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2009-08-13-Thu

玉野五十鈴の誉れ / 米澤穂信

Story Seller (新潮文庫)

Story Seller (新潮文庫)

 初体験の米澤穂信を読んでみました。

 このお話はある威厳のある旧家を舞台にした、切なくも歯痒い、何とも言えないような苦しい話です。


 以下、ネタバレします。


 まず、米澤穂信は舞台設定が上手いと思いました。

 導入部にて、主人公の小栗純香が訥々と自分の旧家の家柄や、それが周辺地域に与える影響、ひとつの荘厳な一族の中心に存在する高台寺の王こと『お祖母さま』についての色々な話――とてもスムースです。

 このお祖母さまがなかなかのくせ者で、正当な血筋で跡取りを生むことが出来ない*1、小栗家の(呪われたような)その運の悪さを嘆いている。言わずもがな男の跡取りが生まれることを切に願っているのだが、なかなかにして男の子が生まれない……何てことだ! という感じではあるが、女傑であるが故、跡継ぎが生まれない小栗家の今後を憂うのは仕方がないことなのかもしれない。そして、そんなだから周りの人間に対しても厳しくなり過ぎてしまうのかも知れない。

 だが、だからといっても、女として生まれた子孫に対しては、本当に鬼のような側面を見せる。

 小栗純香はお祖母さまから見て孫なのだが、お祖母さまも純香には期待しているようで、何とか彼女には男の子を産ませたい、と考え様々な教養を身につけさせる。

 純香の十五歳の誕生日、お祖母さまは贈り物と称して、玉野五十鈴を純香の付き人とした。この玉野五十鈴との出会いが純香を変えていく……。

 とても純粋な少女二人が、お祖母さまの目を掻い潜って交流を重ねていくのが見ていて面白い。純香はとても好感の持てるキャラクター設定で、彼女の人間の深さが垣間見える場面が多々見られる。玉野五十鈴はとてもユーモアがある愉快な人間であるが、それが使用人としては必要がないことも理解をしており、お祖母さんの言い付けを守る荘重な人間であるともいえる。

 本作のタイトルは『玉野五十鈴の誉れ』、一人称目線として主人公は小栗純香だが、本来の動きを追わなくてはいけないのは玉野五十鈴なのかも知れない。五十鈴は良い、実直で、言われたことは必ず守る。

 もしかしたら、ただ不器用で頑なな朴念仁にも映ってしまうかも知れないが、実はそうではないんだなぁ。と読み終わってからは思う。

 しっかりと確固たる己の信念を貫いて生きている人なのだと、後々理解した。

 オチは、とても悲劇的な内容だと、個人的には思いましたが、こういった小説もたまには良いな。と思いました。

 作者の米澤穂信は様々な本に造詣が深いことも分かり、やっぱり俺はエドガー・アラン・ポーも読まなきゃいけないな、と思った。

*1:つまり、男が生まれないということ

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