メタ僕

自分でないだれかは自分の知らないことを知っている。僕とはちがうふうに考える。べつなように感じる。互換不可能なフィルタと回路で個性を自衛する。ときに鎖で縛り封じる。緩まれば溶けてしまうから。緩めて溶かしてしまえ。
僕があなたを知るにつれて。僕があなたを認めるほどに。僕にまつわる世界の正解なるものは姿を薄めてゆく。溶けちゃう。溶けちゃうの。粗いフィルタに、短絡した回路。あなたたちは瞬く間に溶け込み、いともたやすく僕を組み込む。
限界には至らない。メタ僕に埋め込まれた感知器が鳴り渡る。世界にいる僕は、僕のいる世界へと転換する。幾重にも編み固められた外壁はすべてを拒み何をも洩らさない。複雑を極め論理を冒涜した迷路は入り口すら定かでない。そして鎖。
信じつづけるのは難しいから。裏切りつづければよい。連続か断続かのちがい。そこに僕は実質を認める。