またメディアに圧力:自民党「刺客と呼ぶな」

安倍晋三議員と中川昭一議員は「圧力はかけていません」などと言っていましたが*1自民党は結局、圧力をかけることになったというお話。
 

「刺客」と呼ばないで 自民、報道各社に申し入れ 2005年08月28日23時11分
http://www.asahi.com/politics/update/0828/009.html

「刺客」と呼ばないで――。自民党は28日夜、郵政民営化法案に反対した前衆院議員への対立候補について、「刺客」という言葉を使わないよう報道各社に文書で申し入れた。小泉首相の反対派への強硬姿勢を示す言葉としてメディアで頻繁に使われているが、「イメージが悪い」として、異例の要請に踏み切った。
申し入れの理由については、(1)党として刺客と呼んだことはない(2)刺客は「暗殺者」を意味し、候補の呼び名としてふさわしくない(3)党とその候補のイメージダウンを図る効果が生じている――をあげている。

 
報道の編集権は報道機関自身にあるので、判断するのは報道機関自身です。
以前にも書きましたが、政権が危うくなると報道機関に圧力をかけるというパターンは、どの政権も同じ傾向のようです。
 
自民党の主張ですが、「党として刺客と呼んだことはない」という点は、党としての活動の事実をメディアが国民にどう伝えるかという編集権の問題で、事実に即した報道だろうと思われますので問題ありません。問題があるとすれば、刺客という実体を持ちつつそうではないと否定してメディアに不当な圧力をかける側の方です。
それから、「刺客は「暗殺者」を意味し候補の呼び名としてふさわしくない」のであれば、「暗殺者」という意味で国民に受けとめられているような候補をたてたことがそもそも問題です。「暗殺者」と言われて困るような候補をたてなければ良かったのです。
「党とその候補のイメージダウンを図る効果が生じている」のだとすれば、まさに報道機関が権力チェックという本来のジャーナリズムの作業をしているということが証明されたわけで、国民のイメージがダウンをするような候補を出した幹事長の責任が明らかになったというだけの話にすぎません。
とまあこんなことは私が書かなくても誰でもサックリ反論できてしまうような「申し入れ」ではありますね。
  
問題は、こういう「申し入れ」に萎縮して報道をやめてしまう腰抜けメディア、特にテレビ局。
そしてもっと問題なのは、そういう萎縮が生じているテレビを、萎縮が生じていることを意識せずに長時間見て、ただその瞬間を楽しんでいるだけの国民かもしれません。
 
具体的にはこういうことです。
 

「好感」政党は自民50%、民主20%…ネット調査
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050827it13.htm

平日1日当たりのテレビ視聴時間と、投票したい政党との関係では、視聴時間が長いほど自民党の割合が高い。「3時間以上」の層の57%が自民党と答えた。「30分未満」は、民主党が34%で、自民党の32%を上回った。
テレビ視聴時間が1日「30分未満」の層は支持、不支持が各50%で、「3時間以上」は72%が支持した。長時間視聴者は、自民党の「刺客作戦」がお気に入りのようだ。

 
まとめるとこの方が仰っている通り。
 

嗚呼 洗脳されちゃってるよ
http://blogolb.jugem.jp/?eid=89

つまり、こういうことだ。

 テレビを見る時間が長い
    ↓
 テレビから情報を得る機会が多い
    ↓
 テレビを使った洗脳政策にまんまとハマる

 
テレビから垂れ流される情報を鵜呑みにするのみで、
 自分で情報を集め
 それを分析する
いうことが出来ない人間がいかに多いか、ということが如実に現れているな。

 
みなさんは、自民党や党関係者の公告戦略をどれくらい意識してメディアを見ていますか?
たとえば、郵政民営化を熱烈に推進する竹中大臣の知人の公告会社が郵政民営化の政府の公告を受注して利得を得ていて、竹中大臣の知人の公告会社は国民の世論操作の戦略を提案していたという事実を、みなさんはどれだけ理解しているでしょうか。
 

立花隆のメディアソシオ-ポリティクス
海外メディアが伝えた小泉・郵政解劇の評判
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050811_kaigai/index.html
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050811_kaigai/index1.html
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050811_kaigai/index2.html
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050811_kaigai/index3.html
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050811_kaigai/index4.html

郵政改革PRのために、国と特別契約を結んだ竹中平蔵郵政民営化担当大臣の知人が経営するPR会社が提出したPR企画書の中に、郵政改革PRは、老人、女性など、“ちょっとIQの低い人々中心に進める”という一文があったのは有名な話だ(国会でも取り上げられた)。
解散総選挙の決定が下ったあとで、小泉首相の支持率、郵政法案への支持率が上がったと聞いて、私はおどろいている。
新しく小泉首相支持に回った人々にいっておきたいことは、国民の多くは熟考の上で小泉首相の支持にまわったのかもしれないが、その支持率アップの数字を見て、高笑いしているに違いない竹中大臣とその盟友のPR会社幹部がいるということをお忘れなくということだ。

 
「知能の低い人間を郵政改革世論操作のターゲットにせよ」との戦略をたてた竹中大臣の知人の公告会社。その公告会社に随意契約(独占契約=通常の公開入札よりも利益が大きい契約)させた問題をとりあげた国会会議録は、以下の通りです。
櫻井議員は世論戦略の問題だけではなく、郵政法案がアメリカの規制緩和要望を実現するための売国的産物であることも指摘しています。
 

第12号 平成17年8月2日 参議院会議録情報
第162回国会 郵政民営化に関する特別委員会 第12号
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/162/0087/16208020087012c.html

○櫻井充君 これの中身を見させて、見ました。そこの中で大事な点申し上げますと、アメリカの要望書は極めて具体的でございます。一方、日本の要望書は、ちなみに御紹介させて、御紹介いたしておきますが、要するにパスポートを何とかしてくれとか、それからいわゆる陳情みたいな形で、ここの部分を何とかしてほしいので以下を要望するとか、そういうレベルでしか書かれていないんですね。これで、アメリカは一体どうなってくるのかというと、今回の、まずここ大事なことなんですが、本年の要望書において米国は日本における民営化の動きに特段の関心を寄せた、これは郵政公社の話ですが、日本郵政公社の民営化は意欲的かつ市場原理に基づくべきだという原則が米国の提言の柱となっていると。つまりは、市場原理に基づけとかそういうことをやれというのは実は米国の提言の柱になっていると。もしかすると、これはアメリカの意向を受けてやってきているのかもしれないと思うところがあるわけです。
(略)
そして、そこの中で、今度は郵政の民営化に対してですね、相当な提案があります。例えば、競争条件の均等化であるとか、保険と銀行の公正な競争をやれるようにしろとか、それから相互補助の防止というのは一体何かというと、日本郵政公社の保険及び銀行事業と公社の非金融事業間で相互補助が行われないよう十分な方策を取るというふうに言われていて、三位一体でやれるはずがないですよ、アメリカの言うとおりやってくると。
これは委員の皆さんに資料で配らしていただいておりますが、「米国政府・団体からの対日要望と郵政民営化関連法案との対応等」というのがございます。そこの中で、例えば「民間企業と同一な競争条件の整備」というところ、米国政府からは民間企業と同様の法律、規制、それから規制監督を適用するというふうに言われております。そうすると、郵政民営化整備法の第二条のところに、「次に掲げる法律は、廃止する。」と、郵便貯金法、郵便為替法、郵便振替法、簡易生命保険法と、こうやって全部意向を受けていると。
ここに資料がございますが、例えば郵便保険会社郵貯銀行の政府保有の株式完全売却という項目がありますけれども、米国政府からは完全売却しろと、そういうふうに書いてあります。それに対して、段階的に処分しろとか、要するにアメリカ政府からいろんな要望を受けると、それに従ってこうやって法律が整備されてきております。
このことを踏まえてくると、果たしてこの民営化というのは国民の皆さんのための改正なのか、米国の意向を受けた改正なのか分からなくなってくるということでございますが、竹中大臣、いかがでしょう。
(略)
内閣総理大臣小泉純一郎君) それは櫻井さんね、思い過ごし。
(略)
○櫻井充君 
(略)
るるいろいろ申し上げてきましたが、最後にもう一点、ちょっと許し難いことがありましたので、このことについてお話をさせていただきますが、先ほど、午前中、政府の広報のビラの問題がございました。その政府の広報のビラというのは、本来は政府の政策が決定し、ごめんなさい、政府ではなくて、国会で法律が通ってから本当はこういう内容になりますよということをきちんとした形で広報するべきものなんだと思うんです。
 随意契約を結びまして、その随意契約もかなり、契約の日付を変えるなど、ちょっとおかしいんじゃないかという指摘が一杯ありました。そこの随意契約ということは、この会社がいいからこの会社と契約を結んでいるんですが、その会社がこういう戦略を持った方がいいですよということを政府にお示ししたこれは分析図です。(資料提示)
 そうすると、縦軸に何を取っているかというと、IQ軸というのを取っています。このIQ軸ということは知能指数です。知能指数の高い人、低い人、要するに、簡単に言えば、頭のいい人、悪い人ということを縦軸に取っている。まずこういう分析をすること自体が非常識だと思います。これは、本来であれば政治的に関心があるとかないとか、そういう形で取るべきなんだと思うんですね。
そしてもっとすごいことは、ここの中でBのところ、つまりはIQ軸の低い部分のところに、低い部分のところ、Lowのところに「小泉内閣支持基盤」と書いてあるんですね。しかもそこのところに、失礼なことに主婦アンド子供を中心、それからシルバー層と。具体的なことは分からないが、小泉内閣、小泉総理のキャラクターを支持する層だというような分析をされているわけです。
こういう会社の分析が本当に適切なんでしょうか。そして、こういう会社となぜ随意契約を結ばなきゃいけないんでしょうか。総理、今の分析、どう思われますか。

内閣総理大臣小泉純一郎君) これは、私は知りませんけれども、私の支持基盤が主婦層、シルバー層、何で分かるんですか。私は全く知らない。政府は全く関係ない。各種新聞社がよく世論調査をしておりますけれども、どういう方たちが支持しているのか、私分かりませんよ。これはどうしてそういうことを言うのか、ちょっと分かりませんね。
 私は、どういう層に支持してもらいたいとか、そういう気持ちはありません。ただただ国民のためにどういう政策がいいかと、それを遂行するには最大限の努力をしていこうということだけであって、どういう支持層とかそういうのを余り関心を持っておりません。
○櫻井充君 今のは、私が分析したのではなくて、政府が依頼した会社が分析したものです。その会社がすばらしい、会社のその分析も含めてプレゼンテーションがすばらしいといって随意契約を結んだところなんですよ。おかしいんじゃないですかと言っているんです。

■櫻井充参議院議員(民主党)
http://www.dr-sakurai.jp/
ドクター桜井の日本診療
http://blog.mag2.com/m/log/0000041719

 
これが政府の答弁かと思うしかないぐらい、議論に応じない首相の答弁にはまったく呆れます。国権の最高機関の議論をなんだと思っているのか。答弁ズラし。はぐらかし。おとぼけごまかしなんでもあり。
 
 
櫻井議員が示していた議論のソースは中村てつじ衆議院議員のサイトで証拠のデータが公開されています。
 

■中村てつじ衆議院議員(民主党)
2005-0622-2
「国会からの手紙」第220号:郵政民営化担当大臣(竹中平蔵)の疑惑
http://tetsu-chan.com/tegami/220_gou.htm
2005-0623
「国会からの手紙」第221号:郵政 >> 小泉内閣支持層はIQが低い?
http://tetsu-chan.com/tegami/221_gou.htm

◇ IQが低い?
昨日のメルマガで、「郵政民営化ってそうだったんだ通信」という折込チラシの不正契約疑惑をお知らせいたしました。
そのチラシの企画案の2ページ目を見ていただきたいのです。
(昨日サイトに載せた資料では、p.7です。)
http://www.tetsu-chan.com/05-0622yuusei_rijikai2.pdf
「B層にフォーカスした、徹底したラーニングプロモーションが必要だと考える。」とあります。
表では、IQ(知能指数)が縦軸にとられています。
B層は、IQが低い層に位置づけられています。

B「小泉内閣支持基盤
  • 主婦層&子供を中心
  • シルバー層
  具体的なことはわからないが、   小泉総理のキャラクターを支持する層   内閣閣僚を支持する層」

とあります。
全く失礼な話です。この企画は、この層をターゲットにして1500万部の折込チラシを配布するというものです。こんな企画を代替性のない優れた企画だと随意契約で採用してしまう今の政府の神経を、私は理解できません。
今日、私は特別委員会の質疑でこの件を取り上げましたが、竹中大臣の答弁は要領を得ないものでした。
国民の皆様にこの件だけでも伝われば、今の政府のおかしさを実感していただけると思います。だけど、報道ではなかなか扱われないんだなぁ。

郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案) 有限会社スリード(PDF)
http://tetsu-chan.com/05-0622yuusei_rijikai2.pdf

 
本日の教訓。「どんなに危険でも目だけは閉じるな」。
 
関連リンク
 

有限会社スリード
http://slied.jp/
http://slied.jp/profile.html
東京都千代田区神田神保町1−22 NTビル6F
03-5280-2710
代表取締役社長 谷部貢
代表プロフィール
博報堂ソーシャルマーケティング部在籍時、情報戦略スキームを開発
内閣府:小泉構造改革に伴う政府公報の戦略モデル提案
全労済:こくみん共済統合コミュニケーション戦略
・株式会社東ハト:企業再生コミュニケーション戦略
等におけるコミュニケーション戦略シナリオを構築。併せてその実施に関るプロデュースも担当した。

■株式会社オフィスサンサーラ
http://www.sansara.co.jp/

 
関連ログ
 

内閣府政府広報等の調達状況
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050423/p2

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四角な刺客候補
冥府魔道を行く「子連れ狼」こと元公儀介錯人拝一刀(おがみ いっとう)を殺そうと刺客をさしむけた柳生一族は、拝一刀の返り討ちで死んでしまいました。しかし拝一刀も傷つき、大五郎は…。
*2


郵政法案賛成派の末路。
彼が“最後の”犠牲者だと断言できますか?

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資料:郵政民営化世論操作戦略計画「IQの低い奴を味方につけろ」

またメディアに圧力:自民党「刺客と呼ぶな」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050829/p1

で紹介した資料、「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)」の一部を転載します。この資料は、有限会社スリード・株式会社オフィスサンサーラが作成し政府が採用したものです。
自民党がネット座談会をやっていましたが、あれもこの「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)」に添った類似企画(インターネットリアルタイムイベントの実施)であったことが、この資料から読みとれます。
 

郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)有限会社スリード、株式会社オフィスサンサーラ/表紙
郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)有限会社スリード、株式会社オフィスサンサーラ/ターゲット戦略
郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)有限会社スリード、株式会社オフィスサンサーラ/コミュニケーション戦略フォーカスポイント
郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)有限会社スリード、株式会社オフィスサンサーラ/コミュニケーション戦略フォーカスポイント
郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)有限会社スリード、株式会社オフィスサンサーラ/メディア戦略② 生活者密着型メディアからの持続的発信とコミュニケーションミックス
郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)有限会社スリード、株式会社オフィスサンサーラ/コンテンツ戦略 生活者の理解と共感を加速するために

資料のソースはこれです。
 

郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案) 有限会社スリード(PDF)
http://tetsu-chan.com/05-0622yuusei_rijikai2.pdf

 
資料の中で郵政民営化メディア戦略にとって有用と判断された人物・企業は下記の通り。
 

竹中平蔵 郵政民営化担当大臣
佐藤雅彦 
伊藤元重 東大教授
竹内弘高 一橋大学院国際企業戦略研究科長・教授
テリー伊藤
大橋賢洋 元宝島編集長・オフィスサンサーラ代表
WebExコミュニケーションズ・ジャパン株式会社

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