Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『「最前線の映画」を読む』(町山智浩) 


 町山智浩氏の新刊『「最前線の映画」を読む』読了。ここ2年ほどの間に公開された話題作について、監督や脚本家の企画意図を、作り手の生い立ちや社会背景、引用・参照された数多の映画や文学や音楽等の中からわかりやすく読み解いていく。その作品が何故「最前線の映画」なのか、つまりは今現在見るべき映画なのか、その存在意義が浮かび上がってくるのが非常にスリリング。かつ、各章の締めの文章には「町山節」が冴えて泣ける1冊でもありました。


 紹介されている作品は、『ワンダーウーマン』『エイリアン:コヴェナント』『ブレードランナー2049』『セールスマン』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『哭声/コクソン』『イット・フォローズ』『ドント・ブリーズ』『シンクロナイズドモンスター』『ラ・ラ・ランド』『ダンケルク』『サウルの息子』『LOGAN/ローガン』『メッセージ』『ベイビー・ドライバー』『沈黙 -サイレンス-』『エル ELLE』『ルック・オブ・サイレンス』『アイ・イン・ザ・スカイ』『ムーンライト』。20本中、見ているのは6本だけだった。ちょっと寂しい。


 未見の作品で、本書を読んで強烈に見たくなったのは『LOGAN/ローガン』だった。これまで『X-メン』シリーズがどうも面白いと思えず、ジェームズ・マンゴールド監督は『コップランド』『3時10分、決断のとき』が好きだったので『ウルヴァリン:SAMURAI』を見たら底抜けだったのでガッカリして、『LOGAN/ローガン』は全く見ようと思わなかった。ところが町山氏の熱い文章を読んでいたら、マンゴールドが撮ったジョニー・キャッシュの伝記映画『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』と合わせて『LOGAN/ローガン』も絶対に見なきゃイカンと思った。


 映画の魅力を語ることで、読者を映画鑑賞に駆り立てるのが映画評論家の大きな役割。そういった意味では、本書は最良の映画評論集ではないかと思う。