流対協「都育成条例改悪反対声明」

中小出版社で構成する業界団体の出版流通対策協議会*1が、「東京都青少年健全育成条例の改悪に反対する声明」を公表しました。
まだ流対協サイトでは公表されていないようですが、とりあえず転載します。

出版の自由を圧殺する
東京都青少年健全育成条例の改悪に反対する
2004年3月25日
出版流通対策協議会会長・高須次郎
東京都千代田区飯田橋3-2-5現代ビル内
TEL. 03-3221-1094
FAX. 03-3221-1193

東京都青少年健全育成条例が、またもや改悪される。
2001年3月に、東京都の東京都青少年条例が改悪されたとき、私たちは以下のような抗議声明を発した。
「東京都青少年条例の改定案が可決・成立したことは、出版・表現の自由の束縛に向かって大きな一歩を踏み出すものとして、私たちは非常な危惧と怒りを感じています。
青少年の健全な育成のために、という名目であれ、行政機関が出版物を選別する事は間違っています。それも、「自殺・犯罪」に関するものも「不健全図書」の対象にし、それを非公開の場で選定していくというのでは、歯止めなき言論・表現規制に道を開いたものというしかありません。
また中小零細書店へのなんの配慮もなく、罰則を振りかざしての区分陳列の強制も暴挙であるといえます。
管理と罰則で社会を治めようという方向にまた大きな一歩を踏み出したこの改正案の成立に対して、私たちは抗議します。」
そして昨2003年10月に東京都の緊急治安対策本部のもとに置かれた副知事の諮問機関が青少年条例の「改正」を提言、石原都知事が青少年問題協議会に「不健全」図書類の効果的規制のあり方を検討するよう諮問、青少協は条例強化するようにという答申をまとめる。それを受ける形で東京都は条例改正案を作成、3月22日文教委員会で可決、3月30日の本会議で可決成立へと、かつてないはやさで、大幅改悪に向かっている。
その内容は、4年前の改悪をステップとして、さらにひどいものになっている。
まず「不健全図書」の区分陳列どころではなく、包装義務化と罰則が新設され、東京都知事が「自主規制」を版元に勧告する権利を付与するなど、規制強化・厳罰化に向かっている。また青少年の閲覧・観覧が不適当との表示を要する「表示図書」が梱包・区分陳列されて売られているか、あるいは貸し出しされているかどうかを、都の職員のみならず民間の「青少年健全育成協力委員」が書店・コンビニへ立ち入り調査するようになる。
これは言論・表現の自由への権力の介入以外の何ものでもない。
そして、条例では、2年以下の懲役あるいは100万円以下の罰金が科されるというのを筆頭とした罰則規定が明記されているが、その規定による陳列を行わなかったものは30万円以下の罰金が科される。
これはもう、取締りの恫喝で出版の自由を圧殺することに他ならない。
出版物を行政機関が選別することは絶対やってはならないことである。
わたしたち出版流通対策協議会は、この条例改定に強く反対する。

流対協声明が指摘している「青少年健全育成協力委員」の創設と立入調査権付与の問題は重要です。
書店や若者の溜まり場となっているハウスや漫画喫茶などへの立入りによる妨害も問題ですが、誰が「青少年健全育成協力委員」なのか、「青少年健全育成協力委員」は具体的にどんな指導をするのかという点も問題です。
条例改正案が成立すれば、「青少年健全育成協力委員」には都民が支払っている税金で協力金(給与)が支払われる条例上の根拠ができることになります。
ということはたとえば、規制推進派の活動家や活動団体の関係者を「青少年健全育成協力委員」に任命して、都民が支払っている税金を規制推進派の活動家や活動団体の関係者に政治的にまわすこともできるようになるということです。
規制推進派の活動家や活動団体の関係者が規制推進の都知事や都議に政治献金をし、規制推進の都知事や都議が規制推進の条例をつくり、規制推進の条例によって都税を規制推進派の活動家や活動団体の関係者にまわるようにする…。
もし仮にそういうことが実際にあるしたら、政治資金の典型的な資金還流であり、公的サービスの私物化、公権力の私的収奪、都税泥棒にほかなりません。
これは表現出版の自由という問題を超えた「民主政」の問題です。
「青少年健全育成協力委員」に誰が任命されるのか。都知事や都議を政治的にバックアップしてきた規制推進派の活動家や活動団体の関係者が「青少年健全育成協力委員」に任命されるかどうかを監視し、もしそうした事実が発生したら大きく報道していく必要があります。

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