詳しかったので。(苦笑

海岸通り海岸通り 2005/06/24 13:17 スミマセン。キーボード(エンターキー)の調子が悪く、連続エントリーしてしまいました。削除してください。ごめんなさい。

kibashirikibashiri 2005/06/24 13:27 海岸通り様

了解です。削除しておきましたね。

> PS:JANJAN記事の書き出しの部分を読んで疑惑(?)を持ったのですが、木走さん、結構軍事ものお好きなのではないですか?
 なんか書き慣れているというかみょうにお詳しかったので。(苦笑

 ドキッ。別にオタクではないのですが軍事ものは嫌いじゃないです。

SHUUSHUU 2005/06/25 03:16 ブログを読んだのですが、
気になった点があったので一言。

悪魔の証明はご存知でしょうか?
なかった事の証明は難しく、
あったといわれる事を否定するしかありません。

ですので実在するシーラカンスと、
実在しない幽霊を同一に扱う
のはいかがなものかと思いました。

旧軍云々に関して違和感があったのですが、JANJANの方に、うまくまとめられた意見があったので、控えさせていただきます。

masashimasashi 2005/06/25 11:55 >木走さん
今回のエントリについては理屈としてはわからなくありませんが、現実を考えた場合には不毛な議論かな?とも思います。朝日も産経も形こそ違え同じ穴の狢であるとは木走さんも認めるところだと思いますが、要は自分自身の思想を主張するためのものでしかないからです。
「現在の日本のマスメディアに自省を求めうるのか?」という問いかけをしているだけのように感じました。朝日の社説なんて毎回脱力ものですよ(笑)。これが日本のクオリティーペーパー(自称)の書くレベルかと。。。orz
私のイメージでは、朝日は文学系、産経は体育会系ですかね(笑)。毎日は学者もどき系、読売は合コン盛り上げ系。。う〜んこれは変か? 日経は、朝日と同じような立ち位置にも感じます。

産経の言う『旧軍の悪』が、「旧軍の善を除外して」と言う言外の意味を持たせていると私は読み切れませんでした。確かに『旧軍の悪』のみに触れているという事実はありますが、これは同時にあくまで一事例として取り上げたと主張することもできます。それは、朝日新聞の取り上げたテーマがそれに関する内容だったからです。
もちろん、現実問題としては朝日新聞たたきのために、「わざわざ」社説にてこういう稚拙な言葉を使っている産経の軽率さはメディアとしての能力を疑わせるものではありますが。
ただ、例えそうであったとしても、事実ではない報道をするメディアと同罪と言うのには少し違和感を感じます。

なお、あくまで『検証』であるわけですから、幽霊やシーラカンスの例は違和感を感じます。幽霊であっても、シーラカンスであっても、しっかりと検証しなければならないわけですよね。そして、シーラカンスという実物が見つかるなら、検証によってその生存を確認すればよいだけです。否定しようとしているわけではないのですから。検証段階で介在する思想や思いこみをもって、検証姿勢そのものを否定することは少し奇異に感じます。

もちろん、理想論としては木走さんのおっしゃるとおりと思います。以上、駄文、雑文失礼いたします。

masashimasashi 2005/06/25 12:00 ↑ 読み返して、言葉足らずの部分があったので。朝日の社説ですが、たまに良いものもありますので、全部が脱力ものだとは思っておりませんことを補足しておきます。
 個人的には、産経の社説も大したことないと思いますけどね(笑)。外交と歴史問題になったとたん、煽り体質の社説に固まりますので。

kibashirikibashiri 2005/06/25 18:50 SHUU様

 ようこそコメントありがとうございます。

>悪魔の証明はご存知でしょうか?
なかった事の証明は難しく、
あったといわれる事を否定するしかありません。
ですので実在するシーラカンスと、
実在しない幽霊を同一に扱う
のはいかがなものかと思いました。

 「悪魔の証明」は既知でございます。
 たとえが余りよくなかったかもですね。私としては極論につかず、公平に科学的に実証していこうという程度の意味なのでした。

>旧軍云々に関して違和感があったのですが、JANJANの方に、うまくまとめられた意見があったので、控えさせていただきます。

 はい、ひさしぶりにJANJANコメント欄でもたくさん批判いただき、とっても嬉しいのでした。(←おまえはマゾか?

masashi様

>今回のエントリについては理屈としてはわからなくありませんが、現実を考えた場合には不毛な議論かな?とも思います。朝日も産経も形こそ違え同じ穴の狢であるとは木走さんも認めるところだと思いますが、要は自分自身の思想を主張するためのものでしかないからです。

 はい、くまりん様に言わせると朝日産経は「目くそはなくそ」だそうであります。(苦笑

>私のイメージでは、朝日は文学系、産経は体育会系ですかね(笑)。毎日は学者もどき系、読売は合コン盛り上げ系。。う〜んこれは変か? 日経は、朝日と同じような立ち位置にも感じます。

 朝日は文学系、産経は体育会系って爆笑なんですけど。朝日は鉄道研究会、産経は空手部あたりがいいなあ。

>産経の言う『旧軍の悪』が、「旧軍の善を除外して」と言う言外の意味を持たせていると私は読み切れませんでした。確かに『旧軍の悪』のみに触れているという事実はありますが、これは同時にあくまで一事例として取り上げたと主張することもできます。それは、朝日新聞の取り上げたテーマがそれに関する内容だったからです。
もちろん、現実問題としては朝日新聞たたきのために、「わざわざ」社説にてこういう稚拙な言葉を使っている産経の軽率さはメディアとしての能力を疑わせるものではありますが。

 はい、JANJANコメント欄でも猛烈に突っ込まれております。(爆
 ちょっと記事構成が強引だったかなあ(汗 と少し反省しております。
 でも、ひさしぶりにJANJANで論争できてとても嬉しいのでした。



 みなさま、貴重なご意見ありがとうございました。

金太郎金太郎 2005/06/26 05:19 軍事関係が大好きな木走さまなら当然お気づきだったと思いますが、朝日新聞2005年06月23日(木曜日)付の社説「沖縄戦60年 この地獄を忘れまい」でも朝日新聞は変なことを書いています。

産経新聞の姿勢云々は置いておきまして、朝日新聞が「戦争=悪」を描く時の彼らの検証能力は停止しているのではないかと正直心配しています。

masashimasashi 2005/06/26 15:36 >木走さん
議論ができることが嬉しそうですね^^。ここで議論をはじめると大変かもですから、JANJANはちょうど良いかもです(笑)。ただ、JANJANで有意義な議論をしていただける方が少ないのが残念ですね。

>朝日は鉄道研究会、産経は空手部あたりがいいなあ。

うっ、部活レベルまでは考えてなかった(爆笑)。

janwikiにまた新しいエントリをしてみましたので、またよろしければご覧ください。しかし、木走さん他、ブロガーの方々はすごいですね。私にはとてもほぼ毎日の更新なんて考えられません(苦笑)。

kibashirikibashiri 2005/06/26 17:38 金太郎様

>軍事関係が大好きな木走さまなら当然お気づきだったと思いますが、朝日新聞2005年06月23日(木曜日)付の社説「沖縄戦60年 この地獄を忘れまい」でも朝日新聞は変なことを書いています。

 おお、これはまたしても、朝日はネタ提供してくれましたね(爆

 朝日は戦争に関し「検証能力は停止している」のは本当ですね。

masashi様。

>議論ができることが嬉しそうですね^^。ここで議論をはじめると大変かもですから、JANJANはちょうど良いかもです(笑)。ただ、JANJANで有意義な議論をしていただける方が少ないのが残念ですね。

そうですね。昨年末に論客達が入れ替わってしまいましたからね。

>janwikiにまた新しいエントリをしてみましたので、またよろしければご覧ください。

はい、私はmasashiさんのエントリー大好きですよ。フアンです。
後ほど拝読させていただきます。



みなさま、コメントありがとうございます。

ひろゆきひろゆき 2005/06/27 00:41 木走さんの意見には賛成しかねます。報道関係である以上事実の検証が最も大切なことであり、それがぬるいということは報道として致命的な欠陥であると考えます。しかも朝日新聞のようなステイタスのある報道機関が報道すれば、それがうそであっても事実として世界中に流れてしまうという例は教科書の侵略問題を見ても明らかです。検証があまいということはうそ報道とさして違いないと言うことを認識すべきと思っています。

一方産経新聞の方ですが、産経新聞は右派で旧日本の都合の良いことに目がいきがちであるなのは日本中の人が知っていることであり、中立をよそおって主張するのでないのであれば、何をどう主張しても問題はないと思います。あくまで主張なんですから。
ということで今回の件で反省すべきは朝日新聞であって産経新聞については全く問題がないというのが私の意見です。

木走さんの文章の中から旧日本軍の悪いことをいうのは良いことで、良いことを言うのは悪いこと といった印象を受けました。そうでなければ朝日新聞が旧日本軍の良いところを全く主張しないことにどうして意見を述べられないのでしょうか。 私は自分のポジションさえはっきり述べていれば、新聞がいつも中立である必要はないと思っています。

kibashirikibashiri 2005/06/27 10:38 ひろゆき様

コメントありがとうございます。

>木走さんの意見には賛成しかねます。

 手厳しい(?)ご評価いただきました。(苦笑

>報道関係である以上事実の検証が最も大切なことであり、それがぬるいということは報道として致命的な欠陥であると考えます。しかも朝日新聞のようなステイタスのある報道機関が報道すれば、それがうそであっても事実として世界中に流れてしまうという例は教科書の侵略問題を見ても明らかです。検証があまいということはうそ報道とさして違いないと言うことを認識すべきと思っています。

 おっしゃるとおりですね。異論ありません。

>一方産経新聞の方ですが、産経新聞は右派で旧日本の都合の良いことに目がいきがちであるなのは日本中の人が知っていることであり、中立をよそおって主張するのでないのであれば、何をどう主張しても問題はないと思います。あくまで主張なんですから。
ということで今回の件で反省すべきは朝日新聞であって産経新聞については全く問題がないというのが私の意見です。

 産経新聞に問題が全くないかどうかは意見の分かれるところだと思いますが、「中立をよそおって主張するのでないのであれば、何をどう主張しても問題はない」のは、私も概ね認めております。

 この件ではJANJANコメント欄でもどうような鋭い批判をいただいております。よろしければ、JANJANコメント欄での私の反論もお読みいただければと思います。

>木走さんの文章の中から旧日本軍の悪いことをいうのは良いことで、良いことを言うのは悪いこと といった印象を受けました。そうでなければ朝日新聞が旧日本軍の良いところを全く主張しないことにどうして意見を述べられないのでしょうか。 私は自分のポジションさえはっきり述べていれば、新聞がいつも中立である必要はないと思っています。
 おお、鋭いご意見ありがとうございます。 確かに朝日への批判と言う意味では、舌っ足らずな記事でありますね。 反省、反省(汗

 まあ、批判の矛先を産経に絞りすぎたのかな、と少し反省しています。
 この記事ではまるで朝日擁護派みたいですが、私は個人的には朝日大嫌いなのです。

 貴重なご意見ありがとうございます。

こえだこえだ 2005/06/27 15:56 ほんのちょっとですがJANJANを覗いて盛況具合を確認し、木走さんの記事だけはしっかりと読んで一票を投じてきました。
興味がない分野ではないのですが、なぜか論争に加わる気力がなくてコメントもできずじまいですみません。
都議選が近づくにつれ、雑多な報道の嵐に接していると日々憂鬱になってしまって・・酒を飲まずには居られない毎日なのです(笑)

木走様のその精力的な「執筆活動」には敬服しております。
コメントはしたりしなかったりですが、今後もテキストを楽しみに待っておりますし、しっかりROMは続けさせていただきます。

kibashirikibashiri 2005/06/28 10:57 こえだ様

>興味がない分野ではないのですが、なぜか論争に加わる気力がなくてコメントもできずじまいですみません。

 はい、私もばて気味なのです。

>都議選が近づくにつれ、雑多な報道の嵐に接していると日々憂鬱になってしまって・・酒を飲まずには居られない毎日なのです(笑)

 いかなる事象もこえださんにはお酒を飲む対象となりえるのですね。(苦笑
 酒が飲める、酒が飲める、酒が飲めるぞ〜 ってか(爆

 コメントありがとうございました。

2005-04-01 拉致被害者 少女の運命は立証されたのか

[][][]拉致被害者 少女の運命は立証されたのか 11:57

 めぐみさん遺骨問題について、当ブログでも2日に渡って考察いたしました。

 この件では本当に多くの方々からいろいろな情報をいただいたり、ご意見をいただきまして、本当に勉強になりました。また、私のブログにもいろいろなコメントを書き込んでいただきありがとうございました。

(関連ブログ)

●あるコリア系日本人の徒然草 北朝鮮の提出した遺骨鑑定の真偽

http://blog.goo.ne.jp/pontaka_001/e/90595af8134b8c4aefab64e29bde0c42

●くまりんが見てた! 恐るべし小泉内閣 横田めぐみさんの遺骨問題は既に極めて政治的である

http://ngp-mac.com/kumarin/index.php?p=782

●『日々徒然 続・遺骨問題』

http://blog.so-net.ne.jp/hibiture/2005-03-26

(関連テキスト)

●少女の運命は立証されたのか

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050321

●少女の運命は立証されたのか(2)

●少女の運命は立証されたのか(追記)

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050322

 しかし今もっても日本政府は本件に関して動きがにぶいようです。、

 また、個人的にどうしても、日本のマスコミが取り上げないことが納得できません。この件はとても重要な話題であり、社会性もあると考えています。

 そこで、私の3月21日エントリーのテキストを、再度構成し直して記事として、インターネット新聞JANJANに記事として投稿してみました。

 なお、記事の構成上の問題とJANJAN編集部との話し合いの中でいくつかの部分を割愛したり追加したりしました。(もちろん文責は木走一人にあります。)

 具体的には、最近の動きを追加し、22日のエントリ部分は今回は記事にするのは見合わせたのと、個人名(ハンドルネーム)は、記事本文には伏せることにしました。

 このエントリーでコメントいただいたみなさま、ありがとうございました。

 くまりん様、RXFD3S様、当ブログのリレーエントリーしていただきありがとうございました。また、貴重な情報と深い考察、本当にためになりました。

 rice_shower様、またしても貴兄のコメントをヒントに記事を書かせていただきました。感謝しております。

 pontaka様、この記事の技術的屋台骨は全て貴兄の専門的知識に依拠しております。また、木走のしつこい質問や転載許諾要請に、快く応じて下さいまして、本当にありがとうございました。

 以下が、本日JANJANにて、トップ記事として掲載された記事原稿です。

拉致被害者 少女の運命は立証されたのか 2005/04/01 http://www.janjan.jp/living/0504/0503285068/1.php

拉致被害者 少女の運命は立証されたのか 2005/04/01

 ●不誠実極まりない北朝鮮

 新聞各紙報道によれば、帰国した拉致被害者の蓮池薫さん・祐木子さん夫妻が、77年に北朝鮮に拉致された横田めぐみさんに関連した新たな証言をしていたことが、関係者の話でわかった。

 朝日新聞は蓮池夫妻が次のように話したと報じている。めぐみさんは【「93年春ごろから夫と別居し、94年には別れた」】、【「めぐみさんは夫と不仲になり、93年春ごろ、夫が子どもを連れて家を出たようだ」】、また【『キム・チョルジュン』とされていた夫の名についても「聞いていた名と違う。日本向けに作った偽名ではないか」】。

(「『横田めぐみさんは夫と別居』 蓮池さん夫妻が証言」朝日新聞電子版05年3月27日21時31分)

 その内容が事実だとすれば、またしても北朝鮮は事実に反する対応をしたわけである。北朝鮮の今までの不誠実な一連のめぐみさんの「死亡時期」に対するあいまいな報告内容と訂正内容などと合わせて、政府には毅然とした対応を望みたいものである。

 そもそも、今回の遺骨が、めぐみさんの「遺骨」かどうかをめぐっては、日朝両国間で激しく議論されているのであるが……。

 ●日本政府が北朝鮮に反論文書〜「遺骨」はDNA鑑定で別人と判明

 そもそも「横田めぐみさんの『遺骨』ではない」とした日本政府の鑑定結果に対し、北朝鮮側の回答は、日本のDNA鑑定結果を「ねつ造」と批判していた。

 朝鮮中央通信社は1月24日、「日本は反朝鮮謀略劇の責任から絶対に逃れられない」と題する備忘録を発表し、横田めぐみさんの遺骨「鑑定結果」はねつ造であったことを主張している。

 朝鮮新報電子版によれば、その備忘録では主に3つの疑問点を挙げている(【 】内は記事より引用)。

疑問点1:同時に鑑定の依頼を受けた科学警察研究所ではDNA検出ができなかったのに、帝京大学では「結果」を得たということ。

 【ひとつの対象を置いて2つの研究機関が分析した鑑定結果が相反する場合、それに対する評価においてどちらか一方のものだけを絶対視するなら、それは科学性と客観的妥当性が欠如したものだと言うべきであろう】

疑問点2:遺骨鑑定のための分析方法

 【遺骨を1200℃の高温のなかで燃焼すれば、すべての有機物質が酸素と結合して気体状態で空中に飛び散り、無機物質である灰分だけ残ることになり、この灰分も一定の期間、外見上、形体を残すことはできるが、それも外部的作用が少しでも加えられると、形体すら維持できない。それゆえ、帝京大学が1200℃の高温状態で燃焼した遺骨から細胞を採取し、それを培養、増殖させる方法でDNAを鑑定したというのは信じがたいことである。】

 疑問点3:横田めぐみさんの遺骨に対する帝京大学の「DNA識別鑑定書」に記された分析内容の前後が合わないこと

 【小さなひとつの骨片から相反する分析結果が出たというのは科学的に完全に矛盾することから、外部からのトリックとしか考えられない。帝京大学の「鑑定書」に「骨片5は分析限界区域にあり、再生成において問題を抱えている資料であることは明白である」と指摘されたのは「鑑定結果」を科学的に保証できないということを示している】

(「朝鮮中央通信社備忘録(全文) 日本は反朝鮮謀略劇の責任から絶対に逃れられない」朝鮮新報電子版 2005年1月27日)

 それに対し、産経新聞が掲載した記事によれば、日本政府は2月10日、日本の鑑定結果は「明白な事実」であり、今回の北朝鮮側の見解を受け入れないことを通告した。また、拉致被害者の即時帰国と真相究明を求め、反論文書を北京大使館を通じて北朝鮮側に送った。

 日本政府は文書の中で、北朝鮮側が【迅速な対応をしないならば「『厳しい対応』をとらざるをえない」】と強く警告し、経済制裁も辞さない姿勢を示した、とされる。

 また、反論文書では、北朝鮮側が「備忘録」で指摘した疑問点に対し、逐一反論しており、【「火葬した骨の一部が熱に十分にさらされなかったためDNAが残存することはあり得る」「帝京大学と科学警察研究所には別の検体が鑑定嘱託されたのであり、指摘は不的確」】などと強調している。

 この反論伝達は、町村信孝外相が10日午後に小泉純一郎首相に報告し了承されたものだという。

(「政府、北朝鮮に反論文書 めぐみさん『遺骨』鑑定」産経新聞電子版05年2月10日22時30分)

 今もって、日本政府は、「横田めぐみさんのものと渡された「遺骨」はDNA鑑定で別人と判明した」と、公式表明しているのである。

 ●科学誌『ネイチャー』のレポートが火種に

 ところがこの日本の鑑定結果に関してイギリスの権威ある科学誌『ネイチャー』の2月2日付の電子版が、疑問を呈するレポートを発表したのである。

      ◇

"DNA is burning issue as Japan and Korea clash over kidnaps"

David Cyranoski

Cremated remains fail to prove fate of Japanese girl abducted in 1977.

「日本と北朝鮮が拉致事件で衝突〜DNAはまさに燃えている問題」

デヴィッド・シラノスキー

火葬にされた遺骨は、1977年に誘拐された日本人の少女の運命を立証してはいない。

(訳:木走まさみず)

      ◇

 タイトルもそうであるが、このサブタイトルの「Cremated remains fail to prove fate of Japanese girl abducted in 1977.」は、科学誌らしく味気ない物言いではあるが、日本政府にとってはかなり衝撃的な断定であった。

 ここから大騒ぎになり、細田官房長官が「この記事はウソだ」と言い、デヴィッド・シラノスキー記者も再反論、政府支持派も北朝鮮擁護派も入り乱れての大議論になっているのである。

 ネット上である生化学者が、ここらへんの事情をとてもわかりやすく説明している。彼の職業は、数学者・生化学者・医師であり、医師としてのMDは日本で取得、数学者・生化学者としてのPhDはアメリカで取得している。その彼が生化学者としてのキャリアを元に書いたレポートである。

 彼のブログに掲載された『北朝鮮の提出した遺骨鑑定の真偽』レポートから抜粋してみる。

      ◇

北朝鮮の提出した遺骨鑑定の真偽

(前略)

まず僕の専門職上、帝京大学がどのような方法論をとったか、完璧に理解できますし、僕自身同様のことを行うことができます。上のNature記事を読んだところ、非常に真っ当な記事との印象です。この記者さんも反論しているように、この記事からはなんの政治的匂いもしてきません。サイエンスに携わったことのある人なら分かると思いますが、この"Nature"という雑誌は、それこそそこらへんの雑誌とは全く格が違うし、政治的なものからは完全に独立しています。サイエンスの分野では、もっとも信頼性の高い雑誌の一つです。

まず帝京大学の方法論ですが、非常に感度が高いかわりに、他人の汗や指脂由来のDNAなどにも反応してしまう欠点があります。すなわち、日本側に渡される前に北朝鮮の人などがこの遺骨に触れていれば、当然その人のDNAにも反応してしまうわけです。しかもこの可能性は非常に高いと思われます。すなわち、高温にさらされた後、破壊に耐えた遺骨のDNAと、これら外来由来の何の処理もされていないDNAの量比によって、この実験の成功の可否が決まるわけです。

このような実験の性質上、「横田めぐみさんのDNAが検出された」場合には、「この遺骨の中に横田めぐみさんのものが含まれる」と断定できるわけですが、今回のように「横田めぐみさんのDNAが検出されない」場合には、「この遺骨の中に横田めぐみさんのものが含まれない」とは断定できないわけです。また他の人のDNAが検出されたのは、上で述べたように、他人の汗や指脂由来のDNAが検出されたと考えるのが一般的ではないかと考えられます。このようなことが記事の中でも、簡単に説明されています。

また、もうひとつの問題点として、追試がうまくいっていないことが挙げられます。サイエンスの分野では、追試可能であることが絶対条件なのですが、残念ながら帝京大学以外のグループではうまく行っていないようです。こういったことから、学問的にはまだまだ信用性がうすいと言われても、至極真っ当な意見だと思います。このようなことから、日本政府もまだ経済制裁に踏み切らないのかな、と勘ぐったりしていますが。

(後略)

      ◇

 彼のレポートは、とても論理的かつ冷静であり説得力のあるものだと評価できる。

 ●少女(めぐみさん)の運命はいまだ立証されていない

 科学的アプローチとしては明らかに日本政府のほうが、分が悪いと判断できる。

 日本政府の「鑑定結果は明白な事実」との言い分は、非常に脆弱な試験結果に依拠しており、「事実」と断定するには科学的立証性が極めて弱い。追再試験もできない結果など科学の世界では「証明された」とは言えないのである。

 あともうひとつ、決定的に日本政府の言い分が論理的におかしい点がある。それは、百歩ゆずって日本政府の主張「鑑定結果は明白な事実」を認めたとしよう。しかし、この鑑定結果が示すのは、日本政府がいう「この遺骨からは、他人のDNAしか検出されなかった。従ってこの遺骨はめぐみさんのものではない」ということではないのである。

 結果が示す科学的解釈は「この遺骨からは、他人のDNAしか検出されなかった。また、残りの大半の遺骨が誰のものかは科学的に立証できなかった」なのである。

 これは重要な点である。以前ネットのコメント欄である方がおっしゃっていた「法廷では何故“guilty or not guilty”であって、“guilty or innocent”と言わないか」という法判断の基本概念にも関わるところだからだ。

 法廷で裁けるのは、「有罪か、有罪ではないか」であって、「有罪か、無罪か」を証明するものではない。

 今回にあてはめれば、鑑定の結果「めぐみさんのDNAは検出できなかった」ことは、「めぐみさんの遺骨ではなかった」ことを全く証明してはいないのである。

 まさに『ネイチャー』の論説「Cremated remains fail to prove fate of Japanese girl abducted in 1977.」が、的確なのではないか。

 現在の北朝鮮の理不尽な振る舞いには断固毅然とした態度で望むべきである。

 しかし、政治的思惑と科学的実証性には、何も関係ないし、その意味で日本のマスコミがこの問題で沈黙していることが、一番理解に苦しむのである。

 めぐみさんの運命はいまだ立証されていないのである。

(木走まさみず)

http://www.janjan.jp/living/0504/0503285068/1.php

 もし読者のみなさまが、この記事の主旨に関心をいただいたら、ぜひ、JANJAN記事本文の下にある「この記事が気に入ったらクリック!」ボタンを押して下さい。

 このようなお願いは今までしてきませんでした。JANJANの記事ランキングなど、木走的には何の興味もありませんのでおそらくこれ1回きりのおねがいであります。

 しかし、本記事の投稿目的を考えると、JANJAN編集部ならびにJANJAN読者に広く認知していただくために、あえて当記事だけは、「この記事が気に入ったらクリック!」ボタンを押していただく形で、読者のみなさまのご協力をあおぎたいのです。

 本記事はみなさまとのやりとりから生まれたテキストであります。

 みなさま、このブログに参加いただき本当にありがとうございます。



(木走まさみず)

こえだこえだ 2005/04/01 14:58 わ〜い 一番乗りだ とりあえず クリックしてきましたよぉ〜
記事未だ読んでないけど・・・ご報告だけ 先に、ね!

MadDocMadDoc 2005/04/01 16:22 初めてコメントします。
すばらしいご指摘であり、私も化学者のはしくれとして全く同感です。日本政府は一刻も早く必要なコントロール試験を実施すべきであり、今回の件を科学的に総括できる第三者機関にクロス試験を委託すべきです。本件は、北朝鮮の不誠実さとは全く関係ありません。政治的というよりも科学的ミステークだと判断します。

kibashirikibashiri 2005/04/01 18:05 こえだ様。何くだらないことで喜んでるんですか?(爆笑
クリックありがとうございます。
でも、一応あとでお暇なときに記事も読んでくださいませ。(汗

MadDoc様。はじめまして、ようこそです。専門家に同意いただくと、とても心強くうれしい限りです。クロス試験のほうは可能性としてどうなんでしょうか?検査に耐えうる骨辺がもうあまりないような話も聞こえてきていますが・・・

コメントありがとうございます。

つーさんつーさん 2005/04/01 18:41 記事の内容もさることながら、貴兄の試みている情報発信方法がおもしろいですね。新聞記者が匿名で社会派時事ブログを運営しているが、貴兄の場合、ブログで情報収集したないようをネット新聞に投稿している・・・
もうすこし様子を見守りますから、この調子でがんばってみましょう。

drondrondrondron 2005/04/01 21:34 大局的に判断すれば、北朝鮮の不実・不誠実なふるまいは、この記事の指摘する事実をもってしても揺るがない。しかしながら、木走氏のあくまでも冷静・冷徹な論理には敬服に値する。日本政府は科学的に脆弱な主張は改めるは改め、北朝鮮に付け入るすきを与えぬよう毅然とした対応をすべきである。それにしても木走氏、苔の一念とも申すか・・・ 御見それしました。

鮎川龍人鮎川龍人 2005/04/01 22:12 昨年予告した4月1日ですので、JANJANにコメントして参りました。
くまりんさまがサイト閉鎖。

何か、ちょっと寂しいです。

こえだこえだ 2005/04/01 23:06 もちろん じっくり読んで未だ愚見を失礼致します。
くまりんさんのところに行ってきた帰りです。
ショックで・・今はうまく話せません

kibashirikibashiri 2005/04/02 01:12 つーさん様。興味をお持ちいただき光栄です。
>もうすこし様子を見守りますから、この調子でがんばってみましょう。
あの〜、その添削指導員のような口調、ネタですか?(爆笑
すみません。失礼しました。冗談です。コメントありがとうございます。(汗

drondron様。コケの一念というより、しつこいだけでございます。
北朝鮮に対しては、是非軌道修正した上で、日本政府は堂々と対峙してほしいですよね。

鮎川龍人様。JANJAN誌上で、拙稿に対する愛あるコメントありがとうございました。
さすが、愛国の考古学者、鮎川龍人様ならではのコメントで感銘いたしました。

>くまりんさまがサイト閉鎖。
私もショックです。エイプリルフールと信じたいです。

こえだ様。発言、楽しみにお待ちしております。
くまりんさんの件は、彼一流のお戯れと信じたいです。

kumarinkumarin 2005/04/02 17:57 みなさま、、毎年恒例のエイプリールフールネタだったのですがよそ様のところまでお騒がせして申し訳ありません m(_ _)m。
木走さま、お詫びにといってはなにですが、昨日ちゃんとクリックしておきましたですよ。最近の JANJAN はすっかり2ちゃんねる状態で責任ある言論空間はどこへいったのよ状態ですが、このような記事が投稿され議論が建設的な方向に広がると良いですね。

kibashirikibashiri 2005/04/02 19:23 kumarin様。やっぱり、エイプリルフールのお戯れでしたね。
いや、よかったです。(ホッ
クリックありがとうございます。

福山達也福山達也 2005/04/02 22:56 こんにちは。
押しておきましたよ!
次回作、楽しみにしています。
では、また。

kibashirikibashiri 2005/04/03 01:29 福山達也様。クリックありがとうございます。JANJANでもフォローのコメントありがとうございます。最近のJANJANの低次元の言論に一石を投じられれば嬉しいのですが・・・

pontakapontaka 2005/04/11 20:43 やっと日本に帰ってまいりました。JANJANの記事を読みました。木走さんの行動力には敬服します。今後も素晴らしい記事がこのBlogより生まれることを、心から願っております。それにしても、僕がいない間に面白そうなエントリをたくさん挙げておられているので、あっちこっちにコメントしちゃうかもしれませんが、お許しを。

kibashirikibashiri 2005/04/12 12:30 pontaka様。
ようこそ、お帰りなさい。ご無事で何よりでした。
この記事に関しては、本当に貴兄にご協力いただき感謝しています。
御陰様でJANJANでも話題を呼ぶことができたようで、どこまで認知されたかはわかりませんが、ささやかに問題提起できたのかなと思っております。
今後ともどんどんコメント下さいませ。
私もそちらに折を見て遊びにうかがいますですね。

OrionOrion 2007/06/05 14:29 http://69b6f3aa82da0fc4b8ec738c0c9b51f0-t.sjuubb.info <a href=”http://69b6f3aa82da0fc4b8ec738c0c9b51f0-h.sjuubb.info”>69b6f3aa82da0fc4b8ec738c0c9b51f0</a> [url]http://69b6f3aa82da0fc4b8ec738c0c9b51f0-b1.sjuubb.info[/url] [url=http://69b6f3aa82da0fc4b8ec738c0c9b51f0-b2.sjuubb.info]69b6f3aa82da0fc4b8ec738c0c9b51f0[/url] [u]http://69b6f3aa82da0fc4b8ec738c0c9b51f0-b3.sjuubb.info[/u] 3298eb9df6ae4426170a873fb3cf47ee

2005-03-24 今こそ、勝利の凱歌をあげよ〜秩序を破壊したホリエモン

[][][]今こそ、勝利の凱歌をあげよ〜秩序を破壊したホリエモン 15:32


 今こそ、勝利の凱歌をあげよ〜秩序を破壊したホリエモン


●既存秩序は破壊された

 破壊者ホリエモンにより既存秩序は破壊されたのである。

 ニッポン放送の新株予約権発行について東京高裁もライブドアを支持する決定を行った。「新株予約権発行はフジテレビによる経営支配権確保が主要目的で、株主一般の利益を害する」と認定した。司法が三たび、ライブドアに軍配を挙げた。

 ニッポン放送側は最高裁への特別抗告を断念し、ここにライブドア傘下の軍門に下ることが事実上確定的になったのである。


●「モラルなき達人」と「おろかなるダブルスタンダード」

 今朝の産経新聞社説では、堀江氏のことを、「モラルなき達人」と吐き捨てている。

 彼等、堀江氏率いるライブドアに攻められたフジサンケイグループにしてみれば、たしかに、その出現ぶりは、まるでテレビゲームの“達人”のように映ったのであろう。

 今回の問題をゲーム感覚で見ていた人々が「モラルなき達人」・堀江氏のプレーに喝采(かっさい)したのは当然かもしれないと産経社説は分析しているが、負け惜しみじみてはいるが、堀江氏支持が多数派となった世論の動向の一面をたしかにとらえてはいるのである。

 しかし、おおくの人々が破壊者ホリエモンを支持したのは、今回の問題をゲーム感覚で見ていただけではないのであり、フジサンケイグループはそこを見誤ってはいけないのである。堀江氏が投じた一石は、眠れる世論を喚起させたのだ。

 堀江氏に対しては「公正な報道」を理解していないなどと批判しながら、自分たちは低俗な番組を垂れ流しているという、おろかなフジサンケイグループのダブルスタンダードに、心ある者は多いに失望し、今回堀江氏が壊そうとした既存秩序・免許事業制度というぬるま湯に浸りきった放送業界の悪しき秩序に多くの人々が猜疑的にその胡散臭さに気付き始めたのである。


●畏るべき最適化された秩序破壊者ホリエモン

 堀江氏が世論を味方に付ける過程において、司法の判断がライブドア側に軍配があがるたびに、堀江氏およびライブドア側の言動・態度が補正され、絶えず世論を意識しながら最適化されてきたことも、見過ごせない重要な点である。

 彼は、「テレビを殺す」と恫喝する生意気な「成り上がり者」から、「ラジオ・テレビ」とインターネットを融合しようとする紳士的な「理解者」に脱皮していたのである。いまも進行形で、彼が自らを環境に適合して最適化させ、周囲の環境をも最適化しつつあるのは、畏るべき驚くべきことである。

 畏るべき最適化された秩序破壊者ホリエモン。


●フジの最後の反撃〜目には目を、ライブドアにはソフトバンクを

 24日午後、フジテレビは驚くべき奇策に打って出た。ソフトバンク・インベストメントにニッポン放送が持つフジテレビ株式14.67%を2010年4月まで5年間貸し付けると発表したのだ。この結果、孫正義氏率いるソフトバンクグループがフジテレビの筆頭株主になる。さらに、3社は、共同でコンテンツ・メディア・ブロードバンド分野のベンチャーキャピタルファンドを設立するとの構想を明らかにした。

 これは、フジテレビジョン本丸を守るために周到に準備されたフジサンケイグループの防衛策であろう。こざかしいライブドアを追い払うために、IT業界の雄ヤフージャパンをしたがえるソフトバンクに、恥も外聞もなく助けを求めたのである。

 ソフトバンクという新たなアクターの登場により、事態はさらに複雑怪奇、今後の展開の予想がまったく困難な状況に陥った。

 だが、フジサンケイグループをそこまで追いつめたことは、まぎれもなくライブドアの力によるものである。ここまでは、堀江氏の勝利といっていいだろう。


●今こそ勝利の凱歌を高らかにあげよ、ホリエモン

 フジサンケイグループのなりふり構わぬ奇策のために、勝利の凱歌をあげるどころではなくなった感があるのは否めない。既得権益を守ることだけに執着するグループに、栄光ある勝利はすっかり泥まみれに汚されてしまった。

 ソフトバンクという新たなアクターが登場した、今こそ、具体的事業プランを示すときがきたのではないのか。

 しかし、ここにいたっても、堀江氏の口から具体的なメディア論は聞かれてこないは、残念なことである。

 その勝利の凱歌のメロディはいかなる旋律を奏でるのか、衆目の関心はその一点にある。

 あえて今こそ勝利の凱歌を高らかにあげよ、ホリエモン。



・テキスト修正(2003.03.24 18:05)新たな展開(ソフトバンク参入)により、その部分を中心に加筆、修正しましした。

(木走まさみず)

 いやあ、ほんとうに驚きですよね。私は、一時、堀江氏はある程度目的を達成したのだから、有利なうちにフジテレビとうまく和解して撤収すべきであると考えていたのです。なぜならば長期戦は資本力の差からライブドア側には不利になると踏んでいたのです。

 しかし、その堀江氏不利の予想はここまでは見事に外してしまったようです。堀江氏は「将棋で言えばもはや詰んでいる」などと強きの発言をしていましたが、今日この決定を向かえてみると、あながちホラ話でもなかったような気がしてきました。

 さあ、このあとどう展開していくのか、一部新聞の論調では、いよいよ本陣(フジテレビ)になぐり込みを掛けるのではという予想もありますが、どうなんでしょう。

 ただ、ここらへんで堀江氏も具体的事業プランをしっかり出すべきであることは、木走としては強く主張したいです。世間が追い風のうちに、しっかりとした堀江氏らしい斬新なプランを披露してほしいですね。ここは期待を込めてでありますが。

 みなさんのお考えはいかがでしょうか?

●追記(2003.03.24 17:30)

 いやいや、孫さんがご登場になられました。

フジテレビ株:ソフトバンクが筆頭株主に ファンドも設立

 フジテレビジョンとニッポン放送は24日、ソフトバンク・インベストメントにニッポン放送が持つフジテレビ株式14.67%を2010年4月まで5年間貸し付けると発表した。この結果、ソフトバンク・インベストメントがフジテレビの筆頭株主になる。また、3社は同日、共同でコンテンツ・メディア・ブロードバンド分野のベンチャーキャピタルファンドを設立すると発表した。

毎日新聞 2005年3月24日 17時19分

http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kigyou/news/20050325k0000m020003000c.html

 うーん、複雑怪奇になってまいりました。

 しかし、これって一種の「焦土作戦」かも知れません。株を売ったのではなく5年間の「貸し付け」の形式ですから微妙ではありますが。

 しかし、孫さんしてやったりでしょうねえ。かつてテレ朝の株買収問題で挫折したわけですが、おそらく今回はフジサンケイグループから誘いがあったのではないでしょうか、確認したわけでないのですが・・・

 フジサンケイグループは墜ちるところまで墜ちた感はありますね。苦し紛れに取った奇策ではありましょうが、「母屋を取られる」ようなドジはふまないようにしないとね。

 不肖・木走は、孫さんとこと取り引きしたこともあるのでございますが、いやいやなんとも、ホリエモンより上手でございますよ、あの方は。

 それにしても、おもしろい展開になってまいりました。




<木走よりお知らせ>

当テキストを元原稿としてインターネット新聞JANJANにて記事が掲載されました。

今こそ、勝利の凱歌をあげよ(木走まさみず)』

http://www.janjan.jp/media/0503/0503244925/1.php


<関連テキスト>

●ホリエモン考〜最適化された秩序破壊者

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050302

●ホリエモンの元部下の話

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050223

●フジサンケイグループのダブルスタンダード

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050304

●進化を忘れた放送業界

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050305

●ホリエモンは『不死身』ではなく『破壊者』だと思います

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050307

●破壊者ホリエモンが投じた一石〜悪しき秩序は守られたか

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050308

●蟷螂(とうろう)が斧(おの)を取りて隆車(りゆうしや)に向かう〜今こそ撤収の時

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050311

●木走教授のトンデモ講義〜ホリエモン報道におけるメディアリテラシー

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050312

●胡散臭いぞ!東京電力

●最適化すすむホリエモンVS捨て身の焦土作戦

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050314

katchankatchan 2005/03/24 17:48 先ずは司法の判断が三連勝したことことに納得して、ほっとしています。堀江氏のメディアに対する「論調」というか、大人気ないフジサンケイ・グループとの違いとでもいうべき「姿」をはっきりと見せて欲しいですね。若い「改革者」になるには、単に大株主になるだけではなく、真の経営者として信頼に足りるものを出してこそ、われわれも支持できると考えています。まだまだ先が読めません。単なる外野席の応援団ではいられないと思っています。いずれにしろ、「護送船団」に一石を投じた意味合いは大変大きかったと拍手したい気持です。今後のご健筆を期待しています。

rice_showerrice_shower 2005/03/24 18:21 神保氏のところで昨日収録された90分に及ぶホリエモンのインタビューがアップされています。 宮台真司を交えた実に面白い話が聞けます。 今まで語られなかった彼の思想(生粋のデモクラット)、既存メディアの報道姿勢への具体的な批判、事業ビジョン(説得力有り)など、ホリエモンウォッチャー必見です。(有料ですが、このサイトは結構視聴者が多いので、そのうち誰かが自分のblogでテキスト化してくれると思います) 
話を聞いて、これなら大丈夫かも知れない、と感じたところに、“孫が来たー!”
なんと面白い展開!

kibashirikibashiri 2005/03/24 20:37 katchan様。「ほっとしています。」とのことですが、ソフトバンクの孫さんの登場で、もうなにがなんだかって感じになっちゃいましたね。なんか、私は別にホリエモン支持派でもなんでもなかったのですけど、すっかりホリエモンシンパの一員になってしまってるみたいです。(汗

rice_shower様。ほんと、今日はブロガー泣かせの一日でありました。産経の社説とかみつつ、最初は優雅に「ホリエモン勝利の凱歌をあげよ」という主旨のテキスト載せたのに、夕方になって孫さん登場であります。ひっしこいてテキスト直して、疲れましたです。はい。貴兄に教えていただいて以来、神保氏のところはテキストベースではよく見てます。ビデオも明日見てみます。

鮎川龍人鮎川龍人 2005/03/25 21:09 木走様、こんばんは!
ホリエモン関係は、なるたけスルーのつもりで、エントリも挙げないで来たんですが、木走様のは、つい読んじゃいますね。
なんというか、彼はシステムの構造を認識する能力と、解釈する能力が際立って高いように感じます。
ただ、人間性というか・・・・・
お友達にするには良いですが、一緒に仕事をしたいタイプじゃありませんね。いや、こちらがカスタマーとしてなら面白いのかな?

孫氏も、かなり個性的な人ですけどね。
    ではでは!

rice_showerrice_shower 2005/03/25 22:13 貴兄は「EPIC2014」についてご存じでしたか? 恥ずかしながら、私これを昨日夜知ったばかりです。 
上にご紹介したインタビューを聞いた後に、これを読んで、ホリエモンは「EPICは、私たちが求めたものであり、選んだものである。 その商業的な成功は、報道倫理のためのメディアと民主主義をめぐる議論が起こる前に実現した」で良いと思っている、だから今着手し、その実現に突き進むのみ、(彼自身は言及していないが)これこそが彼の共鳴するビジョンに違いないと、合点が行った感じです。(ここでこの内容の是非は述べません。 というか私の理解力を超えていて判断出来ません)
http://blog.digi-squad.com/archives/000726.html

kibashirikibashiri 2005/03/26 09:42 鮎川龍人様。そうですよね、堀江氏はいっしょに仕事したいタイプではないですよね。あと、彼は不特定多数の顧客の動向には関心があると思いますが、顧客一人一人なんかまったく関心無いでしょうねえ(爆)
孫さんは、ホリエモンよりたちが悪いとおもいますよ。頭良すぎで何かんがえてんのか、サッパリわかりませんもの。

rice_shower様。 いつも貴重な情報ありがとうございます。「EPIC2014」、恥ずかしながら初めて知りました。読ませていただき、納得でした。うん、これなら堀江氏の行動原理をささえうる、目指すべき指針になりえますよね。どこまで実現できるのか、ちょっと今の私にはわかりませんが。いかん、勉強しなくちゃ、業界の動向についてけなっちゃうなあ(汗

rice_showerrice_shower 2005/03/26 10:37 「EPIC2014」について、貴兄が同じ様な印象を持たれたようで嬉しいです。
ライブドア-フジサンケイ問題に関しては、多くのblog等を訪問し、各々の分野のspecialist達の様々なコメントを目にしましたが、ホリエモンの能力の源泉、意志決定の基準が“最適化(optimise)”だという、貴兄の着眼が今もって最も的確で、秀逸だと思います。  お世辞でも何でもなく、一般常識的には、首を傾げざるを得ない彼の戦略、姿勢の変化なども、このキーワードを助けに分析してみると、すんなりと理解出来た。
少し前に「ホリエモンの欠点は、たとえそれがまやかし、はったりであろうとも、その言葉に某かの夢と希望を感じさせる孫正義のような人心操作のワザが欠けていることだろう」と書いたのですが、これは「未だによう分からん」という私の孫氏への印象を述べたものでもあります。
今回の件で、孫さん自身がどのように関わっている(くる)のかが不明ですが、テレ朝買収の時に彼が手を組んだのが、“ブッシュべったり堂々偏向”Fox Newsのマードック氏でしたからね。 ホリエモンのadvantageでもありdisadvantageであったナイーブさは孫さんには無い。 “ジジイ転がし”がとびきりうまいらしいし、北尾某という百戦錬磨の強者が脇を固めている。 次々現れるユニークキャラの放つハレーションで眩惑されず、何が進んでいるか、どこへ進むのか、しっかり見極めたいですね。

kibashirikibashiri 2005/03/26 13:02 rice_shower様。お褒めいただき光栄です。正確には“最適化(optimise)”このキーワードは彼のもと部下の方が述べていたことを私が公開して、拡大解釈しただけなのではありますが、さあしかし、“ジジイ転がし”がとびきりうまい孫さんの登場で、わけわからなくなりそうな展開ではありますね。へたなドラマよりよっぽどおもしろかったりして・・・

2005-03-13 やさしき商店街の人たちと『やきにくのおばちゃん』

[][][]やさしき商店街の人たちと『やきにくのおばちゃん』 13:25

 私は、東京近郊の小さな商店街で生まれ育ちました。今日はその商店街の話から始めたいと思います。

キヨさんの話

 キヨさんは、私鉄沿線の商店街で小さなラーメン屋を営んでいる。彼女は今年69才。中学を卒業してすぐの昭和25年に愛知から東京に出て働き始めた。

 その後、新潟出身の旦那さんと知り合い、二人でお店を始めたのが昭和29年。以来、50年近く、元気にお店をきりもりしてきた。その間、二人の息子を育て、大学まで入れて、今では孫が5人いる。4年前に旦那さんを亡くされてからは、お店の2階の住居で一人住まいをしている。

 そんなキヨさんの今の楽しみは、週に一度の三味線のおけいこと、やはり週に一回ぐらい、近所のおばさん友達と行きつけのお好み焼き屋さんで飲んで食べておしゃべりすることだ。

 「息子達もそれぞれ親として家庭を持ち生活している。私は働ける限り今のお店を続けたい。息子の世話になるのは、その後でいい」と語るキヨさんは、今の生活に十分満足しているように見えた。明るい朗らかな性格で、商店街のみんなから「おかあさん」と呼ばれている。

 最近、そんなキヨさんの元気がない。あれだけ楽しみにしていた週に一度の三味線のおけいこにも来なくなったし、近所のお好み焼き屋さんにも顔を出すことがめっきり少なくなったという。

 どうしたのだろうと訳を聞くと、ここ数年で駅前に大手チェーン展開のラーメン屋さんが、あいついでできたことで、お客さんがめっきり減ってしまったのだという。

 お店が毎月赤字なので、息子達に何回か資金を援助してもらいどうにか維持してきたが、もう限界なのだそうだ。大好きな三味線のおけいこ代も飲食代も節約するぐらい切りつめて、それでも、赤字だという。

 「働き続けたい。お父さんと二人ではじめて50年続けてきた商売だもの。でも、いつまでも息子達に援助してもらうわけにもいかない。それぞれ家庭をもっているのだから。このままでは店じまいするしかない」

 キヨさんにいつもの人なつっこい明るい笑顔はなく、あきらめきったような寂しげな微笑みがあるだけだ。その目尻のしわに、彼女のどうしようもない絶望感を感じた。

 大手スーパーやファーストフード・チェーン店など大資本の進出・展開が続き、地元商店街の元気がない。家族や夫婦で経営する乾物屋さんや豆腐屋さんが街から姿を消し、そして、今、昨今のラーメンブームの陰で、小さなラーメン屋さんが店を閉じようとしている。

(木走まさみず)

 この拙文は、昨年10月、私が初めてインターネット新聞JANJANに投稿した記事です。

(参考)

『働くということ キヨさんの話』(2004/10/19)

http://www.janjan.jp/living/0410/0410189835/1.php


 キヨさんの店のそばに、子供の頃からよく家族で食事をした小さな『やきにく屋』さんがありました。10坪ほどの小さなお店をおばちゃん(私は『やきにくのおばちゃん』と呼んでました)が、一人で切り盛りしていました。

 炭火焼きで焼くその焼き肉の味は、とても素朴で今にして思えばそれほど高価な肉ではなかったのでしょうが、その店でときどき、家族で焼き肉を食べるのが、子供心にもとても楽しみでありました。

 『やきにくのおばちゃん』は在日韓国人でした。だんなさんとは死に別れ、一人息子はもう独立していました。

 私の父が商店街の理事をしていた関係で、さきほどのキヨさんや『やきにくのおばちゃん』達の、商売上のことやらなにやら相談役のような立場で、親しくさせていただいておりました。

 当時、時々、私の父が『やきにくのおばちゃん』を連れて区役所や公的機関に手続きにいってました。後から知りましたが、お店の更新やいろいろな申請手続きなどを父が手伝っていたのでした。『やきにくのおばちゃん』は、その世代の在日の方にはけっして例外ではないのですが、日本語の読み書きができなかったのです。

 数年前、『やきにくのおばちゃん』が亡くなった時、一人暮らしのアパートで病死(急死でした)していたのを最初に見つけて病院に通報したのは、親しくしていた商店街の人達でした。お店を開ける時間になっても開かないのを心配したキヨさん達がアパートまでたずねてのことです。

 キヨさんから話を聞いた私の母が、すぐに一人息子さんに連絡しました。息子さんはすっかりりっぱになられて某大学の教授になられていました。

 『やきにくのおばちゃん』のささやかな葬儀の席で、息子さんが涙を流しながら、感謝の言葉を述べられたのが、今もおぼえています。

「母はこの商店街が大好きでした。もう年だからいっしょに暮らそうとさそっても最後までお店にこだわっていました。商店街のみなさん、今日まで優しく接していただき本当にありがとうございました。」


 私・木走が、街で働く庶民の人たちや東アジアの国々に関心がある原点は、このあたりの生い立ちにあるのかも知れませんです。



(木走まさみず)

参考ブログ pontakaさんの『コリアと友好を築く意義』(http://blog.goo.ne.jp/pontaka_001/

kazukanakazukana 2005/03/13 14:28 そういえば私が住む町の商店街もすっかり寂れてしまって元気がありません。私自身買い物はたいていコンビニですませています。それがよいことなのかどうか・・・ 日本人は利便性を追求することばかり熱心になりすぎてしまって、なにか大切なもの、大切な価値観を置き忘れてしまったかも知れません。紹介いただいたpontakaさんのブログを拝見しました。とても聡明な方ですね。コリア系日本人の方とは知りませんでした。

drondrondrondron 2005/03/13 16:10 アメリカ式グローバリズム商業主義にどこまで日本は追随するのか考察した時、街の小規模商店街の行く末は本テキストの示す情緒的な側面だけでなく、もっと注目されていい話題であろう。「古い形態の競争力の無いものは淘汰される」という冷徹な経済思想はホリエモンに通ずるアイディアだが、さてこのテキストのかもし出す「やさしい視点」は、木走氏の普段の論理性とは乖離しているようで興味あるところだ。木走氏のテキストは、冷静論理的な実証主義と情緒的な庶民主義が交互に顔を出し、氏の中で矛盾無く同居しているあたりが、おもしろい。

けいけい 2005/03/14 04:35 初めまして。pontakaさんとこにたまに顔出す在日三世です。
「やきにくのおばちゃん」の話、ちょっとウルッときてしまいました。
私の祖父は両親のいない私たち孫三人を、男手ひとつで育ててくれました。日本語も知らず、文字も読めずに。
思えば祖父の代の在日は、異国となった日本で日々の生活に忙しくて、自分の国籍問題や、アイデンティティを考える余裕すらなかったのかなと今になって思います。

帰化を考えないでもないのですが、今自分がここに存在するのはどのような過程を経てなのか、熟慮するとともに、安易な結論は出すまいと思います。
その意味でネット上でよくみかける、在日はあくまでゲストにすぎないだの、帰国か帰化かだのといった、因果律をまるで無視した偏狭な二元論に最近憤りを覚えます。生まれながらにして何の苦労もなく日本国籍である人々、neetだろうが、プーだろうが、殺人者であろうが、国籍を剥奪されることのない人々に、我々の葛藤を理解してもらうのは難しい。

いきなりの愚痴めいた話、失礼しました。温かみのある文面、これからも楽しみにしています。

rice_showerrice_shower 2005/03/14 10:05 心根の強い人は、やっぱり“長い波長”で物を見られるんだなぁ*、と感じました。(*量子論の話です。 お分かりになる方だけ...)
pontakaさんのblogは、私も時々拝見しています。 
あまりに月並みですが、草の根の心の触れ合い(葛藤、対立も含めた綺麗事ではない交流*)こそが、異民族、異文化間のfatalな結末を回避出来ると思っていて、私自身実践しているつもりです。(私の場合、主に中国人相手に)
*腫れ物に触ることを過分に恐れず、しかし互いにある一線以上は踏み込まない礼節、みたいな。
nationalismは共有出来なくても、patriotismはシンクロするはずだ。
私は決して受け入れられない価値観、史観等を押しつけようとする相手に対しては、はっきりと異議申し立てをするタイプの人間だけど、強靱な精神は決して激語により語られるものではない、弱い犬(異質を情緒的、生理的、動物的に端から拒否しようとする心根の弱い輩 → 単純な反<親>フジサンケイ、反<親>ホリエモンもそうだ)ほどよく吠える、というやつです。(私の好きな某社会学者はこういう輩を“へたれ”と看破していて心地よい)

kibashirikibashiri 2005/03/14 12:01 kazukana様。私も最近pontakaさんのブログを知りました。彼のブログではとても真摯にいろいろな議論がなされています。私も毎日拝見しておりますが、今度機会があれば時間を見てコメントを書かせていただこうと思っています。

drondron様。貴兄はナニモノですか?(爆) いつも鋭い分析ありがとうございます。拙文を評論いただくのはありがたいですが、あまり木走本人は分析しないで下さいませ。(笑)たいした人間ではございません。
 まじめな話ですが、私の中ではスタンスに矛盾はないです。この世界で起こっている事象を、感情論ではなくできうる限り客観的に観察し、自らの言葉で読者に発信していきたいと努力しております。そして、表層で現れている現象の真の底流にある本当のうごめき・ながれを、みなさまと一緒に考察できればと考えております。

けい様。はじめまして、ようこそです。コメントありがとうございます。「やきにくのおばちゃん」の話は、おそらく、この日本中で名もなく声もなく真摯に生きてこられた在日一世の方々の一人の逸話にすぎないのであり、けいさんのおじい様をはじめ、多くの一世の方にそれぞれのドラマがあったことと思います。ご指摘のとおり、この世代の方々の多くは、日々生きるのに精一杯であったことでしょう。
 「偏狭な二元論に最近憤りを覚えます」とのことですが、感情論として共有いたします。なにも、朝鮮半島の問題だけでないでしょうが、狭量な視点・視野からの単純な論説は、二項論・二元論に陥り易いようです。曰く、○○が悪い、△△が嫌い、××とは話をしても意味がない・・・。私達は自戒を込めてそのような論説に陥りたくないないものですね。これからもよろしくお願いいたします。いつでも遊びに来て下さいませ。

rice_shower様。おお、量子論ですか。いつか機会があれば脱線して語り合いたい分野でございます。ご説ごもっともです。草の根の心の触れ合いであるならば、葛藤、対立を乗り越えて真の理解につながるのだと思います。
感心したのは、「異質を情緒的、生理的、動物的に端から拒否しようとする心根の弱い輩」とは、rice_shower様らしい、厳しくも鋭くこの問題を描画されたコメントでありました。また、今度の私のコメントで引用させていただきます。(爆)m(_ _)m

皆様。コメントありがとうございます。

pontakapontaka 2005/03/14 22:55 ちょっとみなさんよりコメントが遅れましたが、まずは僕のブログの参照ありがとうございます。このお話、(在日云々関係なく)何か暖かいものを感じますね。木走さんのお人柄がしのばれるような文章でした。

kibashirikibashiri 2005/03/15 10:21 pontaka様。お褒めいただき恐縮です。なんというか、私は人と接するのが好きなんです。僕の心の中では、キヨさんもやきにくのおばちゃんも、みな興味深いすばらしい人たちなのです。

。みだれ髪^^。。みだれ髪^^。 2005/06/30 10:42 「ホルモン」は何故「イタダキモン」では無く「ホルモン」なんだろう?その時間軸を考察^^(?)しては、それを「在日のギリギリのプライド」と受け止める私。ちょっと身贔屓が過ぎますか?やきにくのおばちゃんの生き様、そしてこのお話を伝えて下さった木走様に感謝致します。
いつも満員で通過。ガラガラの臨時列車に運良く乗合わす事になったそんな感じでございます。珍しく動きの止まった隙^^をぬってのご挨拶^^。これからもず〜っと伺わせて頂きます。お体ご自愛下さいませ。

kibashirikibashiri 2005/06/30 18:48 。みだれ髪^^。様

ようこそ、コメントありがとうございます。

>「ホルモン」は何故「イタダキモン」では無く「ホルモン」なんだろう?その時間軸を考察^^(?)しては、それを「在日のギリギリのプライド」と受け止める私。

 うんうん、なるほどですね。その感覚はよく理解できますよ。

>いつも満員で通過。ガラガラの臨時列車に運良く乗合わす事になったそんな感じでございます。珍しく動きの止まった隙^^をぬってのご挨拶^^。これからもず〜っと伺わせて頂きます。お体ご自愛下さいませ。

 こちらこそ、よろしくお願いいたします。(微笑