Hatena::ブログ(Diary)

Fool in Trance

2018-08-15

夏休み

 この夏季休暇は2泊3日のスケジュールで秋田の実家に帰省。といっても行き12時間、帰り10時間の長時間ドライブがあったので、ゆっくりできたのは実質1日半くらいか。今回のメインは親父の傘寿祝い。家族サービスがメインだったので、故郷の友人たちに会えなかったのは残念だった。ヲタ話は半年後のお楽しみということで。


 実家の裏手にある自然公園は、手入れする人がいなくなったのか、鬱蒼としたジャングル状態になっていて驚いた。道が見えなくなるほど緑が生い茂り、大きな蜘蛛の巣があちこちにあり、蜂や蚊やらバッタやら飛び交っていて。娘(6歳)と甥っ子(小4)を連れて散策に出掛けたが、ちょっとしたインディ・ジョーンズ気分であった。


f:id:kinski2011:20180812091439j:image:w360

2018-08-14

『J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド』 

J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド

J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド


 例のニューウェーヴ宣言が読みたくなって、『J・G・バラード千年王国ユーザーズガイド』A User's Guide to the Millennium(1996年)を久しぶりに再読。曰く、真のSF小説は外宇宙にあるのではなく、「記憶を失った男が浜辺に横たわり、錆びた自転車の車輪を見つめ、その車輪と自分との関係のなかにある絶対的本質をつかもうとする、そんな物語になるはずだ」。バラードの小説群は正にその宣言を具現化したものばかりと言っても差し支えなかろう。 


 本書はバラードの書評や映画評、エッセイなどをまとめた一冊で、テーマはSFに留まらず映画、アート、科学等々多岐に渡っている。本書に収録されている文章は60年代から90年代の長きに渡って書かれたものだが、少年時代の記憶、自動車、飛行機、シュールリアリズムへの興味(作家ではバロウズ、美術ではウォーホル、ダリ)、ハリウッド・ゴシップ、殺人や暴力、すなわちバラードの小説の世界観や興味の方向性とまるでぶれていないように思う。故にファンには興味の尽きない一冊である。「スペースコロニーで発狂した妻の日記」という一文などタイトルからして最高ではないか。


 本書には戦時中に上海で過ごした少年時代を描く『太陽の帝国』や作家として成功してから上海を再訪する『女たちのやさしさ』の素案のような「自伝」も収録されている。遺作となった自伝『人生の奇跡』(2008年)を読むと、多感な少年時代を過ごした上海での体験がその後のバラードの世界観(及び小説世界)を決定づけていることが良く理解出来た。本書に収録された文章にも(「自伝」と題された2つの章だけでなく)、そこかしこに少年時代の強烈な体験の残響が聞き取れる。


 映画についての文章は、割に素朴というかそんなにマニアックではない。面白かったのは『スターウォーズ』についての文章で、バラードは作品そのものではなく技術的な面を評価している。宇宙船ロボットの「汚し」をして「テクノロジーの衰退を表現できるようになった」と記しているのが面白い。

2018-08-10

『パターソン』(ジム・ジャームッシュ) 

パターソン [Blu-ray]

パターソン [Blu-ray]


 ジム・ジャームッシュ監督の近作『パターソン』(2016年)鑑賞。これは期待以上に良い映画だった。大げさなことを言うと、ここ数年間に見た中で一番感動した作品かもしれない。燃えた!とか泣けた!とかそういうのとは違って、心地良くじわりと胸に染込んでくるような。お話のスケール感、キャラクター描写、シーン構成、カット割り、台詞、音楽、そして滲み出るユーモア、その全てが、とてもしっくりと馴染む感じ。


 舞台はアメリカの小さな街パターソン。主人公は町と同じ名前を持つバス運転手パターソン(アダム・ドライヴァー)。パターソンは毎朝愛妻ローラの隣で目を覚まし、腕時計で時間を確認し、一人で朝食を済ませ、徒歩で仕事場まで向かい、バスを運転し、昼は手弁当を食べながら詩作に耽り、仕事を終えて帰宅し、傾いた郵便受けを直して、妻と夕食を取り、夜は愛犬の散歩がてらバーに立ち寄ってマスターや常連客と会話を交わし、帰宅して愛妻の隣で眠りにつく。映画はそんなパターソンの毎日を丹念にスケッチしてゆく。


 『パターソン』は「ジャームッシュがバス運転手の日常生活を淡々と描く」と聞いて想像する映画とは違っている。80年代の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』以降、淡々系の作風続けて30年、ならばもっと枯れた映画になってそうだが、まるで新人監督が撮ったかのように瑞々しい。あまり詳細を記述すると無粋な気がするので省略するけれど、主人公パターソンが趣味の詩作を通じて眺める世界が新鮮な発見をもたらす。日々のちょっとした差異が新鮮な驚きをもたらす。


 ジャームッシュの新作は何とゾンビ映画なのだという。ジャンル映画をジャームッシュ流に料理した一連の作品群(刑務所もの『ダウン・バイ・ロー』、西部劇『デッドマン』、殺し屋『ゴースト・ドッグ』、吸血鬼『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』等)に連なる企画と思われ、どんなアレンジが施されているか興味深い。うらぶれた通りをゾンビがのろのろと歩く姿を移動撮影で捉え、バックにはR&Bが流れたりするんだろうか。ゾンビは絶対にダッシュしたりしない、ロメロ系のゆっくりゾンビなはずだ。


(『パターソン』 PATERSON 監督・脚本/ジム・ジャームッシュ 撮影/フレデリック・エルムズ 音楽/スクワール 出演/アダム・ドライヴァー、ゴルシフテ・ファラハニ、バリー・シャバカ・ヘンリー、クリフ・スミス、チェイセン・ハーモン、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、永瀬正敏 2016年 118分 アメリカ

映画館でフリードキンを、犬は吠えるがキャラバンは進む、その他 

台風クラブ [DVD]

台風クラブ [DVD]


 酷暑、相次ぐ水害、とますますバラードの予見した世界に近づきつつある昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 恐らく20年ほど前、杉並区荻窪に一人暮らししていた頃の話。台風一過したその夜に、近くに住んでいた友人のきゃらはん師を誘って飲みに出かけた。街に人気は無く、自転車は皆横倒しになっていて、繁華街も風で飛ばされた看板やらゴミ箱などが散乱していた。開店している店を見つけて入ってみると、お客は我々だけ。その店はBGMもなし、店員のお喋りも聞こえなかった。静まり返った店内でヲタ話をしながら2時間ほど飲んだが、その間貸切状態であった。店を出て、もう一軒。ショットバーに入ったら、そこでは音楽が流れていて、何だかホッとしたことを覚えている。ここでもお客は我々だけだったけど。いや、それだけの話なんですが。昨夜、台風13号千葉直撃かとの情報に怯えながら眠ろうとしてふと思い出した話。話、というか20年ほど前の情景。


沈んだ世界 (創元SF文庫)

沈んだ世界 (創元SF文庫)



 話変わって。先月末、学生時代のクラス会がありました。友人たちとの宴席が何で楽しいかというと、「先輩」でも「課長」でも「上司」でも「父親」でも「夫」でもなく、ただの「F君」としてそこに居られるからなんだなと思った次第。これって本当にありがたい。皆様ありがとうございました。これからもよろしくです。


再会の時 [DVD]

再会の時 [DVD]



 話変わって。娘(6歳)が何か口ずさんでいて、聞き覚えのある曲だなと思ったらオザケンの「ローラースケート・パーク」だった。妻が車で聴いていて、気に入ったらしい。「誰かが髪を切って いつか別れを知って 太陽の光は降りそそぐ ありとあらゆる種類の言葉を知って 何も言えなくなるなんて そんなバカなあやまちはしないのさ!」って、娘の声で歌われるとね・・・。もちろん歌詞の意味なんてわからずに歌ってるんだろうけど。今年一番萌える出来事であったことよ。


犬は吠えるがキャラバンは進む

犬は吠えるがキャラバンは進む



 話変わって。ウィリアム・フリードキン監督『恐怖の報酬』(1977年)が 4Kデジタル・リマスター、オリジナル完全版として11月に劇場公開されるとの情報が!フリードキン!ロイ・シャイダータンジェリン・ドリーム!当時日本公開されたのは30分ほどカットされた短縮版、自分が見たのはローカル局でTV放映された吹替版(なのでさらにカットされていたことだろう)。諸々大人の事情があったらしく日本版ソフトが出ていなかったので、これまで再見する機会もなかった。これは万難を排して劇場に駆けつけるしかあるまい。


2018-08-09

『マッドボンバー』(バート・I・ゴードン)

マッドボンバー [Blu-ray]

マッドボンバー [Blu-ray]


 TSUTAYAの発掘良品コーナーに70年代アクションの怪作『マッドボンバー』が登場!果たして「良品」かどうかはともかく、絶大なインパクトのある作品なので、好き者は必見です! 


 ロスで連続して起きる爆破事件と強姦事件。二つの意外な接点から事件に迫る警察と、二人の犯罪者の攻防を描く。本作は荒々しい70年代アクションの中でも、とりわけ無茶な1本と言えるだろう。行き過ぎたバイオレンス描写には唖然とさせられる。ポスターのデザインも荒々しい事この上ない。爆弾魔チャック・コナーズの荒んだ顔のアップ、その脇には「爆弾男社会を逆恨み ダイナマイトで挑戦 登校の女学生即死 会合中の婦人団体血まみれ 犯人、爆弾抱いて繁華街に逃げ込む」という語呂がいいんだか悪いんだかわからない不穏な文章が踊っている。


 本作の見所は、何より二人の犯罪者の強烈なキャラクターだ。爆弾魔(チャック・コナーズ)は娘をドラッグで失って、その怒りを社会にぶつけまくる。路上でポイ捨てした通行人にからみ、スーパーでレジ係にからみ、喫茶店でウェイトレスにからむ挙動不振ぶりが、最終電車で出くわしそうなリアルなコワさを醸し出す。一方強姦魔(ネビル・ブランド)は犯行を重ねつつ妻をブルーフィルムに撮って楽しむという愛妻家ぶりで、ネビル・ブランドのシワシワの顔がこれまたエロ本専門の本屋で出くわしそうなリアルなコワさを醸し出す。この濃おおおい二人が相手なので、主人公の刑事(ビンセント・エドワーズ)は終始イラ立っているばかり。


 監督はバート・I・ゴードン。かつて吹替洋画劇場で定番だった『巨大生物の島』『巨大蟻の帝国』等々、人や虫やネズミなどが巨大化する映画をたくさん撮っているので、そのイニシャルからMr.B.I.G.の異名を持つ男。本作では監督、脚本、撮影まで手掛けている。


(『マッドボンバー』 THE MAD BOMBER 監督・脚本・撮影/バート・I・ゴードン 音楽/ミシェル・メンション 出演/ヴィンセントエドワーズ、チャック・コナーズ、ネヴィル・ブランド、クリスティナ・ハート 1972年 91分 アメリカ


巨大生物の島 TREASURED COLLECTION [DVD]

巨大生物の島 TREASURED COLLECTION [DVD]

2018-08-08

最近読んだ映画本

『バッドエンドの誘惑 なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか』(真魚八重子) 

 映画秘宝セレクション『バッドエンドの誘惑 なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか』(2017年)。映画秘宝関連の書籍としては『厭な映画』(2015年)の姉妹篇か。著者は真魚八重子さん。テーマの割には、前著『映画なしには生きられない』ほど重たくない印象なのは、真魚さんの得意分野であること、そして彼女自身のプライベートをさらけ出すような文章がないから、かなと。「厭な」物語や描写のディティールを生き生きと綴る文章は読み応えがある。始めから厭さを狙って作られた「あざとい」映画(ハネケとか)は除外されていて、これには同感。それにしても『偽りなき者』とか『だれのものでもないチェレ』とか本当に厭そうで、真魚さんの文章だけでお腹一杯だ。




映画評論・入門!』(モルモット吉田) 

 映画秘宝セレクション映画評論・入門!』。本書のテーマは「映画批評」。『ブレードランナー』『2001年宇宙の旅』『七人の侍』『ゴジラ』『太陽を盗んだ男』等々、いわゆるオールタイムベスト級の名作が、リアルタイムではどのように評価されていたのか検証する部分が面白い。また、映画が犯罪を引き起こすことがあり得るのか、という部分も面白い。同僚を毒殺しようとして捕まった女性の部屋から山田宏一の著書が見つかった話は最高で、作家の金井恵美子が蓮實・山根両氏の反応(嫉妬)が見たくてすぐに連絡したエピソードが凄い。「映画批評」に留まらず、「映画評論家」の存在意義、「映画評論家」っていったい何者なんだ、という検証が行われているあたりも面白かった。その辺の話は、映画ファンの雑談の中ではよく話題になることだが、こうして1冊の本としてまとめたのは珍しいと思う。


映画評論・入門! (映画秘宝セレクション)

映画評論・入門! (映画秘宝セレクション)



『監督小津安二郎<増補決定版>』(蓮實重彦) 

 名著として名高い蓮實重彦『監督小津安二郎』(原本1983年、補強版2003年)。ハスミ節は絶好調で、実に面白くてためになる一冊であった。個人的に小津作品に対して「引き算で出来上がったストイックな映画」という印象は全く無くて、むしろかなり過剰な映画という印象を持っていたので、ハスミ先生が執拗に表現の多様性演出の自在さを強調しておられるのには成る程という感じであった。戦前のサイレント作品は『生れてはみたけれど』(1932年)しか見ていないので、是非とも探してチェックしてみようかなと思った次第。さておき、本書で気になったのは巻末に掲載された小津の年譜であった。「●事件」と「カレー事件」そして、1930年の作品『エロ神の怨霊』っていったい・・・。




『映画と本の意外な関係!』(町山智浩) 

 「映画と本の関係」と言っても、原作本と映画化作品という関係性だけではない。映画のシーンに登場する本や、引用される小説や詩、歌詞などを切り口として映画の背景や監督の思いを紐解いてゆく一冊。と聞くと、何やら堅苦しいものを想像してしまうけど、本書で取り上げられているのは文芸映画だけではない。『007』シリーズ、『インターステラー』、『世にも怪奇な物語』(フェリーニ篇『悪魔の首飾り』)、『ウォール・ストリート』、『トゥルー・グリット』、『ミッドナイト・イン・パリ』、『恋人たちの予感』、『ビフォア・サンセット』、『リンカーン』、『ソフィーの選択』、『ゴーン・ガール』、『眼下の敵』、『ベルリン・天使の詩』、『キャロル』等々。SF、サスペンス、戦争映画、ホラー、スパイ映画、恋愛映画、ドキュメンタリー、ミステリー、西部劇・・・とジャンルは多岐に渡っている。すなわち、ジャンル問わず映画と本(小説、詩)とは何らかの関係があるのだ。1本の映画がとある小説や詩で別の映画に繋がってゆくという辺りの面白さ。映画の良し悪しを断ずるだけにとどまらず、こうやって丁寧に読者の知識や世界観を広げてくれる文章こそが本当の映画評論というものであろう。本書は、雑誌『kotoba』連載をまとめたものということで、町山さんにしては少々真面目な(よそいきな?)文章だなという印象も。時折(ニーナ・シモンドキュメンタリーのくだりなど)町山さん本来の熱さが顔を出すところも好きだった。




『正太郎名画館』(池波正太郎

 雑誌に連載していた池波正太郎の身辺雑記を抜粋した『正太郎名画館』(2013年)。70年代後半から80年代中番にかけての映画鑑賞の記録となっている。趣味は映画と読書と美食(お酒)という日常が羨ましい。何ら新しい発見(映画の見方を更新されるような)がある訳ではないが、好ましい読み物だった。ちなみに表紙は『テス』のナスターシャ・キンスキー、内表紙は『赤い影』と趣味も合う。


正太郎名画館

正太郎名画館