NHK番組政治家介入疑惑(6):メディア関係者緊急記者会見

 
みなさんNHK視てますか?(笑)
海老沢会長辞任。顧問就任も辞退。当然だ、よく決断した、とほめてやりたいところですが、本来は経営委員が率先して「解任」し、経営委員も辞任すべきでした。
もちろんそれで終わりではなく、人事を刷新してそこからはじまるのだと思います、NHKの改革は。そうみんなが思っているからこそ、NHK不払いの増加に歯止めがかかっていないのでしょう。
なんだかNHK職員や元職員の顔を見るたびに、この職員も良心を失ったロボットなんだろうなあと思って見えてしまうって人は、たぶんかなりの数いるんじゃないでしょうか。私は、NHKの番組でNHK職員の顔を見ると「なあオマエも上からの命令で番組止めたり変えたりしてるんだろ?」ってテレビの前で指を指して言ってます。まあ返事は無いわけですが。
NHK幹部の態度を見てもうウンザリだなNHKなんか消えて無くなっちゃえっていう気分の人が増えていそうで、その気持ちももっともなのですが、私はNHKは必要だという立場で批判していましたし、今もそうです。というか、NHKなんかいらないって立場では批判はできないでしょう。応援の反対は批判ではなく、放任であり無関心です。
 
さて、本題に入る前に有用資料リンク。資料作成ご苦労様でした。
 

NHK問題に関する緊急記者会見とアピール」の参加者コメント&宮台コメント
http://d.hatena.ne.jp/liddy/20050120

 
宮台氏の「みんなっバカじゃねぇの? NHKに公正中立なんてあるわけねっだるぉ」っていう議論は、気持ちはわかるんですが言い過ぎでしょう。「番組の公平性は職員の努力と国民のNHK経営の監視によって可能だが、経営委員は公正中立であり得ない」と言うのなら正解だと思います。*1
 

ビデオニュース
【映像】ジャーナリストやメディア関係者によるNHK問題に関する記者会見とアピール (2005年1月18日)
http://www.videonews.com/asx/011805_nhkappeal_300.asx

NHK問題で緊急院内集会
http://blog.melma.com/00067106/20050118012452
http://blog.melma.com/00126358/20050113014817
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/tv/nhk2.html#kaiken

メディア関係者、NHK問題に関する緊急記者会見 2005/01/19
http://www.janjan.jp/media/0501/0501192730/1.php

 
NHK問題に関する記者会見では、「長井さんの記者会見には共感するも本来なら4年前に泣いて欲しかった」と坂上香さんが言っていました。それは理解できるし正当な感想です。
ただ、「もうどうしようもないと思われていたNHKから告発者が出たということはわたしたちにとって希望でもある」というある方からの発言にも、私は共感します。私は「NHKだけが腐っていて民放は健全だ」とは考えていません。取材先の接待に漬っている新聞社職員や民放職員の数は、私が知っている範囲だけでも一人や二人じゃありません。
NHKを含めたマスメディアはたしかに腐っている。しかしそれでも告発者が出た。しかもNHKから、という素直な驚き。そこに、希望があります。人間の良心というものをナメてかかっていた奴らにパンチをくらせたということに。
4年前も沈黙を守っていたら、もう告発することはないだろうと考えるのが普通でしょう。NHK幹部や、安倍・中川氏や、安倍萌え族だかなんだか知りませんが金魚のフンのように金魚のウンコを脳内コピペしている連中もみんな、告発なんかあり得ないとタカをくくっていた。「それが権力というものだ」と思って安心していた。
でも、そうではなかった。事実は違った。現実に長井さんは告発した。一度支配されたら支配されたままだと、みんな信じていたけれどそうではなかった。屈服したけれど、そのことに沈黙し続けることに耐えられないと感じることのできる人間性、それが「良心」というものだと思いますが、良心の痛みを感じる人間がNHKの中にいたという事実。
その事実の重みを、私は率直に受けとめたいと思いますし、同時に、その事実の重みによって自分の「良心」が傷つくことを恐れている弱い人たちから一斉に異論が噴出しているのだということも私は受けとめています。むろん、そんな脆弱な自己しか持たない人を、軽蔑しこそすれ共感することは私はありません。
 
それから緊急記者会見で呈示された「フェアとは何か」という問題。
番組の法的な公平性(放送法3条の2)ではなく、「NHK対政治家」という関係性の中におけるフェアとはなにかという点について大事な指摘をしています。(放送法3条の2については後日詳細な検討を書きます)
 

北村肇さん(「週刊金曜日」編集長)
・政治家本人は圧力ではないといっているが、「公平にやってくれ」と言ったと認めている。これは圧力以外の何ものでもないし、「その何が悪い」と開きなおっていること。

 
丸激で神保さんが「天皇が『やめろ』と言わずとも『本当にそれでよいのであるか?』『本当にそれでよいのであるか?』と10回繰り返したら、最後は「考え直します」と言わざるを得ないのと同じだ」というようなことを言ってましたが、まあそういうことですよね。
たとえば、拳銃を持っている人と持っていない銀行員の二者がいて、拳銃を持っている人が持っていない銀行員に銃口を向けながら「お金は公平中立にお願いしますよ」と言った場合のことを考えてください。
拳銃を持った人と銀行員との関係性の上で公平中立はあり得ますか? そんなことは絶対にあり得ない。拳銃を持っている人に有利に取り計らわねば殺されるということは誰の目にも明らかでしょう。公平中立ではあり得ない。
事前か事後かの議論はあるようですが、どちらであれ安倍・中川両氏とも、当時の与党の中枢にいた人であり、人事権、予算権、周波数配分権といった政府権限に影響力を行使できる立場にいました。その人から「公平中立にお願いしますよ」と言われて、NHKは公平中立であり得るか。あり得ません。
北村肇さんが指摘する通り、安倍・中川両氏は自分の議員としての過ちを開き直っている。盗人猛々しいとはこのことです。
 
それから、一部で注目されていた武田徹氏の
 

http://162.teacup.com/sinopy/bbs

NHK 投稿者:武田徹  投稿日: 1月18日(火)08時19分9秒
「みなさまのNHK」であれば、最初の44分バージョンと40分放送バージョンを並べて放送して、「みなさま」の判断を仰いだらいかがだろう。

 
という意見というか提案ですが、いろんなところで類似意見を見かけます。なにが妥当かを判断するのは視聴者であって放送局ではないという意味ではその通りです。
ただその前提には、事実に対する論評は多様であり得るれど事実はあくまでも単一である、という点は忘れるべきではないだろうとも思います。
政治家の戦争指導という事実は単一です。しかし、政治家の戦争指導という過去の事実に対する論評はたくさんあります。という意味で、国際民間法廷関係者の論評を呈示することが是か否かといえば、是であろうというのが放送現場・長井告発の考えで、それはもっともな判断だと思われます。
私自身、長井告発や「オリジナル版」の番組内容の告発などで聞き及ぶ範囲では、現場の判断が正しいだろうと思います。
「オリジナル版」の内容についてはこちらを参照してください。
 

NHKETV特集から消された戦場の証言
http://www.ne.jp/asahi/tyuukiren/web-site/syougen/nhk_special.htm

金子  私は、昭和17年に山東省の東昌というところにいました。その時に中隊の命令で、巡回慰安婦の移動を警備をしろという命令を受けました。そして機関銃中隊から少尉以下9名、機関銃を持って大隊本部にまいりました。その時にすでに小銃隊が15名ほどおりまして、2台のトラックに乗りました。私たちが2番目のトラックに乗ったときに、そこには絣の着物を着た従軍「慰安婦」の方が3人おりました。しかしながら、敵地区をまわるので八路軍に襲撃される恐れがあるからまずいということで、携帯用の外套を上から着せました。そして軍帽をかぶせました。その車中の中で、古い兵隊が「おれはおまえたちのために警備して送るんだが、もしも途中で八路軍に敵襲を受けて戦死したらこんなに恥ずかしい話はないよ」と「慰安婦」の人に言ったんです。そうすると「慰安婦」の一人の方が「だったらやめたらいいでしょう」、こういいました。「馬鹿野郎。おれは勝手に来てるんじゃないんだ。命令で来ているんだ。そんな勝手なことができるか」。そうすると、「慰安婦」の方が、「あたしだって何も好きこのんでこんな危ないところに来ませんよ。軍隊の偉い人のお陰でここに来ているんですよ」と言いました。

NHK「問われる戦時性暴力」改変を考える」
http://postx.at.infoseek.co.jp/NHK-kaizan/takahasi.html
NHK「女性戦犯国際法廷」番組改竄問題・私家版
http://postx.at.infoseek.co.jp/NHK-kaizan/top.html

NHK・ETV2001改ざん問題資料集
http://www.jca.apc.org/~itagaki/nhk/archive.htm
カットされた4分間の謎 NHK「戦争をどう裁くか」に何が起きた
http://www.jca.apc.org/~itagaki/nhk/shukin353.htm

 
現場の判断が間違いだ、と当時のNHKの上層部なり、事前か事後かの議論は置いておいて政治家なりが判断したのであれば、その是非が議論されて当然であって、「不当介入か正当修正か」という事実に対する論評の差はあれど、放送バージョンとオリジナルバージョンのふたつがあったという事実は事実です。
ですから、放送バージョンとオリジナルバージョンのふたつがあったという事実を示して国民に判断を問う、ということには意味があるだろうと思います。
事実を評価するのはNHKや安倍・中川氏ではない。国民一人一人だ。
ですから、ここから抽出される問題は、国民にどのようにして事実が示されるべきかということです。具体的に言うと、オリジナルバーションの映像は受信契約者に対する情報公開の対象にならねばならない、ということです。
 
というわけで、私はNHKに修正前のオリジナルバージョンの映像の情報公開を請求することにしました。(結論はおそらく2ヶ月ぐらい後になる模様)
 
もし仮に、オリジナルバージョンの情報公開請求をNHKが拒否すれば、拒否したという事実それ自体が、オリジナルバージョンから放送バージョンに番組に手を加えたということの検証可能性をNHK自ら否定することになります。
ということは、情報公開請求が認められなかった場合、告発者の言い分の方が信憑性があるということが証明されるだろうと思います。なぜなら、オリジナルバージョンがどのようなものであったのかを、少なくともNHKよりは積極的に説明してその正当性を訴えているわけですから。
そして、おそらく、99%情報公開請求は却下または非開示となり、告発者の正当性は証明されるでしょう。
だから情報公開請求します。
情報公開請求は、べつに私でなくても良いし、誰でも出来ます。みなさんも出してみてはいかがでしょうか? 請求するだけなら無料です。何千件と請求を出しても、その請求すべてが却下または非開示の場合は費用は一切かかりません。
 

日本放送協会
http://www.nhk.or.jp/
NHKの情報公開
http://www.nhk.or.jp/koukai/mokuji.html

 
ところで、いまNHK出版で一番うれている本は、何だと思います? 
これです。
 

平成15年度 放送受信契約数統計要覧 (売り切れ中)
http://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=0130&webCode=00072162004

 
16年度版も大売れ間違い無しでしょうね。「エビ様の栄光と挫折 政治介入に屈するな」も出版すれば大売れ間違い無し、かも。
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この問題の過去ログはこちら。
 

NHK受信料横領問題(1)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040914
NHK受信料横領問題(2)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040915
NHK受信料横領問題(3)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040916
NHK受信料横領問題(4)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040917
NHK受信料横領問題(5)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041126
NHK不祥事:生活ほっとモーニング事件最高裁判決
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041127
NHK受信料横領問題(6)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041220
NHK受信料横領問題(7)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041222
NHK番組政治家介入疑惑(1):長井記者会見
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050114
NHK番組政治家介入疑惑(2):長井記者会見(その2)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050115
NHK番組政治家介入疑惑(3):各新聞社社説のまとめ
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050116
NHK番組政治家介入疑惑(4):「コンプライアンスの取組み」全文
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050120
NHK番組政治家介入疑惑(5):不正支出問題適正化報告書全文
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050121

 
関連リンク
 

NHK不祥事カテゴリー
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/nhk/
NHKに政治介入。政府高官が圧力・干渉、番組内容を改変。受信料問題に影響も。ETV「裁かれた戦時性暴力」で
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/tv/nhk2.html
NHK「女性戦犯国際法廷」番組改竄問題・私家版
http://postx.at.infoseek.co.jp/NHK-kaizan/top.html

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*1:予算権を握られているからNHKに公正中立があり得無いなら、じゃあ初代NHK会長が進めた放送の独立性の努力はいったいなんだったのか、ということです。予算権を握られていても公正中立を実現した会長もいたのに、海老沢氏はなぜそれができなかったのかという議論なしに、公正中立はありえないと断言することはできないでしょう。NHKに公正性や中立性のついては、経営と番組製作の分離、公共放送の公共性の価値、経営と製作の分離、経営委員の役割といった議論が必要です。週刊誌のNHK民営化論や受信料制度廃止論には同調できません。というか宮台さんは、予算権を握られているので公平中立は…などと言葉を濁さないで「NHKは存在そのものが悪だ。悪に何も期待することはない。だから番組改変による失望もあり得ない。NHKは解体せよ。そして黙って丸激を見ろ!」とはっきり言うべきじゃないか?(笑)