KJ法は46656人の集合知をつくれるか?
「KJ法」で名高い川喜多二郎さん(2009年没)の、いまや古典ともいえましょう『発想法』を拝読し、僕は驚きました。KJ法がまさに集合知(集団的知性)をつくる技法にみえたからです。
- 作者: 川喜田二郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1967/06/26
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野外科学では現場における問題発見と仮説の発想が求められる
川喜多さんはご自身の取り組んだ地理学や文化人類学を野外科学(現場の科学)とよんでいます。しかし実験科学との違いがよく理解されておらず、野外科学は軽視されていました。
実験科学では「仮説の検証」が重視されます。しかし野外科学では、そこに至るまでの「問題提起」と「仮説の採択」が重要な仕事です。だから野外科学には発想法が必要なのです。
関係のある事柄をすべて集める探検の姿勢が新しい発想につながる
「何がそもそもの問題か」は意外とあやふやなことが多いです。そこでまずは自分が問題に感じていること、そしてそれに関わるあらゆる事柄を、自分のあたまで考えます。川喜多さんはこれを「内部探検」とよんでいます。
問題が明らかになって、やっと外部の情報に目を向けます。ここでも関係のありそうな情報をすべて集める姿勢が重要です。これが「外部探検」です。
発想と発想は干渉し合って新しい発想が積み重ねられていく
探検によって集めた事柄をどうやって総合していくかはKJ法の本質ですが、ここではよくできた図(p.107)を引用してほのめかす程度で許してださい。
一番下の●が収集された個々のデータです。その上の○は、●から生まれる「これはこういう意味なんじゃないか」という「ヒント」です。ヒントとヒントを関係づけることで別のヒントが生まれます。これを繰り返すことで「怪しいヒント」は却下され、「確からしいヒント」は残り、次第に「いろいろなヒントのつながり」がみえてきます。そして「大きなヒント」が「仮説」になります。
KJ法は46656人の集合知をつくれるか?
はっとしました。
川喜多二郎『発想法』p.162-163衆知を集めるときも、百人、千人の意見をいっぺんに統合できるとするのは、たいへんな思いちがいである。一次的な小集団をまずつくるべきなのだ。(中略)そのぐらいの少人数の知恵を組み立て、そこから生まれた知恵を持ちよって、またもう一度上位で数チームの知恵をさらに組み立てるという形である。一万であろうが、十万、百万であろうが、筋道としてはこうして組み立てるべきものだということになる。
そして川喜多さんは、6人の小集団たちが6段階まで討論すれば46656人の知恵を組み立てられると試算します。知の築城を思わせるような雄大さに打たれました。
しかし、これは本当に現実的でしょうか。一つは「最後までやり遂げられるか」という実現性において。もう一つは「新しい知を得られるか」という創造性において。
この場で答えを出すことはできませんが、問題のいとぐちを考えてみます。
- 階層化のせいで進行が遅れるのではないか
- 部分の遅れ→全体の遅れ
- ドラッカーが階層型組織を批判していたのを思い出しながら
- 何段階目かの時点で発想が硬直化するのではないか
- いくつもの段階をのぼっていく代表者に負担が大きすぎるのではないか
- 46656人KJ法には6人の「フルタイム」参加者がいるだろう
- 「脱落者」が出るはず(ウェブ参加ならたぶんなおさら)。どうリカバーするか
- いくつかのプロセスは機械的集約によって代替できるのではないか
荒っぽい問いではありますが、こんなところから46656人KJ法の集合知としての可能性を考えていこうかなと思っています。
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