マレーシアのインド系住民によるデモ

個人的にはマレーシアが東南アジアで最も安定した他民族国家だと思っていたので、今回のインド系住民のデモ*1は意外…というか驚きだった。どうやらマレー人優遇策がインド系住民の怒りを買ったらしい。だが「なぜ今更?」という印象も受ける。

確かにマレーシアでは原住民であるマレー人が優遇されている。実は、この制度の評判についてマレーシアの友人(中華系住民)に聞いてみたことがある。彼が主張するところによると、「マレー人優遇策(ブミプトラ)の国内におけるの評判は悪いが、マレー系は一部の富裕層を除いて大多数が貧困層である一方、中華系とインド系は殆どが中産階級であるため、それほど問題にならない」らしい。とはいえ、彼は中華系が優勢であるクーチン市に住む中華系住民だ。インド系の現状にはあまり詳しくなかったのかもしれない。

何にしろ日本に届くマレーシアの情報が少な過ぎるせいで、何がインド系住民の怒りに具体的に火をつけたのかが良く分からない。そこでロイター英語版を覗いてみると、「インド系の不満は仕事と教育機会がない」ことらしい。人口の僅か7パーセントに過ぎないインド系住民の声は、インド系政党を含む連立政権には依然として届いていないようだ。

ま、しばらくマレーシア情勢はナリチューということで。

*1:去年11月にもデモがあったのは気付かなかった。

中道政治と現実主義

政治において何らかの理想を求めるからこそ、種々雑多なイデオロギーが存在する。それ故、政治における現実主義は、しばしば特定のイデオロギーに依拠しない中道派*1と同義となる。

しかし、中道派は右から見れば左寄りに、左から見ると右寄りに見える。つまり左右両派に疎まれる厄介な立場なのだ。

例えば「中国との戦争を避けるため日中友好を図るべし」という現実主義的な題目に対し、左右両派はどのように対応するだろうか。恐らく右派は「日中友好などとんでもない」と批判し、現実主義者にサヨクとレッテルを貼るだろう。一方で左派は「中国は日本と戦争する気など最初からない」と批判し、現実主義者にウヨクとレッテルを貼るだろう。

現実主義の目指すものは、国民の安全と利益を現実的に取り得る手段で可能な限り長く維持することだけだ。何らかの最終目標があるわけでもない。そこにあるのは終わりのない損得計算だけだ。だから現実主義はつまらない。一方で何かのイデオロギーに依拠すれば、個人は達成すべき大いなる目標を与えられる。日々を飽きずに過ごせるだろう。

だがイデオロギーに依拠した人々が理想を語るためには、彼らの権利と安全が保障されていなけれならない。皮肉にも、それこそ現実主義者たちが目指すものなのだ。

*1:現実主義とは、「現実主義」という一種のイデオロギーなのだと批判する論者もいる。