堤清二インタビュー

連名になってますが、実態は堤清二インタビュー本なので、チーズ嫌いの人でも大丈夫(それにしても60過ぎて不良だっただの、BMWに乗ってるくせにヴィトンを一点も持ってないのが誇りとかぬかしてるバカ東大教授は(略))。

ポスト消費社会のゆくえ (文春新書)

ポスト消費社会のゆくえ (文春新書)

父の政治秘書をやったのは

秘書をしたのは、かなり邪な意図があって、私のようなものが秘書をやれば、いくらか反動性を薄めることができるんじゃないかと思ったからです。(略)
私は反米一辺倒でしたから、親米政策によって保守合同の永久政権ができれば、必ず政治は腐敗する、それには絶対反対だと主張していました。父親にそう言ったら、「おまえ、まだアカが抜けてないのか」って言われました

組合結成。
オーナーの息子が後継者としてやってくると思っている会社員達、だが当の息子は「おっしゃー、親父に反逆、前近代的親父の会社に風穴あけちゃるでー、組合つくっちゃうぞー」という調子。幹部は組合結成に反対、社員の方も反社会分子あぶり出しじゃないかと疑心暗鬼

[幹部説得には51年の三越ストライキをネタに]
「ちゃんとした組合があれば、あんなストライキは起こりませんよ。つまりガス抜き装置っていうことですよ」と、三越をダシにつかって説得したんです。(略)
[男性だけの組合にしろと幹部]
「とにかく、女性差別はダメですよ」と主張すると、今度は「じゃ、運転手と電話交換手と秘書は組合からはずせ」と言い出す。私は「それもダメです。なぜなら、敵対する労使関係という前提で組合をつくろうとしているのではありませんから」と説得を重ねましたね。私の基木的な考えは労使協調路線なので、当然の言い分でした。ただ自分も労働組合の幹部になれると思っていたところが、まあ、おめでたいと言えばおめでたいところですね

70年から大卒女子定期採用

「よくできるな」と思う人と、「ありゃ、ダメだなあ」と思う人と両方でした。(略)
[ダメな人は]「こういう場合に、いまのやり方ではちょっと無理なんじゃないの?」と言っても、なかなか人の意見を受け入れようとしないで、反対される理由を全部ジェンダーにすり替えようとする。
 「それは困るなあ、こっちはそういう意識はない。あなたが女性だからダメだと言っているのではないんだ」と議論したことも二、三回ありましたね。

「無印」は「反体制商品」

ブランドのラベルを貼ったら、それで二割高くなるというのはおかしいじゃないか、同じものをブランド名をはずして安く売ろうじゃないか、というので「無印」をつくった。私はこれを称して「反体制商品だ」と言ったんですね。ところが、「反体制商品」という言葉を親愛なる仲間は一人も理解してくれない。まあ、その前にさんざん海外ブランドを紹介したんだから、発言権が弱い。「おまえ、何言っているんだ? 自分自身でやったことを自分自身で否定して、いい気なもんだよ」と言われる。いい気なもんなんですが……。

バブル崩壊が十年遅ければ

傷がもっと大きくなっていたでしょう。バブルが早く崩壊してくれたので、まだあの負債額で収まってダメージを免れたと思う。私の不動産ビジネスは、あれだけ反発していた父親の強引なやり方を、いつの間にか真似していたんだろうなあ、とつくづく悔恨の情に駆られています。

自分の責任として、とにかく西洋環境開発と東京シティファイナンスの整理はしなくてはならないと思いました。(略)
[自分が辞めて、個人で100億かぶるから]
西友ファミリーマート、パルコ、西武百貨店などの残すべき企業は、残してもらいたいと条件を出した。ところが、そこでも私は誤りを犯してるんですね。(略)私と約束した頭取さんはそれから一年ぐらいで辞めてしまった(笑)。(略)次の頭取に代わると、「前任者はそんなこと言ってましたか。しかし、いまはもう状況が変わりましたからね」なんて言い出す始末です。

ファミリーマートを売却したとき、

私はもうすでに現場を去っています。責任者の和田君から「ファミリーマートを売ることにしました」という報告を聞いて、「ああ、そうか。僕ならば、西武百貨店を売ってもコンビニは残すんだが……」という私の感想を述べましたけれど。

父の存命中は父への反逆、父の死後は前近代的な人格支配に対する反逆だった

オーナー経営者という意識がないんだなあ。(略)本当のオーナーである父親に反旗を翻して、ここへ来ているという意識しかないから、自己認識とのギャップが当然あった。(略)「私は自分をオーナーと思ってない」と言うと、やはり人は「えっ?」と思うらしいんですよ。「お前、嘘のつき方も堂に入ってるよ。自分自身を誤魔化しちゃったら、それはね、嘘じゃなくなっちゃうからなあ」と言われると、「すいませんでした」と謝るしか仕方ないんだけれど。(略)
権力者になりたくなくて反旗を翻したのに、権力者になってしまったということは、ちょっと自己矛盾だよな、と。

百貨店

私が行く前の百貨店は、あまりに前近代的な組織でしたから、そこから受ける圧力がものすごく大きかった。百貨店は末端の小売業者であって、生産業者があって、日本の場合は何万社という問屋がいなければ成立しない業態です。(略)この問屋システムでは民主主義というものがまったく機能していません。つまり権力のある百貨店に対してしか、経営合理主義を適応しないという古い体質をもっています。(略)
[問屋に疑義を呈しても]
「あなたね、生産者と交渉したことなんかないんだから、われわれの言うとおりにしてればいいんですよ、われわれはリスクを負ってきてるんだから」とことごとく反発をくらった。百貨店が直接、生産者と取引する権限はなく、問屋の言うことを聞くしか仕方ない時代が続きました。(略)
[取引先にない一流どころへ行っても体よく断られ]
市田とかレナウンに行っても、なかなか責任者に会えないで、小部屋に押し込められてじっと待っていると、「あ、高島屋様お通りー」と社員の声がして、私の前をその高島屋ご一行様がズラズラズラーと通っていくんですよ

百貨店空洞化

そうすると百貨店は場所貸し業になるわけです。便利なところに大きな店舗スペースを持って、消費者から見れば、ワンストップ・ショッピングが可能で、便利であるということが求められてきます。(略)
パルコが持っているようなプロデュース能力は、どの百貨店にもありません。プロデュース能力を持たない専門大店化は可能かというと、それはすぐ限界が来ます。そうすると、パルコほど効率は上がらないけれども、場所貸し業になる。いまも事実上、百貨店は場所貸し業に近いんです。

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