Nec possum tecum vivere, nec sine te.

(※本記事はLiar Softの「紫影のソナーニル〜What a beautiful memories〜」の応援キャンペーン企画として執筆した二次創作です)



 それは、あるいは、物語には存在しない時間に交わされた会話。


 ありとあらゆる物語は、パズルを模倣せざるを得ない。物語ると云う表現の特性上俯瞰の全容を一度に提示することは出来ないからだ。
 書き手はピースを撒き散らす。端から順に――あるいは順番を無視し、勝手気ままを装って。全ての枠にピースが収まるとは限らない。間違った場所にピースを嵌め込んでしまったとして、それに気付くことも難しい。
 だから、物語られた物語は、各々人の中で、別個の絵として結実する。

 それは、あるいは、物語には存在しない時間に交わされた会話のように。

 どこで交わされた会話なのかは分からない。
 会話の確かさについても保証の限りではない。
 そして――これが肝心なことだが――彼と彼女もあなた方がよく知る彼らではない。

 これは、わたしが受け取った物語の囁き。
 未だ、その言葉遣いさえ定かではない彼らがわたしの中で紡いだ一ピース。


――ブリキ男君は心だったね?でも、ない方が幸せだよ。心なんてものがあるから辛い思いをするんだ
           ――ヴィクター・フレミング監督作/「オズの魔法使い」より抜粋