「おぱんちゅ忍法帖」 おおつやすたか (ソフトマジック)

信玄の魔の手から若君・大福丸を逃がすため、萌谷から3人のくノ一が呼ばれた。
生脚剣の使い手である萌影(もえかげ)は百合影・ぷに影とともに大福丸護衛の決死行へ向かう。
彼女たちを待ち受けるは、信玄配下の忍者ども…。
 うははー。くくく、くだらねー&おもしれー。
あらすじだけ書くとまともな忍法帖ちっくに思えてしまうところが素晴らしいですね。
戦闘中に秘所をさらすことで相手の気をそらし無敵を誇る通称”発禁剣”(くわしく描写すると本が発禁処分になるから)の弱点(寒さに弱い)
を克服するために開発された木綿の下帯こと”ぱんつ”を身につけたヒロインだとか、敵の操る覇道法忍法だとかとか、ネタの数々がすっげーくだらなくてイイ!
ぱんつの開発に死力を尽くした純白斎老とかアホすぎて最高。
それと、武田信玄の描き方があまりにもあんまりだったり、中途半端に時代小説な色合いがまじってるあたりも笑えるなあ。
ヒロインのはずなのに萌影の活躍がちと少ないのが残念かも。そのぶん百合影ねえさまが大活躍なわけですが。
山田風太郎忍法帖好きな人にオススメです。




「扉は閉ざされたまま」 石持浅海 (祥伝社ノン・ノベル)

大学の同窓会の最中、伏見亮輔は後輩を殺害。
浴室での事故を装い現場を密室状況にした伏見。
閉ざされた扉を前に、犯人と探偵役との静かな戦いがはじまる…。

倒叙ミステリでありつつ、本格ミステリ的な面白さもあるという良作。
犯人の偽装工作を探偵がいかに解読していくかの対決が話の主眼になるわけだけど、
その中で”なぜ犯人がそういう手段をとったのか?”の why done it は読者にも伏せられているという構成で、
会話のはしばしに忍ばせてあった伏線を回収して犯人の動機にいたるまで解明されるところで、あーそうだったのかーと感心させられる。
趣向やラストの取り扱い等、単純な倒叙ミステリとは一線を画したものを指向しているあたりがミステリとしての評価ポイントかな。
あと、話が短くシンプルにまとまっているのも○。