怠惰な日々

2018-12-22 紀伊半島の旅4日目

朝早くネットカフェを出る。まだ雨が降っている。

海沿いの道を西へ歩く。

古い市営住宅などが見える。こういう古いアパートというのは、人の生活感の強烈な匂いが手まねきをする。

西へと進み、屋敷町のあたりを歩く。町名にもなってるくらいだから本当に屋敷町で、昔はもっと屋敷町だったのだろう。今は生気が薄れている。

縦横に歩いたのち、巴里という喫茶店コーヒーを飲む。クラシック流れる豪奢な内装で、屋敷とあわせると、この田辺がかなり繁栄した時代があるのがわかる。この喫茶店ができた頃とは時代が変わったのだろう。

田辺の街を再び歩く。貧しげな地区も、長屋井戸も、歩き見るにはいい。

ここから和歌山へは電車の本数も多い。新駅舎で御坊へ向かう。

御坊の駅はおそらく町外れなのだろう、寂れているというより殺風景だ。市街地の方向へ歩くが、駅が離れているから結構遠い。遠浅を干拓したのか田んぼを埋めたのか、平坦で歴史のない道が続く。

つまらないかなと思ったが、そういうところでも楽しみはある。

カラオケドナルドという、閉店したらしいカラオケ店の廃墟や、東宝ボウリングというこれは営業中らしいがどこか興味を惹かれるものもある。

紀州鉄道も始めて見た。駅で高校生吹奏楽練習をしていたり、グッズを売っていたり、使われてない車両弁当を売ってたり。いろいろ努力しているようだが、この場所では無理がある。僕もこういうローカル線は好きなんだけどな。

農道を歩いて駅へ。単線踏切がまた趣深い。

歩いてると充電が切れた。ケーブルもだが、iPhone最近様子がおかしい。まだまだ使わないといけないのに。

駅前の土産物屋で職場用のお土産を買う。こういうとこで土産物なんか買う人がいるんだろうか。いるんだろうな。誰なんだ。

あとは和歌山へ。別世界のような賑わい。駅前に堂々とデパートがある街は久しぶりだ。和歌山駅前はこれといって何もないのは以前の田辺帰りの経験でよく知ってるつもり。

とことこ歩いてぶらくり丁あたりへ行き、和歌山目的である喫茶ヒスイへ。幸い営業していた。

水を運んでくるのも大儀そうなおじいちゃん、腰が痛いともらすおばあちゃんデイサービスでももっと元気そうな人がいるんじゃないかという身体だが、それでも精一杯営業している。

御坊がなにもないところだったから、ここでなにか食べるつもりだったが、あれこれ料理してもらうのがちょっと申し訳なく思うのだが、営業してるからには注文はあった方がいいはず。コーヒーサンドイッチを注文した。セットというのはないので結構高くつくが、苦労からすると安すぎるくらい。

このヒスイ内装田辺巴里と同じく豪華で、特に2階と天井から下がるシャンデリア、ステンドグラスが美しい。

夫婦の様子からみると、相当しんどいはずで、いつ閉めざるを得なくなっても不思議はない。

商売というより生き甲斐として、そして僕が帰るころに入ってきた二人連れの常連さんなどのためにも、開け続けているんだろう。再訪できることを願う。

その後ぶらくり丁を散策レトロ度の高いエリアで満足だ。大通り沿いに中古レコード屋があったように記憶しているが、そのあたりにはなく、商店街なかにクロスロードレコードという中古レコード屋があった。移転したのか別の店かはわからない。中森明菜不思議」、山口百恵横須賀ストーリー」、シモンズ恋人もいないのに/シモンズ世界」それぞれ200円。

あとは駅に戻るだけなのだが、途中でスマートボールの店を発見。正直なところルールはろくにわからないのでただ弾くだけなのだが、何回か穴に入って玉も結構増えた。上手くなったら100円でだらだら遊べそう。面白かった。

和歌山駅から天王寺まですぐ。改札を出るとき、記念の切符持ち帰りをお願いした。

久しぶりの帰宅ありがとう

2018-12-21 紀伊半島の旅3日目

今日も早い。目が覚めてテキパキ支度して鍵を帳場に置いて宿を出る。お世話になりました。

昨日歩いたようなところをまた歩く。街はそう広がりがなく、そして寂れている。市役所だって区民センターみたいだ。こういう街で旨い店なんて志すのは難しいだろう。常連が来るか来ないか常連が来なくなったら店は潰れるし来れば成り立つ。それしかない。どうも暗澹たる気分の連続でこの旅は続いているが、それは僕がよくひとり旅をしていた30年前と今との違いでもあるのだろう。あの頃、田舎だってそれなりの活力はあった。小さな駅前にも飲食店があった。あの頃訪ねた街に今行ったら、違う風景が広がっているんだろう。僕は歳をとった。

この新宮では、駅の近くで見つけた2階建の小さな市営住宅に力が見えた。猥雑で勝手気儘な集合住宅には死の気配はなかった。

夜が明けた駅前ローソンカフェオレを飲んだ。イートインのややこしいおっさんをおばさん店員が追い出している。このローソンは間違いなく生きている。

徐福公園にいちおう顔を出して電車に乗る。ホームの洗面台なんて見ると、ここが相当栄えてた時代もあるはずなんだが。

紀伊勝浦に到着。鄙びてはいるが、さすがに観光地という体裁だ。靴の底がまた外れはじめた。明日家に着くまでもってくれ。

まず港へ行ってホテル浦島の送迎船を待っていると、ほどなく亀の形をした船が来た。ちょっとおかしレトロ感にわくわくしてくる。早起きして純喫茶バンビも諦めてここに来たのはホテル浦島のためだ。

船に乗り込んだのは僕とおばさん2人。おばさんは日帰り入浴客ではなく従業員のようだ。掃除仕事でもするんだろう。

港に着いて船を降りると特に歓迎されるでもなくホテルに入る。通りすがりホテルマンが応対してくれて日帰り入浴となった。ホテルマン言葉遣い説明のそつのなさにはいつも感心する。フェイスタオルを出す前に追加料金でバスタオルの話をするあたり、プロだなと思ってしまう。こうでなくちゃいけない。

入れる風呂は4つ、清掃が入る時間がまちまちだから順番は自ずと決まる。

しかし館内は呆れるほど広く、移動経路の脇にはカラオケボックスだの将棋台だの占い師だの土産物屋だのゲームコーナーだのコインランドリーだのが出現する。ホテル模型だってある。泊まって探検するのもさぞ楽しかろう。面白いホテルだ。

まず磯の湯。ここは清掃時間直前だったので入るだけ。もちろん僕しかいない。濃厚な硫黄臭があり、効能は高そう。

次がお目当ての忘帰洞。ここもガラガラというか、僕のほかには2人しか見なかったし大半の時間は独り占めだった。平日の午前だからだろう、なかなかの満足度だ。洞といいつつよく見るとあちこちコンクリートだったりはするのだが、まあ大筋は洞なのだろう。洞窟太平洋の荒波が岩飛沫をあげるのを見ながら風呂に入れば気分がいいのは当たり前だし、あの旅館風呂よりずっといい。さっぱりする。ヒゲも剃った。どういう旅行なんだか忘れてくるから忘の字にも納得だ。

脱衣所にはひげ剃りの用意のみならず、角質を落とすとかい化粧品も試せるし喉が渇けば水もある。至れり尽くせりだ。1000円でこれは楽しみすぎじゃないか

今度は玄武洞。長い洞窟の先のほうが小さく海に面している。洞窟感はこちらの方が強い。湯が少し熱いので長居はできないが、海の音を聞きながら洞窟に籠る感じはなかなかいい。

最後に滝の湯。おっさん気持ちよく歌ってるのを邪魔して悪かった。泉質はまずまず。温泉が岩肌を流れて浴槽に入るのを見ていると気持ちいいし、小ぶりな露天風呂もある。

だんだん湯疲れしてきたので終了。

ここの名物はもう一つ、スペースウォーカーかいう長い長いエスカレーターもあって、風呂のあと行ってみたら10時で止まってしまうらしく、それだけが残念。もし今度来たら必ず乗ろう。

最後土産物でもと思ったが、ホテル浦島グッズが見当たらなかった。作れば多少売れると思うのでご検討を。今の時代、変な亀のキャラクターなんかより、レトロロゴのほうがキャッチーだと思うんだけどな。

送迎船で港へ。帰りは僕ひとりだった。

とりあえず昼ごはん名物の生マグロと決めているが、どこに行けばいいのか。賑わい市場とやらならウソはないだろうと思ったが、商売っ気たっぷり土産物屋に狙われたうえに食事は小さなベンチみたいなところで食べなければならないようなので早々に退散した。港町のお店をぐるぐる回ったが決め手はない。マグロが道端に転がってるのが面白いだけ。決め手がないのも道理、値段はわかっても味はわからない。仕方ないので桂城という和食屋で上マグロ丼を食べた。1500円。いろんな部位が載ってるし、生らしくねっとりした味わい。満足。

あとは街をうろうろだが、ほどよく観光客が来ているからか、なんとかやっていけてる感じはある。どこでも売ってる那智黒は寂れてそうな店でと思って入ったところは車いすのおばあちゃんがやってる店で、飴ごときのために苦労させてしまった。

今日帰るのならマグロだのいろいろ海産物を買ってもいいのだが、明日一日持ち歩くうえにもうすぐ帰省では間が悪い。残念。

若い女性の駅員さんにしげしげと切符を見られ、得意げにまた電車に乗り込む。

なんとなく串本で降りたのだが、どう見てもつまらなさそうな駅前で、しかしただ戻るのも癪なので、これまた暇そうな土産物屋でウツボの塩揚げとやらを購入。美味しいのかな。まあまずくはないだろう。ほんとは食べ物なんかより、棚にずらりと並べてある手づくりっぽい細工物飾り物に気が行ったのだが、いいのが見当たらなかった。乗り換えのわずかな時間ではじっくり見れない。ここの親父さん、足腰が悪そうなのに、客が入ってきたらずっと立っているのが気の毒だった。座ってていいのに。

このままだと田辺に着いてしまうが、それもさびしいので手前の紀伊新庄で下車。降りたもののなんにもない。あるとも思ってないけど。国道沿いをただ歩く。二度とは歩かない道を歩くのがいいのだ。特別ものなんてなくても。

と思ったら、ブックマーケットが見えたのでもちろんチェック。フランス・ギャル「Vol.1 Laisse Tomber Les Fille」400円。

さらに歩くと妙な建物が見えてきた。派手にピカピカ光っており、宇宙船のようだ。時代的には、ちょうどスターウォーズとかそのあたりに建てられたのではないか。金の使い道に困ってた時代建築主趣味を存分に発揮しパチンコ集客にも貢献しただろう。今でもピカピカ光らせてるのは偉い。近所に大型店が出来ているが、なんとか頑張ってほしい。これを見ただけでも紀伊新庄で降りた甲斐があった。

大和屋という地元スーパーがあったので明日朝用にパン売れ残りバナナパンを買う。バナナパンお土産だ。懐かしいし、この辺りで作ってるならお土産にもなる。パンパン屋で買いたかったが、田辺のアルペエンというパン屋で作ってるようなので妥協した。

雨が降りだした。ここまで晴天に恵まれ、昨日今日と暖かだったのだが、降るものは仕方ない。渋々折り畳み傘を出し、歩いたところでファミマがあったので不味いファミチキを食べる。三重ではファミマはもちろんコンビニもろくに見かけなかったが、和歌山に入るとそうでもない。紀伊新庄にしたって、何もないと言いながら三重の何もなさとは大違いだ。

雨はすぐに止み、ようやく田辺に入る。安そうな旅館があるが、まあネットカフェにしておく。風呂は昼に入ったし。

田辺は何度も来たところで、なんとなくは見覚えがある。ただ駅が建て替え途中のようでその異物感に邪魔される。記憶では駅前から伸びる道は、道端で手作り梅干しを売ってたりする鄙びたものだったが、全体的に新しくなりそんな面影はない。妻の土産もなにかいるだろうと駅前土産物屋に入ったが、パッとしない。まあパッとしないのが土産物屋なのだが。ハチミツ梅干しというありきたりなものを買う。

ここに来たのは阪和銀行が潰れたころのことで、薄暗い支店には何度も足を運んだが、もちろん今はない。どこにあったのかも定かではないが、もしかしたらその後みずほ証券になり今また空き店舗になっているところかもしれない。新しそうな道路もできてるし、要は駅から銀行に行って駅に戻ってただけだし、たいして寄り道もしなかったからわからない。覚えているのは、八幡巻を買ったことや神社にお参りしたこと、海のほうにも行ってみたいと思ったこと。遠い遠い記憶だ。

街をでたらめに歩いてみる。でたらめといっても、街のつくりというのはある程度似通ってくるものから、それなりに狙いどおりの道を歩くことができる。

商店が連なっている通り、住宅街、お屋敷長屋の目立つ地域。もう暗くなっている見知らぬ道を歩き続ける。

駅の近くには飲食街があり、昔からあったものに違いないのだが、当時はまるで知らなかった。細い路地が縦横に延びる、なかなか魅力的な路地だ。そして金曜の夜だからでもあるだろうが、意外にも活気がある。やはりこの路地の魅力というのもあるのだろう。

その外れにある福福という中華屋に入った。

カウンターに先客が2名、ひとりで飲み食いはできる雰囲気だが、観光客が来る店ではないか微妙雰囲気うずら卵の醤油漬け餃子塩ラーメン。おいしかったが、もう少しさばけたお店であればよかったかな。その近くのとっくりという居酒屋が繁盛してそうだったのだが、入りにくい店はやめとくに限る。

田辺バラエティに富んだ街並みで適度に広がりもあって歩くのにいい街だった。来たことがあるだけに予想外だった。

ネットカフェへ歩き始める。ネットカフェは町外れの街道沿いにあり、結構遠い。雨もまた降りだした。しかし途中の道のりがまた案外いいもので、横尾さんが見たら興奮しそうなY字路もあって、晴れてればもっとと思わざるを得ない。

しばらく歩いてコミックバスターに到着。見るからにしょぼいネットカフェで、マンガは多いが雑誌は少ない。しかカウンターの目の前にあるから取りにくいし、禁煙喫煙は分かれてないし、ネットコンテンツ微妙。それでいて安くはない。競合店がいないとこんなもんなのだろう。それとも、この辺りの人口密度では投資資金も厳しいのか。

ガラガラから静かでいいが、やけに乱暴な客がうるさく、それでもあっという間に就寝。

2018-12-20 紀伊半島の旅2日目

目覚ましでパチっと起床。コーヒー飲んだりして、やおら店を出る。2280円だった。

朝の寒い空気の中、駅の方へ歩く。通学の女子高生がまぶしい。

昨夜の徘徊を辿るようにあちこち歩く。明るいとまた感じが違う。松阪を歩き尽くす。

駅に着いたのはいいが、時間勘違いしていて、次の電車まで1時間近くある。モーニングでも食べたいが開いてる店はないし、旧市街というのか、松阪城址方面を歩いてみる。こちらも雰囲気のよい街で、面白い建物などいろいろある。興趣は尽きない。

時間に合わせて駅に行き、紀勢本線で西というのか南というのか、尾鷲方面に向かう。

途中、線路左手手作りの城が見える。手作りといってもかなり大きな天守閣だ。土地のお大尽かと思うが、一度見てみたい。しかしこれが鉄路限界、駅間のものまでは手が出ない。

尾鷲到着。駅前の店がやけに人だかりで、よほど安くてモノがいいのだろう。僕も気になったが、野菜果物を買うわけにはいかない。見るだけにする。

ちょうどお昼なので、寿司でもと考えたが、近くの和幸寿司は中の様子も値段もわからないのでは入れない。別の店を探しているところ、尾鷲ボーリングセンターが見えた。とうにつぶれているようで、外壁も崩れかけている。もっと見ていたいが、まずは昼ごはん。鬼瓦という恐ろしげな名前和食屋刺身定食1000円を注文。まずまず美味しかった。煮魚も人気のようだ。たまたまだが、カウンター満席のため1人なのに座敷に上げてもらった。

改めてボーリング場を見に行く。こうした廃墟のなかでも、ボーリング場というのは造りの特殊さもあって、より情感が増す。田舎のせいか荒らされてもいないようだ。いつまでもこの姿を保ってほしい。

そうこうしてるうちに電車時間が来た。街はもっと海のほうまで伸びているのだが、といってもう1本後にするのもなかなか厳しい。難しい選択だが、ここは中途半端尾鷲を離れることにした。また来ることがあればボーリング場ともども見てまわろう。

次に熊野市で下車。若い駅員が珍しげに切符を見る。得意げな気分になる。

とりあえず、有名らしい花の窟神社へ行ってみる。途中、獅子岩というのを見かける。なるほど獅子だ。

花窟神社は、岩が御神体とのことで、なるほど大きな岩肌が見える。僕にはそれ以上に祭神の祀られかたが珍しかった。御神体を納めることがないからか、玉石の向こうに露天で標が飾られている。面白い

あっという間に参拝してしまったので時間が余る。次の駅まで歩いていくつもりだったが、そっちは何もないだろう。熊野市駅なら、もう少し見るものがありそうだ。海沿いの道を引き返し、旧熊野街道徘徊する。昔風の家々が見えるが、整っているので僕の好みではない。それでもやはり見て楽しい。ついでに鬼ケ城トンネルも見に行く。昔よくあった、最近はあまり見ない旧式のトンネルだ。今はこういうのも観光資源になるのだな。実際見にきた僕も満足している。帰りに熊野古道入り口だけチラッと見る。旅人のために杖が数本置かれている。

下校時間らしく、中学生たちが楽しそうに通り過ぎてゆく。こういう場所での中学生生活はどうなのだろう。僕とはどこが違うのだろう。

駅に着く手前、さてと切符を探したが、無い。失くさないよう、入れるポケットは決めているのだが、無い。おかしいなとあちこち探りつつ、だんだん血の気が引いてくる。そういえば駅でパンフレットを見たからそこかもと足を向けたところで駅員から声がかかった。あの若い駅員さんだ。駅員さんも慌てており、言葉はごちゃごちゃだが、パンフレットのあたりに落ちているのを届けられたとのこと。僕がこの切符を出したのを覚えていてくれて声をかけてくれたのだ。渡すには規定手続きがあるようで、書類を書いているともう発車時間間際になったので、駅員さんが気づいて声をかけてくれなかったら間に合わないところだった。また、予定通り次の駅まで歩いてたらそれも無理だった。ありがたい。本当にありがたい。いつも助けられてばかりだ。駅員さんに何度も礼を言った。

新宮に着いたのはもう夜。晩ご飯前にまず宿に荷物を置こうと、駅から少し離れたビジネスホテル紀州に行ってみたところ、今日は満室とのこと。問い合わせが多かったから、どこも満室ではないかと不吉なことを言う。なにかの工事人足が集まっているのか。松阪歓楽街が思い出される。気の毒そうにしてくれるが、それがまた不吉だ。

駅に戻るように次の旅館を訪ねたがここも満室。駅前旅館も満室。だんだん冷や汗が出てくる。高いホテルしか空いてなければどうするのか。暖かい日だが野宿想定外だ。久しぶりすぎる。よその街に行くか。どこなら空いてるんだ。

電話をかけるが2軒とも満室。絶望的な気分になる。3軒目でようやく「うちは満室だが系列旅館は空いてる」と言われた。天の助けか。喜んで道順を聞き行ってみる。

たどり着いた長谷旅館は古い宿で、おばさんもしきりに申し訳なさそうにする。こちらとすれば、九死に一生なので古いだのはどうでもいい。それにこの程度の古旅館には慣れっこだ。風呂トイレ付きとはいえ4860円という値段はさすがに見合ってないが、だからこそ空いてるんだろう。しょうがない。電話では朝ごはんはどうするなどと聞かれたが着いてみると朝ごはんのことはまるで聞かれず、まあその方が気楽か。旅館朝ごはんもたまには食べたかったが、明日の朝は早いから無理があるし。

部屋はまさに古い旅館で、タイル貼りの風呂トイレは懐かしさすらある。ベッドも古いし臭いもある。まあでも文句はない。宿が取れない寸前だったんだから。それに浴衣の用意があるのもありがたい。カミソリがないのは困ったが、まあ伸ばしておくしかない。

とりあえず夕食に出かけるが、旅館に着いたとき別の客に「おすすめの店が定休日」と言ってたので期待ができない。パンフレットだけ渡されたが、これじゃ良し悪しはわからない。当たり外れは覚悟しつつ、とりあえず街に出る。松阪尾鷲でももう少し賑わっているのではないかと思うような寂れかたで、人が全然いない。あの店もこの店も客がいない。スーパーもポツポツ客がいるだけで、いったいどうしたんだろ。新宮は僕の中ではわりと大きな街なんだが。駅前道路広場もやけに立派なんだが。

アーケード商店街は道幅の広い立派なものだが、遅い時間とはいえほとんど閉まっている。大きな時計屋と楽器屋に煌々と電気がついているが、客がいないのでなおさら寂しい。

純喫茶バンビという可愛らしい看板が見えたので食事そっちのけで入ってみたかったが営業はしていなかった。残念。

めはり寿司の店まで行ってみたが、中が見えないしどうも足が進まない。入りたくなる店がないというか、入れそうな気がしない。うろうろするのは僕の好むところだが、食事する気分は出てこない。

一周したあげく、やけくそ半分で旅館のおばさんが口にしたお好み焼き屋五味に入った。結局僕以外の客は来なかったし、お好み焼きもどうということはなかったが、まあこれも旅の一つだから。1850円払って、あとは少し歩いて、明日朝用のサンドイッチオークワで半額で買って、旅館に戻って風呂に入る。せっかくなので溜めてみたが温度調節がうまくいかない。昔の風呂はこんなもんだ。いろいろと懐かしく、これはこれで楽しい

相変わらず充電ケーブル調子が悪くイライラする。

就寝。

2018-12-19 紀伊半島の旅1日目

いつもより少し早めに起きて天王寺へ。こんなわがままな夫を許してくれる妻に感謝

天王寺駅みどりの窓口天王寺天王寺行の切符を買う。注文を聞く駅員さんが少し緊張したのが面白かった。こういう客、時々来るだろうが、たいていは面倒くさい奴と相場が決まってる。

うとうとしつつ乗り換えを重ね亀山へ。降りてみたが、かなり寂れた駅前で予想以上になんにもなさそうだ。

早速廃墟発見、もともと歯科医院兼マンションだったもの介護施設になり、それも廃業マンションの住人もついに最近いなくなったという気配だ。ざっくり見たが荒らされてはいないよう。僕はあまり侵入だなんだとするつもりはないので、蔦に侵され自然に還りつつあるコンクリートを愛でるにとどめた。

そろそろお昼なので、名物とかいうみそ焼きうどんを食べにうえだ食堂という店へ。開店して間もないので先客はおばあさん1人。豪華にホルモンみそ焼きうどん定食を注文。予想どおり、僕には濃厚すぎる味で、こういう機会でもなければ別のにした方がいいくらいだが。腹一杯になり、店を出た。出るころには満席で、サラリーマン肉体労働者に重宝されているようだ。

丘を登り、街の中心部に向かう。駅前ではなくこの丘の上が中心部になっているのは、そこに城址があり市役所があるからで、もちろん商店街もある。とはいえ、この時代から商店街シャッター街。かなり由緒のありそうな店も最近の店も閉まっている。開いていても繁盛はしていないだろう。いろいろ暗澹たる気持ちにはなるが、道路が立派なのが拍車をかけている。

田中病院という大きくて古い病院があり、横のおそらく院長宅から婦人が古い外車ハンドルを握ってお出かけのようだ。

病院が静まり返っているので、もしかしたら閉院しているのかとも思ったが、そうではなく少し事情のある病院なのだろう。あの立地であの静けさは異様であった。

坂道を降りて駅前へ。違う角度で廃墟を見たりして、さて電車まではだいぶ時間がある。駅前の古ビルの2階に尚という喫茶店看板があったので行ってみたところ、辛うじて営業中のようで灯りはついているが、中からオヤジの大きな話し声が聞こえる。落ち着けそうにないので断念し、ひたすら辺りを歩いた。

津でまた下車するつもりだったのだが、目指す津新町駅はどうやら近鉄の駅らしく、降りそびれてしまった。津で降りてもつまらなそうだったし、といって近鉄に乗り換えるのも業腹だ。次の機会にと考えて、とりあえず松阪へ向かうが、ただ松阪というのも芸がないのでその手前の六軒で降りる。変哲もない無人駅で、箱のような待合室が駅舎である松阪はそこそこの街だし、津ももちろん大きな街だが、点と点の間はこれだ。電車には大勢高校生が乗っていたが、この街で一生を終えたくないと考えても不思議はない。だが、ここに誰もいなくなってしまうわけにはいかないのも確かなことだろう。

駅を出て歩き始めると、道路スケボー練習をしている少年たちがいる。「こんにちは」と声をかけられ、慌てて「こんにちは」と返す。

お昼に少し補充したiPhoneバッテリーは残りわずかになり、携帯バッテリーから充電しようとするが、断線しているのかうまくいかない。増えては減りの繰り返し。イライラするし心配になる。

やがて浪漫遊という店が見えてきた。中古CDゲームその他を売ってるチェーン店で、以前仕事でこちらに来たときに立ち寄ったことがある。この店ではないと思うが、中の仕様はほとんど変わらない。CDのコーナーが小さくなっているくらいだ。前回は細野晴臣トリビュートを買ったが、今回はシャークニャークス「知ること知らないこと」を400円で見つけた。ディスクユニオンでも見ないものがここに、というのは変な話だが、記念の意味も込めて購入。消費税が足されるのは考えてなかったけど。

その近くのイオンで、伊勢古書堂という古本屋に。イオンに大型古本屋というのが妙だが、見るとかなり寂れていてテナント撤退が続いていてこうなったんだろう。いいんだか悪いんだか。本はかなり多いししっかりしたものもある。北九州でいうと珍竹林に近い。レコードも大量だが、全部見てまわる時間はない。古書店巡りをしに来たわけじゃないのだ。

夜のバイパスを歩いて松阪の駅裏までたどり着いた。このバイパス歩き、ほかに歩く人がいないこともあって、旅感・孤独感が積み上がる。

松阪駅前は、見覚えのあるようなないような。来たことはあるはずだが、15年くらい前のことだし、仕事からしげしげと見たわけでもない。記憶がなくても不思議はないのだが。

駅前をうろうろと歩く。和田金は店だけ見て別の店でなにか肉を食べたはずだが、どの店だったか。断片的な記憶はあるが、思い出せない。

松阪駅前は、やはり寂れている。もちろんそれなりの賑わいもあるが、車社会から賑わいというものの本当の姿が僕には見えない。歓楽街は大声で話すおじさん兄ちゃんの姿、店に連れていくホステスの姿、どこかのんびりしている。

その外れにポルノ映画看板が掲げられており、まさかと思ったが今も営業中ポルノ映画館があるようだ。朝から夕方までという上映時間で客が来るのかとも思うが、でも感じ入ってしまった。

歩き疲れて脇田屋という店でホルモン焼肉を食べる。一人で七輪、申し訳ないが空いているからあいいだろう。赤味噌べったりの焼肉ビールを飲んだ。お疲れ。2750円。

もう少し歩いて、限界になってきたので街はずれにある亜熱帯というネットカフェへ。途中、安価ホテルを見かけたので気持ちが揺れたけど、ネットカフェがあるところでは節約しておかないと。あと2泊あるんだし、少なくとも1泊は旅館になるだろうから

亜熱帯豊田市で泊まったのと同じチェーンだ。様子はだいたい同じ。問題なし。

雑誌などをいろいろ見て、早めに就寝。

2018-12-18

休みに向けて仕事。柄にもなく少し残業もする。3日もまとめて休むからだ。自分が悪い。

夜は旅支度。

といっても、大してすることはない。全ては出たとこ勝負。わくわくする。