迷信(5)赤ん坊の命を救った上杉鷹山



こんにちは、木村耕一です。


迷信は、時として、人の命をも奪います。
双子の赤ちゃんの命を救った、上杉鷹山(うえすぎようざん)のエピソードを紹介しましょう。

ある村に、双子の女の子が生まれた。
昔から、同性の双子が育つと両親へたたりをもたらすと信じられており、どちらか1人を殺すという恐ろしい風習があった。


両親は、この言い伝えに従おうとしたが、赤ん坊の笑顔を見ると、かわいそうで、なかなか実行できずにいた。
そのうち、どうしたことか、このことが鷹山の耳に入ったのである。
迷信で人の命を奪うとは、もってのほかである。
たとえ農民であろうと、命の重さに変わりはない。救わねばならない。
鷹山は、すかさず、
「双子が生まれたか。それはめでたい。祝儀を取らせよう」
と言って、酒と肴を贈ったのであった。


驚いたのは双子の両親である。殿様から祝いが届くとは、前代未聞の出来事だった。
「殿様が、こんなに喜んでくださるのだ。気にせずに、大事に育てよう」
元気を取り戻した両親は、親戚や近所の人々を招き、拝領の酒で、盛大に誕生祝いを行ったのであった。


双子の赤ちゃんは、無事に成長して、孝行な姉妹となった。
出生時に、鷹山に命を救われたことを知った2人は、何か、恩返しをしたいと思うようになった。
そこで、自分たちの手で綿と紅花を栽培し、真心込めて、紅染めの木綿布団をこしらえて、城へ届けたのであった。
鷹山は、その志を大変喜び、姉妹から贈られた布団を、終生、大切に用いたという。
(『まっすぐな生き方』より)




迷信に命を奪われた人が、歴史上、どれだけあったか知れません。
恐ろしいですね。
悲しい事件が起きるのは、正しい知恵がないからです。
迷信か否か、ハッキリ区別する知恵を身につけて、まっすぐに生きていきましょう。



まっすぐな生き方
木村耕一著
定価 1,575円(税込)
(本体1,500円)
四六判上製 296ページ
ISBN978-4-925253-41-3
1万年堂出版発行
http://www.10000nen.com/?p=574