ポピュリズムに蝕まれる&暴民支配の狂乱

ポピュリズムに蝕まれるフランス

ポピュリズムに蝕まれるフランス

ルペンの手法

パリ第十大学のトマ・クレルク助教授はルモンド紙で、ルペン氏の話法に仕組まれている罠を指摘した。「彼は言葉を恐れない。言いたいことを何だって言う。たとえば『フランスの資産はとっくに国外に持ち出されている』と断言する。みんなびっくりする。しかし、それはでたらめなのだ。なのに『私は本音でしゃべっているぞ』とみせかけるポーズが彼の言葉の信用性を高めている。それは、正統的な政治家の信用性を逆に失わせることにもつながっている」

ルペンに投票した「民主主義なき民衆」

エリート側が何の対策もとっていないわけではない。さまざまな社会福祉政策を実施し、貧困対策に取り組んでいる。それなのに支持を得られないのは「双方を行き来する道が閉ざされているから」とジャック・ジュリアール氏はみる。エリートはいつまでたってもエリートのまま政治を担い続け、民衆はいつまでたっても民衆のままだ。
民衆の側が問題にしているのは「自分たちの側への恩恵か来るか、来ないか」ではない。自分たちが政治に参加できないことなのだ。なのにエリートの側は「政治は私たち専門家にお任せください」と言わんばかりに左右一緒になって、政治を担う特権を守ろうとしていると、人々の目には映っている。その結果、民衆の側に「代表を選んでいる」との充実感が失われてしまった。(略)
ルペン氏に投票した「民主主義なき民衆」は、民主主義を逆手にとって「民衆なき民主主義」に復讐しているのかもしれない。(略)
「民衆なき民主主義」のなかで温々と過ごしてきたエリートたちの化けの皮がはがれたとき、「民主主義なき民衆」がよりどころとするのはポピュリストだ。

シラクのメディア戦略の黒幕はFOX社長

アイレス社長は筋金入りの保守派で、共和党ニクソンレーガン、ブッシュ(父)の各大統領の選挙参謀を務めた人物だ。88年民主党から米大統領選に立候補したマサチューセッツ州知事デュカキス氏を攻撃するネガティブ・キャンペーンを指揮していたのも彼だといわれている。(略)
ルポワン誌によると、88年の大統領選でミッテラン氏に敗れたシラク氏は、ひそかに渡米し、アイレス社長らの指導を受け始めた。
アイレス社長がクラウシャー氏とともに著した『あなたはメッセージだ』を読むと、シラク氏がどのようなアドバイスを受けていたかが想像できる。
「話をするときはその目的を常に念頭に置き、言葉に全神経を集中させなさい。できる限り観客をみつめなさい。言葉は短く、文末で目を上げて聴衆を眺めることができる程度の速さで読みなさい。決してあわてないように」
「演説で聴衆が受けとるメッセージの55%は、話し手の表情や身ぶり手ぶりなど言葉以外のもの、38%が話し手の声の高さや速さなどだ。演説内容は7%にすぎない」
「言葉以外のコミュニケーションを学ぶには、音を消したままテレビを観ながら訓練するとよい」