Hatena::ブログ(Diary)

Fool in Trance

2018-02-17

『バニー・レークは行方不明』(オットー・プレミンジャー)


 オットー・プレミンジャー監督作品をもう1本。町山智浩氏の名著『トラウマ映画館』でも紹介されていた『バニー・レークは行方不明』(1965年)。


 画面がビリビリと切り裂かれるようなタイトル(デザインは巨匠ソウル・バス)から、全編に不穏な雰囲気が充満したサスペンス映画の逸品だ。幼稚園に預けた娘が失踪するが、誰も娘を知らないという。果たして娘はどこに消えたのか・・・。そもそも本当に娘はいたのか?というポイントからヒロイン(キャロル・リンレー)が周囲に追い詰められていくお話だが、ヒロインが狂気の淵を彷徨うような(ロマン・ポランスキー的な)異常神経ぶりはあんまり感じられず、とにかく全編ハイテンションなのがプレミンジャー調か。オチ(犯人)がわかっても一向に画面のテンションが落ちないのが凄いなあと思う。主人公が警部と話すパブのTVではザ・ゾンビーズが演奏している。TSUTAYAの発掘良品コーナーの棚に並んでいるので、未見の方は要チェックだ。


(『バニー・レークは行方不明』 Bunny Lake Is Missing 監督/オットー・プレミンジャー 脚本/ジョン・モーティマー、ペネロープ・モーティマー 原作/イヴリン・パイパー 撮影/デニス・クープ 音楽/ポール・グラス タイトルデザイン/ソウル・バス 出演/キャロル・リンレー、キア・デュリアローレンス・オリヴィエ、アンナ・マッシー、ノエル・カワード、マーティタ・ハント、ザ・ゾンビーズ 1965年 107分 イギリス


『或る殺人』(オットー・プレミンジャー)


 昨日『スキドゥ』について書いたので、オットー・プレミンジャー監督作品をもう1本。川本三郎氏の名著『サスペンス映画ここにあり』でも紹介されていた『或る殺人』(1959年)について。


 ジェームズ・スチュアート主演の法廷ドラマということで『スミス都へ行く』など思い出して、シリアスな社会派ドラマなのかなと想像していたら、全く違っていた。スチュアート演じる主人公の弁護士は、仕事にあぶれて秘書に給料も払えない状態なのに、趣味の釣りに精を出しているというのん気なキャラクターなのだ。妻(リー・レミック)をレイプした男を射殺した夫(ベン・ギャザラ)の弁護を引き受けるのだが・・・というお話で、個人的に法廷ものは映画的と思えずあまり好きではないのだが、本作はとても面白かった。主人公を始め、友人のアル中弁護士(アーサー・オコンネル)、主人公と対立する検事(ジョージ・C・スコット)、胡散臭い容疑者夫婦(リー・レミック、ベン・ギャザラ)といった登場人物たちが非常に人間臭く描かれているのが魅力的。ドラマは結構苦々しい幕切れを迎えるが、主人公たちの大人っぽいキャラクターでユーモラスに締めくくられているので救いがある。


 音楽は何とデューク・エリントン。パーティーの場面には本人出演のオマケつきなんで、JAZZファンも楽しめるに違いない。タイトル・デザインはソウル・バス


 主人公と丁々発止のやり取りを繰り広げる検事を演じるのは名優ジョージ・C・スコット。本作は映画デビューの頃らしいが、とてもそうは思えぬアクの強さだった。1927年生まれというから、当時32歳?信じられん貫禄だ。


(『或る殺人』 ANATOMY OF A MURDER 監督/オットー・プレミンジャー 脚本/ウェンデル・メイズ 原作/ロバート・トレイヴァー 撮影/サム・リーヴィット 音楽/デューク・エリントン 出演/ジェームズ・スチュワートリー・レミック、ベン・ギャザラ、ジョージ・C・スコット、アーサー・オコンネル、キャスリン・グラント 1959年 160分 アメリカ


サスペンス映画 ここにあり

サスペンス映画 ここにあり

2018-02-16

『スキドゥ』(オットー・プレミンジャー)

スキドゥ(紙ジャケット仕様)

スキドゥ(紙ジャケット仕様)


 日本未公開のコメディ映画『スキドゥ』SKIDOO(1968年)鑑賞。監督は『ローラ殺人事件』(1944年)、『黄金の腕』(1955年)などで知られるオットー・プレミンジャーサントラ盤を聴いて以来ずっと見たいと思っていた作品で、これが何とyou-tubeにフルで上がっているのであった。


 足を洗って堅気になった元殺し屋(ジャッキー・グリースン)が、組織のボスの命により、密告者(ミッキー・ルーニー)を消す為にアルカトラズ刑務所に送り込まれるが、かつての友人を殺すのを拒否して脱獄を企てる・・・というお話。粗筋だけ聞いてアクション・コメディかなと思いきや、冒頭から主人公夫婦が延々とTVのチャンネル争いを繰り広げたり、(60年代末のサンフランシスコが舞台なだけに)奥さんと娘がヒッピー集団に加わったり、ドラッグでトリップする映像が何度もしつこく描写されたり、刑務所の脱獄に至っては一切のサスペンスを欠いた間抜けぶりで、組織のボス役でグルーチョ・マルクスが胡散臭い口ひげ、葉巻、前屈みの歩き方、とマルクス兄弟時代そのまんまの役作りで登場してナンセンスにさらに拍車をかける。原語版、字幕なしの鑑賞なので細かいニュアンスは分からないとはいえ、何ともとりとめのない印象の映画であった。サントラ盤の解説によると、公開時は興行的に大失敗したとのことで、それも何となく分かる気がするなあ。


 主演は大人気のコメディアン・ミュージシャンだったというジャッキー・グリースン。今で言うならジョン・グッドマンのようなファット系で、映画ファンには『ハスラー』のミネソタ・ファッツ役といえばピンとくるだろうか。脇役の顔ぶれが面白くて、ミッキー・ルーニー、ジョン・フィリップ・ロー、ジョージ・ラフト、バージェス・メレディス、スリム・ピケンズ、囚人の一人で『007』のジョーズことリチャード・キールも出ていた。グルーチョ・マルクスはゲスト・スター扱いで、本作が最後の出演作であるという。


 映画の終盤には、ドラッグのトリップで繰り広げられるダンス場面に「ガーヴィッジ・キャン・バレー」、ヒッピー集団を率いた奥さんが歌うミュージカル調のテーマ曲、そしてEDではキャストとスタッフの名前を軽快に歌い上げる「キャスト・アンド・クルー」、とニルソンのヴォーカル曲が上手に使用されている。何とも愉快な雰囲気で、大好きなニルソンの音楽ゆえに映画の後味はとても良かった。


(『スキドゥ』 SKIDOO 監督/オットー・プレミンジャー 音楽/ハリー・ニルソン 出演/ジャッキー・グリースン、ミッキー・ルーニー、ジョン・フィリップ・ロー、ジョージ・ラフトグルーチョ・マルクス 1968年 アメリカ

2018-02-15

『HEISTERS』(トビー・フーパー)


 映画評論家遠山純生氏のTwitterから情報を得て、トビー・フーパーの初期短編『HEISTERS』(1964年)をyou-tubeで鑑賞。トビー・フーパーといえば『悪魔のいけにえ』(1974年)でホラー映画史上に燦然と輝く足跡を残す偉人。昨年(2017年)、惜しくも亡くなった。フーパーは1943年生まれだから、本作は若干21歳の時の作品だ。サイレント仕立てなので原語版でも鑑賞には全く問題なかった。


 お尋ね者の3人組が追っ手を逃れて古城に逃げ込む。そこで仲間割れの挙句、爆死するまでを描く。古城の地下室や奇怪な装置(コーマンの『恐怖の振り子』に出てきたギロチンのミニ版も登場)など怪奇映画趣味と、スラップスティックな趣向がミックスされていて、『悪魔のいけにえ2』からさほど遠くない映画だなあと思った。HEISTERSとは「酔っ払い」とか「飲んだくれ」といった意味。遠山氏は『泥棒たち』の邦題で紹介していた。


 フーパーといえば『悪魔のいけにえ』はもちろん、個人的にはリアルタイムで接することが出来た2作『ポルターガイスト』『スペース・バンパイア』の印象が強い。フィルモグラフィーを見ると「この道(ホラー)一筋」という感じだが、果たして本人の意に沿ったものなのかは分からない。本作など見ると、明確な喜劇志向が感じられ、実はコメディタッチの活劇なんてのもやりたかったんじゃないかなと想像する。フーパー好きの黒沢清がVシネ『勝手にしやがれ!』シリーズ(特に『成金計画』あたり)で展開したような路線を。

2018-02-14

『鬱な映画』(洋泉社MOOK)


 思うところあって、昨年出た洋泉社MOOK『鬱な映画』を再読。そもそもの「鬱病」と「鬱(傾向の)映画」、そして「単に観客を嫌な気持ちにさせようという映画」をきちんと分けて語っているところに作り手の意思を感じるMOOKだった。本当に鬱を反映した映画と、単なる嫌がらせは違うよ、と。槍玉に上がっているのはトリアーで、この辺はとても納得できるところ。


 巻頭に「専門家の視点から」と精神科医春日武彦氏のインタビューが掲載されていて、これが実に面白くてためになる。相当映画見ているなあと、春日先生のそっち方面の知識にも感心した。春日先生が鬱傾向の映画としてチャーリー・カウフマンの『脳内ニューヨーク』を挙げていたのには膝を打った。ああ、あの感じが鬱なのかと深く納得してしまった。


 本書で紹介されている作品で、気になった未見のものは、何と言ってもやはりロベール・ロッセンの『リリス』と、トッド・ヘインズの『SAFE』だった。『SAFE』なんて、『ケミカル・シンドローム』という副題が付けられた廉価版のヴィデオを中古屋でよく見かけたものだった。あの頃買って見ておくんだったなあと後悔。それにしても、表紙/裏表紙のスチールはクローネンバーグの『ザ・ブルード/怒りのメタファー』だが、そんな本はどこを探しても他にないだろう。裏表紙のスチールなんて本当に恐ろしい。


2018-02-12

MGG Jazz Buddy 18th LIVE -MGG COMPLETE SERIES vol.3-

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 昨日(11日)、学生時代の友人Mさんが参加しているJAZZバンド、「MGG Jazz Buddy」のLIVEに行ってきました。MGG Jazz Buddy 18th LIVE -MGG COMPLETE SERIES vol.3-(千葉県教育会館大ホール)。MGG Jazz Buddyは総勢17名のビッグバンド。会場はJAZZファンらしき(比較的年齢層の高い)お客さんでいっぱい。


 今回のLIVEはカウント・ベイシーのアルバム収録曲を丸ごと演奏するMGG COMPLETE SERIESの第3弾、とのことで『THIS TIME BY BASIE - HITS OF THE 50S & 60S 』(1963年)を全曲演奏するという企画だった。『THIS TIME BY BASIE - HITS OF THE 50S & 60S』は当時のポピュラーソングのヒットナンバーをビッグ・バンド・アレンジで演奏したアルバム。アレンジャーは、『夜の大捜査線』『ゲッタウェイ』等々のサントラ仕事やヒット曲「ソウルボサノヴァ」で映画ファンにも馴染み深いクインシー・ジョーンズ



 LIVEは2部構成。第1部は『THIS TIME BY BASIE - HITS OF THE 50S & 60S 』の企画を引き継いで、70年代以降のヒットナンバーをビッグ・バンド・アレンジでカヴァー。『アナ雪』の「LET IT GO」、『魔女の宅急便』で使用されたユーミンのメドレー「ルージュの伝言/やさしさに包まれたなら」、ゴダイゴの『銀河鉄道999』、NHK朝ドラの主題歌(宇多田ヒカルの「花束を君に」)等。プラス、オリジナル曲『THIS TIME BY MGG』の全7曲。今回はJAZZバンドのLIVEなど初めての娘(5歳)を伴って行ったので、この選曲(ある意味とても敷居の低い)はありがたかった。飽きずに楽しく聴いてました。かつ、隣に座っていたおじさんがユーミンのメドレーに激しく反応していたのが印象的だった。思い出の曲、なのかもね。


 休憩を挟んでの第2部は、いよいよ『THIS TIME BY BASIE - HITS OF THE 50S & 60S 』。これぞビッグ・バンドの醍醐味!と言いたくなるような「THIS COULD BE THE START OF SOMETHING BIG」のゴージャスな演奏でスタート。 MCはアナログ盤のA面、B面の区切りの部分のみ。快調なテンポで次々と演奏を繰り出していく。「愛さずにはいられない」「ムーン・リヴァー」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」「ウォーク、ドント・ラン」等、「アパートの鍵貸します」 のテーマまで全11曲。アンコール2曲(うち1曲は星野源のあの曲だったんで、娘も「これ知ってる!」と大喜びであった)にてLIVEは終了。友人のMさんは担当のサックスに加えてフルートも!元気な姿が拝見出来て嬉しかった。


 MGG Jazz Buddyの演奏を聴いたのは2012年以来と勘違いしていたが、確かめてみたら2010年の9月以来であった。当時自分は仙台に住んでいて、地元の大型音楽イベント「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」に彼らが遠征してきた時だった。(当時の記事http://cul-de-sac.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-783d.html)それから何度もMさんに声を掛けていただいていたのに、なかなかタイミングが合わなくて、見に行けてなかったのでようやく再見できて嬉しかった。次もまた是非聴きに行きたいと思う。それにしても、あの大所帯でずっと活動を続けているのは凄いなあと思う。


 映画ヲタとしての追記。第2部ではステージ背後に演奏曲を解説した映像が流れた。3曲目「ONE MINT JULEP」では、「名画『キャロル』にも使用された」との解説が。『キャロル』といえば、トッド・へインズ監督、パトリシア・ハイスミス(元祖イヤミスの女王)原作の恋愛映画。これは見て確認せねば、と。


キャロル(字幕版)

キャロル(字幕版)