003道中

 メッセンジャーで打ち合わせをしたときに、私がいい加減にしか認識していなかった呑み歩きの開始時間を、彼はとっくに知っている様子だった。その上で、日程を今日に設定し、時間も設定したのだけれど、既に1時間押しではある。このくらいの遅れなら、あまり問題はない。今から峠を越え、目的地である私の実家まで、車で二〜三十分程だ。呑み歩き開始時間より、少し遅れるくらいで、呑み歩きの会場に行かれるだろう。

 ただ、問題は一つあった。別ルートから合流する人たちのことだ。今日は、彼の他にあと三人合流する。二人は、私が日頃生活している地域から来る女の子の飲み友達で、あと一人はこのゲームの住人の一人だ。女の子二人は、県内の人間なのであまり問題ないが、関東からやって来る少年Kだ。K君には、私の実家の最寄りのバス停を指定してあった。そして、私が拾う予定だったが、既に到着時間は過ぎている。高速バスのバス停で待ちくたびれていることだろう。スキー旅行で殆ど空になった車に、給油しつつ、急いで連絡をとる。

「ごめん、ごめん。悪いけれど、電車の駅まで移動してもらえる?」

 両者が分かりそうな位置まで、移動してもらい、彼女らにK君を拾ってもらうことにした。ところが、私の友人たちが右往左往し、結局私がK君を拾うことになった。K君とは、半年前に出会ってから、何度か会う機会があったので、今回は初対面ではない。彼もまた、ルーズな人に慣れている様子だった。合流後も、いつもの朗らかな雰囲気で、再会を喜んでくれた。

 その間中、黒川さんは何か楽しそうだった。人が慌てる姿とか、私のおかしな言動が、何か面白いらしい。


 どうにか全員かき集め、私は実家でスキーの荷物をほどく。この呑み歩きが終わったあと、K君とともに上京する予定があったからだ。

 そして、関西へ帰るH君を高速バスのバス停に送っていかなくてはいけないので、時間を見つつ行動する。

「Hさんも帰るのを諦めて、呑み歩きに参加されたらどうですか?」

「明日、教習所へ行かないといけないので、すみません。」

 ネットでもリアルでも初対面のH君を黒川さんは普通に勧誘していた。見た目は、スレンダーな社会人なのに、どこかひょうきんな人だ。

 送っていく時間になったので、H君に声を掛けると、なぜか黒川さんもついてきた。お財布が手元にないらしく、車の助手席にあるか見たいと言う。

 二人でH君を見送ったけれど、お財布は出てこなかった。

 私は、実家で引き続き荷物をほどき、洗濯をする。洗濯が終わったころに、お財布の行方が明らかになった。

 黒川さんと合流した駅前の交番―――黒川さんがコートを脱いだ場所だ。


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 反省点:オフレポから脱せず、小説っぽくない。