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2017-12-30

[]2017年に読んだ本のおすすめ 12:45 2017年に読んだ本のおすすめ - 明日はきっと。 を含むブックマーク 2017年に読んだ本のおすすめ - 明日はきっと。 のブックマークコメント

というわけで、年末恒例の「今年読んだ本の中でおすすめのものを紹介する」記事でございます。

2017年は、一昨日更新した『アルスラーン戦記』や『ハヤテのごとく!』をはじめ、多くの長期連載やシリーズが終わったこともあり、寂寥感のある年末だったなあという印象を禁じ得ません。

香月美夜『本好きの下克上』

今年の『このラノベがすごい!』のソフトカバー部門で堂々1位を飾った本作。あたしも今年になって知り、値段とシリーズの冊数に少しだけ尻込みしつつ、10月頃から読み始めたら止まらずに今第3部の1巻まで来たところです。

主人公の「本さえあればいい」という思考には大変共感するところですが、異世界に転生し、本のない世界で本を作ろうとするバイタリティと、現代日本で本を読むことで得た知識をそのために惜しげもなく注ぐあたりはとても真似できない…。そういった主人公・マインの行動力と、幼女大人と丁々発止のやりとりを繰り広げるといった描写が、何とも言えぬ本書の魅力だと思います。

その厚さと分量に圧倒されるかもしれませんが、本が好きな人にはたまらないと思いますので、ぜひ!

あたしも早く、新刊(第4部1巻)まで追いつきたいところです…(あと5冊?)

高田大介『図書館魔女

図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)

2013年メフィスト賞受賞作です。昨年文庫化され、続編『烏の伝言』も今年文庫になったのでまとめて購入しました。

上橋菜穂子の『守り人シリーズ』などのファンタジー作品にも通底するものがあると思いますが、本作も「きっちり構築された独自の世界」の中で、人々を描くということが高いレベルでなされていることに感服しました。

そしてその中で、マツリカ様の「話せない」設定とそれによる「手話」という要素が、作品をさらに強力にしているように思います。さらに、キリヒトの隠された設定の明かし方やその後の様々、未来を思うエンディングなど、先々を気にさせつつ見事なまでに書き切っているところが本当にツボでした。

メフィスト賞受賞作は好みが割れがちな面がありますが、好みにあたると本当におもしろくて止まらないことを久しぶりに実感させてもらいました。

米澤穂信米澤穂信古典部

ムック本ですが、新作の短編が良作過ぎたので…。

10月に発売されてからなかなか手に入らなかったのですが、それもそのはず、12月で4版…!なるほどなかなか見かけないわけです。

内容はインタビューや対談、交流のある方からの質問と新作短編となりますが、新作短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎殺人」がもうすごいよかったんですよ。『ふたりの距離の概算』で登場した後輩・大日向さんが話の端緒になっているあたり、もう時系列的にどこの話なんだみたいなところはありますが、それはそれとして大日向さんの持ち込んだ1冊の文集から奉太郎が徐々に追い詰められていく様子、そしてなぜ追い詰められているのか?といった謎にドキドキしているところに、古典部の誰かが謎を解いていくというその一連が最高に楽しかったです。

そして、ちゃんと完結まで書いてくれるという活字を見てとてもうれしくなりました。楽しみにしています。マジで。

井上真偽『探偵が早すぎる』

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

名探偵事件が起こらなければ活躍できないもの」というのがミステリの基本だと思っていましたが、その基本を覆す『事件が起こる前にトリックを看破し、未遂犯人を特定してしまう』という作品が本作です。

まるで本格にケンカを売っているかのような設定ですが、ミステリだものありだよね、という。そして、父親の死により莫大な遺産相続をした女子高生が、その遺産を狙う一族に殺されそうになる———という横溝的冒頭がミステリっぽいなーと思った後に、怒濤のような「事件発生前の解決」が起こるという展開に目が回りそうになります。だが、それがいい

市川哲也名探偵証明

名探偵の証明 (創元推理文庫)

名探偵の証明 (創元推理文庫)

2013年鮎川哲也賞受賞作の文庫化作品ですが、こちらも既存本格ミステリの骨格に挑戦するかのような内容となっています。

30年前に一世を風靡した名探偵・屋敷啓次郎が、現代になって現代の名探偵蜜柑花子と対決するという骨格の中に、「名探偵とは?」とか、「探偵として生きるとはどういうことか?」といった新本格的な疑問を呈しつつ、結末へ収斂していく様は圧巻の一言です。

単純にどんでん返しものとしてもすばらしいので、ミステリ好きに読んでほしい1冊です。

栗山ミヅキ保安官エヴァンスの嘘

ハヤテのごとく!』最終回の掲載号から始まったハードボイルドギャグマンガたる本作ですが、個人的な今年のNo1であります。

西部最強のガンマンである保安官エヴァンスは、実はモテたくて保安官になったんだよ…!というホットなギャグのスタートから、お互いまんざらでもない関係の女賞金稼ぎオークレイと繰り広げるすれ違いラブコメは、ついつい読み進めてそして笑ってしまうこと間違いなしです。

ハヤテ終了後の、あたしがサンデーを買う唯一のモチベーションと言っても過言ではない…!

ほんと、最近のオークレイがマジでかわいくて困ります。早くくっつけばいいのに。

おわりに

以上でした。

今年もなかなか読めず、活字欲求小説家になろうで晴らすような感じになり、結構最近のなろうトレンドに詳しくなった1年でした。婚約破棄から始まる系のトレンド、すごく楽しいです。

冒頭でも書きましたが、今年は本当に「読んでいたものが終わる」年で、とても寂しい一方、来年は早々に「カードキャプターさくら クリアカード編」のアニメが始まるなど、今が何年かよくわからないけど楽しみ!みたいな話題も多いので、また新たな出会いを求めて本屋さんをうろうろしたいと思います。

それでは皆さん、よいお年を!

参考 過去の年末おすすめ本シリーズ

2017-12-28

[]31年の時を経て迎えた万感の結末 22:29 31年の時を経て迎えた万感の結末 - 明日はきっと。 を含むブックマーク 31年の時を経て迎えた万感の結末 - 明日はきっと。 のブックマークコメント

アルスラーン戦記が、完結しました。

天涯無限 アルスラーン戦記 16 (カッパ・ノベルス)

天涯無限 アルスラーン戦記 16 (カッパ・ノベルス)

正直言って、告知が出たときには本当に完結のことが信じられなかったし、アルスラーン戦記の結末を見届けることができるとは思っていませんでした。

ともあれまずは、途中の長い長い中断や版元の変更などの多くの困難を乗り越え、アルスラーン戦記が無事に完結・刊行されたことに、田中芳樹先生への感謝を申し上げるとともに、らいとすたっふの方々や出版関係者の方々へお祝い申し上げます。

さて、あたしは、昨年発行された15巻でのとある主要キャラの死に対して、その必然性の薄さ(死亡フラグの立て方)への怒りと戸惑いをまとめたエントリを書きました

それからまた時間が経っても、15巻に対してどうしてもポジティブな気持ちを持てていませんでした。

そういったこれまでも踏まえて、完結巻である16巻の感想を書いていきたいと思います。

ネタバレですので、くれぐれもご注意ください。

予想できた展開と予想できなかった死に様

第2部(8巻以降)以降、アルスラーンが殿下から陛下になり国内の安定がもたらされたのとあわせ、蛇王ザッハーグの復活を企む魔術師たちの蠢動が描かれるようになりました。そして、12巻でザッハーグが復活し、そこから先のアルスラーンはパルス周辺国との戦いと、蛇王との戦いの2つが描かれるようになり、それとあわせるようにしてアルスラーンの大きな死亡フラグ形成されていったように思います。

すなわち、アルスラーンは自らの命と引き替えに蛇王を再び封印し、パルスに平和が訪れる』という、作中で再三語られた英雄王カイ・ホスローの物語をなぞるという展開です。

作者が「皆殺しの田中」であることを考慮しなくとも、アルスラーン戦記を読み進めると、その結末にはほぼ間違いなく「アルスラーンが死ぬ」ということが待っているであろう、と感じさせられる表現がたくさんあります。特にも15巻で惜しまれつつ天に召されたナルサスは、アルスラーンが「王とは」とか「民のため」といった言葉を問答の中で発するたびに、アルスラーンの行く末を悟っているかのようでありました。その上、作者が銀英伝ラインハルトヤンもしっかり殺しているという前例もあるので、アルスラーンが死んで終わるというのは想定されるところでありました。

迎えた最終巻。アンドラゴラス3世という偉丈夫を依り代にしたザッハーグが、十六翼将を次々と屠ってゆくという田中芳樹先生の田中芳樹たる所以を見せつけられる展開、そしてついに相対するアルスラーン———。宝剣ルクナバードが手にあったとはいえ、アルスラーンにとって圧倒的不利と思われた一騎打ちは、相討ちという結末を迎えました。そう、まるで第1部の結末—アンドラゴラス3世をイノケンティス7世が道連れに墜落死する—を思い起こさせる結末を。

アルスラーンは決して弱くはない、というのは作中で常々表現されていますが、やはり十六翼将の諸氏の武勇が凄まじく、アルスラーン本人の強さはどうしてもかすみがちでした。そもそもアルスラーンが戦う=(基本的に)本陣侵入されているなので、さすがにそんな機会が何度あっても困るわけですが。とはいえ、それでもザッハーグに憑依されているとはいえ、アンドラゴラス3世から相討ちまで持って行けるほどの力がアルスラーンにあったとは…というのは、あたしにとって驚きでした。何しろ、ルクナバードがあっても勝てないと踏んでいたからこその「命をもって封印する」という結末予想だったので。それが、このような一騎打ちの上で相討ちという終わりであったことに、素直な驚きと感動がありました。

最強が敗れる瞬間に宿った魂

アルスラーン戦記における最強のキャラクターは、ダリューンであります。このことは作中でも幾度となく明言されておりますし、表現されています。一時仕えたアンドラゴラス3世に対しては様々な思いがあったような描写もありましたが、もはやアンドラゴラスを斬ることへの躊躇いもないだろうし、剛健なことでも名をはせたアンドラゴラスに対しても負けなかったであろうと思います。

しかし、ダリューンアンドラゴラス3世に身をやつしたザッハーグには敵わなかったのです。ダリューンが戦った中で最強の敵であった(=ヒルメスは最強の敵ではない)という地の文がありますが、その最強の敵と互角に渡り合うも、敵わず地に斃れました。

ダリューンが、敗れる———

読者としても、さすがに目の前が真っ白です。ダリューンが死んでしまってどうしようです。銀英伝で言えば、ダリューンナルサスはミッターマイヤーとロイエンタールです。そう思っていたので、ナルサスが死んでしまったところから始まる16巻は、「ダリューンが生き残るフラグじゃねーの」的な気持ちが皆無ではありませんでした。そんなわけで、ダリューンが死んじゃった、ということがすぐには心に落ちてきません。だって、ミッターマイヤーいなくなったらどう考えても帝国軍瓦解するじゃないですか。簡単には死ねないでしょダリューン

しかし、結果としてアルスラーンの前にはダリューンの亡骸と、最強の敵ザッハーグがいるという状況ができました。そこでルクナバードを抜き一騎打ちに臨む、すなわち最初から最後まで共にいたダリューンに報いる瞬間があったことが、先に書いた「予想できなかった死に様」を作り上げる最高のピースとなったことは疑いようがありません。

最強のキャラクターだからこそ、その散り様が絵になり、そして残る。そのことを強く感じました。

最後に—完結によせて

あたしにとっての田中芳樹作品は、「創竜伝」が入口でした。中学生の終わり頃のことです。そのほかのシリーズには当時なかなか手が伸びなかったのですが、大学生になって他のシリーズも読もうと決めました。そして、最初に手を延ばしたのが「アルスラーン戦記」だったのです。

初めて18切符で移動することにした夏休み、乗り換えをミスって東京駅で野宿することになり、八重洲口の外で角川文庫版のアルスラーン戦記をむさぼるように読んでいました。このとき、アルスラーンは10巻まで刊行されていました。7年の沈黙を破った頃ですね。

その後、「銀河英雄伝説」が徳間デュアル文庫再版され、それを読みながらアルスラーンの新刊を待っていました。当然、完結済み作品の再版だった銀英伝のほうが先に読み終わりまして、アルスラーンはまだかまだかと思っているうちに「薬師寺涼子シリーズ」が立ち上がり、もう無理じゃん…という気持ちになりました。そして就職して1年後に、まさかのカッパ・ノベルスで待望の11巻を迎えました。

それから12年。アルスラーン戦記が完結したこと、その終わりを読めたことが本当にうれしくてなりません。15巻こそ、死亡フラグの立て方の性急さに憤りを覚えましたが、16巻で怒濤のように巻き起こる死の行進は「皆殺しの田中」の本領発揮とも言え、大変楽しく読むことができました。すべてが終わり、ラストシーンを読み終わった後の、「アルスラーン戦記は完結したんだ」という気持ちは、何とも言いがたい気持ちでした。

もう、アルスラーンの活躍を読むことはないだろう。そんな確信を抱かせるラストだったと感じています。「アルスラーンが16翼将を従えて戦う物語は終わったんだよ」という事実を明確にしつつ、未来を思わせるエンディングは、長い時間をかけて紡がれてきた物語の終わりにふさわしいエピソードであると思います。まあ、ラスト近辺のパルスはどう見ても五代十国時代中国みたいな感じですが。彼らがきっと趙匡胤みたいになっていくのでしょう。その活躍は、あたしたち読者の手の中に。

田中先生、本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

追伸

ヒルメスが死んで本当によかったです(私怨

2016-12-28

[]2016年に読んだ本のおすすめ 14:23 2016年に読んだ本のおすすめ - 明日はきっと。 を含むブックマーク 2016年に読んだ本のおすすめ - 明日はきっと。 のブックマークコメント

まさか6月に更新して以来一度も更新することなく年末を迎えるとは…(挨拶)

今年は少しは更新頻度が上げられるかも、とぽつぽつネタは準備していたものの、気温やら体調やらで結果このようなことになってしまったのでした。今月は子どもの入院や胃腸炎などでさらにてんやわんやです。皆様もお気を付けください。

さて、昨年はできませんでしたが、恒例の「2016年に読んでおもしろかった・おすすめしたい」本をご紹介したいと思います。

もし興味のあるものがありましたら、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。

「いまさら翼といわれても」米澤穂信 角川書店

いまさら翼といわれても

いまさら翼といわれても

累計205万部突破の〈古典部〉シリーズ最新作!

誰もが「大人」になるため、挑まなければいけない謎がある――『満願』『王とサーカス』の著者による、不動のベスト青春ミステリ

神山市が主催する合唱祭の本番前、ソロパートを任されている千反田えるが行方不明になってしまった。

夏休み前のえるの様子、伊原摩耶花福部里志調査証言、課題曲、ある人物がついた嘘――折木奉太郎が導き出し、ひとりで向かったえるの居場所は。そして、彼女の真意とは?(表題作)

時間は進む、わかっているはずなのに。

奉太郎、える、里志、摩耶花――〈古典部〉4人の過去と未来が明らかになる、瑞々しくもビターな全6篇。

11月末に出たばかりの<古典部>シリーズの新刊です。6年ぶり。<古典部>シリーズは文庫で購入しているあたしですが、今回は待ちきれませんでした。古典部>シリーズを読んでいる方は、文庫を待たずに早く読んだ方がいいと思います。

今作は「遠回りする雛」に続く短編集ということになりますが、どれも<古典部>シリーズらしいみずみずしさとほろ苦さがあり、珠玉の短編集と言っても過言ではないでしょう。

さて、今作に収録された作品は、現在を追うものと過去の出来事を追うものとに二分されるのではないかと思います。その中でも、摩耶花が語り部になる2作、摩耶花がこれまで奉太郎と一線を引いていた理由が明らかになる「鏡には映らない」と、摩耶花が漫研をやめた経緯が明らかになる「わたしたちの伝説の一冊」の2作品は、これまでの<古典部>シリーズの欠落を埋め、これからの<古典部>シリーズをまわす大事な物語だろうと思いました。この2作だけでも必読だと思います。

しかし、この2作や先にアニメになった「連峰は晴れているか」といった作品は、あたしの中では前座にすぎません。いままでの<古典部>シリーズの前提が、表題作「いまさら翼といわれても」によってくつがえるからです。

「いまさら翼といわれても」の最後、奉太郎がえるに語りかけたことと、明示されない結末。そして、本作のタイトル。すべてが古典部のこれからを形作る重要なかけらとなっていくに違いありません。

高校生という有限の時間を過ごす奉太郎たちですが、その残り時間もあと1年半と少しです。その中で彼らがどのような成長を遂げ、どのような道を選び取るのか、今後の展開に期待です。

あ、実写映画化?知らない知らない。そんなの知らないよう。あたしは京アニさんによる第2期を待ってます。

終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?枯野瑛 角川スニーカー文庫

ヒトは規格外の《獣》に蹂躙され、滅びた。たったひとり、数百年の眠りから覚めた青年ヴィレムを除いて。ヒトに変わって《獣》と戦うのは、死にゆく定めの少女妖精たち。青年教官と少女兵の、儚くも輝ける日々。

読書メーターで一押しになったことから、あたしの行きつけの書店が一時コーナーを作って推していた作品です。ためしに、と第1巻を買ったところ、あたしは翌日には当時の既刊をすべて揃えて、3日ほどで追いつきました。睡眠時間は失いましたが、得たものは多かったです。

本作を読んだ第一印象は、「俺TUEEE系にもパターンが増えてきたなあ」でした。今年はたまたま「空戦魔道士候補生の教官」シリーズも読み始めていたのですが、共通点として

  • 主人公は超強いけど何らかの理由でその真の力がふるえない
  • そのかわりに女の子に知識スキルを教える
  • でも女の子がピンチになったら真の力を使って助ける

といったところがあるかと思います。俺TUEEEとキャラクターの成長を同時に描くイメージなんでしょうか。非常によくできた類型で、純粋な俺TUEEE系より共感しやすかったり、入っていきやすかったりする面があるのかな?とも思いました。はやっているのでしょうか。

さて、「空戦魔道士候補生の教官」はそのまま王道展開に入りつつありますが、一方のこの「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?」は特に2巻以降、すべての巻でラストにどんでん返しが待ち構えているという構成となっております。あたしは翻弄されっぱなしでした。読みながら「マジかよ…!」と声に出してしまったこと、1度では済みません。

読者が主人公と同じように「そこを守りたくなる」。そんな描写の積み重ねがあるからこそ、各巻ラストの衝撃があり、続きが待ちきれない、そのような作品になっています。ぜひ読んでいただいて体感していただきたいところです。

続編の「終末なにしてますか?もう一度だけ会えますか?」もあわせて。

あ、あと2017年4月にアニメ化ということで、こちらも楽しみにしております。

島はぼくらと辻村深月 講談社文庫

島はぼくらと (講談社文庫)

島はぼくらと (講談社文庫)

母と祖母の女三代で暮らす、伸びやかな少女、朱里。

美人で気が強く、どこか醒めた網元の一人娘、衣花。

父のロハスに巻き込まれ、東京から連れてこられた源樹。

熱心な演劇部員なのに、思うように練習に出られない新。

島に高校がないため、4人はフェリー本土に通う。

「幻の脚本」の謎、未婚の母の涙、Iターン青年の後悔、

島を背負う大人たちの覚悟、そして、自らの淡い恋心。

故郷を巣立つ前に知った大切なこと――すべてが詰まった傑作書き下ろし長編。

ちょっと暗めのテイストが多めだった辻村作品ですが、本作は瀬戸内海の島を舞台に、そこで暮らす高校生4人を明るく描いたというところがあって、心地よく読み進めることができました。

明るいとは言ってもそこは辻村先生、地方の島という現実にある問題にも触れつつ、積極的なIターンの受け入れといったポジティブ施策もふまえながら、そこで暮らしていくことの意味を問う良作です。

主人公たちの人間関係とそれをとりまく環境がうまくマッチしていて、おすすめです。

「ここはボツコニアン」宮部みゆき 集英社文庫

ここはボツコニアン 1 (集英社文庫)

ここはボツコニアン 1 (集英社文庫)

"ボツネタ" が集まってできた、できそこないの世界〈ボツコニアン〉。

そこをより良い世界に創り変えるため、「長靴の戦士」として選ばれた少年ピノと少女ピピ。

二人は別々に育てられたが、二人そろうと、強大な力を発揮する双極の双子。

植木鉢の花の姿をした「世界のトリセツ」と共に二人は、前人未踏・驚天動地・抱腹絶倒の冒険の旅に出る! 

そして、さまざまな人やモンスターとの出会いの中で、二人は成長し、武器や魔法を手に入れていく・・・。

宮部みゆきの新境地、RPGファンタジー!!

宮部みゆき先生のファンタジーといえば、「ブレイブ・ストーリー」や「英雄の書」など、厳しい現実に直面した少年・少女が異世界で戦い成長するという、骨太のものが多い印象です。

しかしこの「ここはボツコニアン」、作者の言葉がそのまま地の文にあらわれ、作者と登場人物がそのまま会話することも珍しくない、メタにメタを重ねたギャグファンタジーだったのです…!

なにしろ、舞台となる世界は「現実世界でボツになったネタが集まってできた世界」。最初のダンジョンがとてもクリアできそうにないからボツ、といったレベルの無理ゲー感ただようネタがあれこれ噴出する中で、それでも宮部らしく、ピノとピピの二人が旅立ち、成長する物語が展開されます。特に4巻から5巻にかけて、メタ発言の連続の中で伏線がしっかり回収されていく様は必見です。

ゲームをしたことがあれば必ず思うであろうことがちりばめられた本作、特にRPG好き(または三国無双好きまたはバイオハザード好き)におすすめです。

「貴族探偵対女探偵」麻耶雄嵩 集英社文庫

貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

「貴族探偵」を名乗る謎の男が活躍する、本格ミステリーシリーズ第2弾! 今回は新米女探偵・高徳愛香が、すべてにおいて型破りな「貴族探偵」と対決! 期待を裏切らない傑作トリックの5編収録。

「貴族探偵」は2014年のおすすめ本で紹介しましたが、その続編である本作もすごかった…!

同じく2014年におすすめとして挙げた福家警部補シリーズの文庫最新刊も良かったのですが、あちらが正統派続編だとすれば、こちらは消える魔球です。

貴族探偵の存在を説明すること自体がネタバレなので細かく紹介しづらいのですが、今作ではその貴族探偵に挑む新米探偵・高徳愛香が登場し、彼女が貴族探偵に対して敵愾心を燃やしていく様を愛でるという新しい楽しみ方が準備されています。

最後に収録された「なほあまりある」を読み終わると、愛香の今後がもう気になってしょうがなくなりますが、彼女にはぜひともがんばっていただきたい。

「時限病棟」知念実希人 実業之日本社文庫

時限病棟 (実業之日本社文庫)

時限病棟 (実業之日本社文庫)

目覚めると、彼女は病院のベッドで点滴を受けていた。

なぜこんな場所にいるのか? 監禁された男女5人が、拉致された理由を探る……。

ピエロからのミッション、手術室の男、ふたつの死の謎、事件に迫る刑事。

タイムリミットは6時間。謎の死の真相を掴み、廃病院から脱出できるのか!?

大ヒット作『仮面病棟』を凌ぐスリルとサスペンス

圧倒的なスピード感。衝撃の結末とは――。

医療ミステリーの超傑作、文庫書き下ろし

累計60万部突破の「病棟シリーズ」最新刊

昨年書けなかったおすすめ本のトップに、作者・知念実希人先生の「天久鷹央の推理カルテ」シリーズが入る予定でした。天久鷹央シリーズにハマって以来、好きで追っかけている作家さんです。

さて、本作「時限病棟」は、前作「仮面病棟」をふまえた作りになっていますが、どちらから読んでも楽しめます。背景には「仮面病棟」があるので、どちらかといえば前作から読んでいただく方がよいと思いますが。

この「時限病棟」、何がすごいかというと、前作「仮面病棟」のすごさが医療ものならではの現実への切り込み+ミステリ的大どんでん返しにあるならば、こちらは前作にもある医療の現実に脱出ゲーム的スリル感が味付けとして効果的に使われているところにあると思います。

なぜ彼らは監禁され、ピエロに示されたミッションを解いていかなければならないのか―――。それが明らかにされた時、思わずうなってしまうこと間違いなしの傑作です。

ふれるときこえる本名ワコウ 少年サンデーコミックス

今年のマンガでは、この「ふれるときこえる」がイチオシでした。まさか終わってしまうとは…と思う反面、4巻できれいにまとまっているので非常におすすめしやすという面もあり、複雑です。

さておき、本作は主人公・噪が、人に触れると心の声が聞こえる能力を持った少女・さとりに出会い、さとりに好意を持たれた結果、噪自身も人に触ることで心の声が聞こえるようになってしまう―――それを背景に展開されるプチ三角関係ラブコメが見所の作品です。

本名先生がサンデーで以前連載していた前作「ノゾ×キミ」は、桂先生の再臨とも思えるおしりとパンティラインがふんだんに描かれるラブコメでした。しかし、本作「ふれるときこえる」は、その要素は残しつつも控えめに、「心の声が聞こえる」という設定を活かした、キャラクター同士の関係性に重点をおいた良質なラブコメに仕上がっています。

「触れる」ことの喜びが、「聞こえる」ことで怖くなる。その怖さを乗り越えて、噪やさとりがどのような結末をつかみとるのか、ぜひその目で確かめていただけたらと思います。

あまり言いたくはありませんが、「ニセコイ」がああだっただけに、噪という主人公にあたしは救われました。

おわりに

今年は以上、7作品でした。

ふれるときこえる」については、エントリを個別に立てようと思っていたものの、12月に我が家を襲った健康トラブルもあって結局書けなかったというところです。

2016年もたくさんのおもしろい本に出会えて、とても幸せでした。

冒頭にも書きましたが、この年末年始で時間があるよー、という方に参考にしていただけたらとてもうれしいです。

2017年もなかなか更新できないかもしれないですが、機会をみてちらほら更新できたらと思っております。

引き続き「明日はきっと。」をどうぞよろしくお願いいたします。

2016-05-25

[]キャラクターの生き様と死に様、そしてその受容の軌跡 00:42 キャラクターの生き様と死に様、そしてその受容の軌跡 - 明日はきっと。 を含むブックマーク キャラクターの生き様と死に様、そしてその受容の軌跡 - 明日はきっと。 のブックマークコメント

※冒頭の時点でアニメ以降の部分のネタバレがすでに含まれる上、「続きを読む」以降は最新刊ネタバレになります。また、話の展開上「銀河英雄伝説」のネタバレも含まれますので、ご注意ください。※

田中芳樹の中世ペルシャ風ファンタジーアルスラーン戦記の新刊がこのほど発売になりました。2年ぶりの新刊、15巻です。

このアルスラーン戦記は、当初は全14巻を予定しているとされていたものの、その後全16巻予定に変更になったとアナウンスされ今に至ります。すなわち、この15巻は、最終巻の1つ前―――結末を目前に大波乱が起きるであろう巻です。そのことは、読む前からわかりきっていたことです。

作中において、この物語の主人公・アルスラーンを支える戦士たちは、後世「アルスラーンの十六翼将」と呼ばれたと言います*1アルスラーンの治世を支えた戦士は16人いることが明らかにされていますが、7巻時点で15人揃っていたのに16人になったのは13巻になってからでした*2。そして、13巻のうちに1人減り、14巻で3人減りました。

この作品を書いている作者は誰でしょうか?―――言うまでもなく、田中芳樹です。「銀河英雄伝説」で主役級の多くを葬った俗称「皆殺しの田中」であります。15巻で、十六翼将の誰かが死んでしまうことは読む前からわかっていたことであり、それが、重要な役割を背負ってきた人物であろうことも覚悟の上であたしは読み始めました。同じような心持ちであった方も多かったことでしょう。

まさか、こんなことになるとは。

あたしは未だに、15巻の結末から立ち直ることができていません。

というわけで、久々の更新は、アルスラーン戦記15「戦旗不倒」から見るキャラクターの生き様と死に様の話です。

冒頭にも書きましたが、ネタバレを多数含みますので、既読の方かネタバレ上等の方のみ続きをお読みいただきたく。あと、銀英伝ネタバレも含むよ!よろしくね!











これだけ空白開けたらいいかな?いくよ!

ナルサスとアルフリード、2人の関係の変容とその終わりに待ち構えていたもの

ナルサス。彼は、その知謀から一時はパルスの先王・アンドラゴラス3世に取り立てられるものの、いろいろあって追い出され、隠居し、第1巻のアトロパネ会戦で命かながら逃げ延びたアルスラーンダリューンを受け入れたことをきっかけにアルスラーンの麾下に入った智将です。

アルスラーンの戦略の師であり、軍師としてとてつもなく有能であり、様々な戦略・謀略を駆使してアルスラーンの戦いを補佐してきた欠かすことのできない人物です。そうでありながら、下手な絵を描くことを好み、アルスラーンの戴冠後は宮廷画家であることにこだわって生きてきました。

アルフリード。彼女はゾット族の族長の娘として登場し、自分を救ってくれたナルサスに恋し、そのままナルサスについてアルスラーンの臣下となりました。アルスラーンナルサスと出会ってから(作中で)5年、なかなか自分に振り向いてくれないナルサスを想い続けながら、アルスラーンの命により様々な戦いや巡検の場に身を投じてきました。

ナルサスは、国が安定するまで結婚なぞ考えられないとアルフリードに宣言した、といいます。そしてアルフリードはそれを受け入れつつ、引き続きモーションをかけながら、一定の距離を保ってきました。

それが15巻において、大きく変わりました。

ナルサスがアルフリードを自分の家に泊めた―――。意味することは、ただひとつです。何がきっかけかはさっぱりわからないけれどナルサスがアルフリードを妻とすることを決め、そして事に及んだのです。

これ以上ない関係の変化ですが、これが15巻の終わりが見えてきた頃、ミスル方面への出陣の直前と思われる時期。そして15巻はパルスの描写のたびにアルフリードがフューチャーされることが多い―――。嫌な予感しかしません。

そして、出陣後、ミスルとの戦いを前に、「念のため」としてナルサスが後方へ寡兵を率いて下がりました。アルフリードは当然のように、それに付き従います。

その結果、待っていたのが、幾度も国盗りに失敗し、けれどもなぜか死なせてもらえらない、たぶん作中においてダリューン以外には一騎打ちで勝てないであろうヒルメスとの遭遇戦であり、ナルサスの敗北(=死)とアルフリードの死でありました。

正直言って、受け入れがたい。

15巻冒頭にも言及がありますが、ナルサスがあってこその「不敗のパルス軍」であること。そして、ナルサスダリューンの悪口の応酬や、ナルサスが自分の弟子たるアルスラーンやエラムにやりこめられたり、やりこめられるように誘導したりするその様が、アルスラーン戦記という作品のもつ1つの魅力であろうと思ってきました。そのナルサスが、よりにもよってヒルメスに負けて、死ぬ―――。

しかも、5年の長きにわたって積み重ねてきた想いを成就させたばかりのアルフリードを道連れに、です。まあ、嫁がせてくれるまでの間を楽しんでいるようだとまで書かれたアルフリードではありますが、当然想いの成就は彼女を幸福の頂点に押し上げました。その直後に、その想い人と共に殺す―――。

あまりの受け入れがたさに、思考が止まりました。ナルサスが、アルフリードが、死んでしまったことが信じられない。しかし、15巻の結びがその事実を厳然と読者に突きつけてきます。

パルス歴三二五年、十二月二十日。

これ以後、パルス国王アルスラーンは、王太子時代からはじめて、宮廷画家ナルサスなしに戦にのぞむことになる。(P221)

そう、もう、ナルサスはいない―――。

とはいえ、ナルサスを殺すには今しかなかった

田中芳樹といえば、銀河英雄伝説において、ラインハルトの相棒であったキルヒアイスをあっさり2巻で殺し、自由惑星同盟最後の砦として常にラインハルトに立ち向かったヤン・ウェンリーすら8巻で殺した御方です。当然、アルスラーン戦記においてもナルサスが死ぬこともあり得る話でした。そこにあたし自身の目が向いていなかっただけです。

そして、銀英伝を思い返したときに、ナルサスを殺すにはこのタイミングしかないのだと思い知らされました。

銀英伝において、ヤンの死後、ヤン艦隊を率いたのは誰だったでしょうか。―――ヤンに養育され、ヤンの後継者と目され、ヤンに育てられてきたユリアン・ミンツでした。ユリアンは、ヤンの死後、戦いを前に必ずヤンが自らに語った言葉を思い出し、それを道標にその戦いの戦術を見いだして、勝利に近い結果を得ました。ま、最後の戦いは、ヤンにはできない白兵戦に自ら赴くというものでしたが。

そこには、ヤンという絶対的柱を欠いた後の、ヤンを喪った者たちがいかに立ち直り、そしていかに立ち上がるかが描かれていました。

それを思い返したとき、あたしはナルサスにはエラムが、そしてアルスラーンがいるということに思い至りました。

ナルサス亡き後、ナルサスの言葉を、思想を継ぎ、それを道標にナルサスを越える思考と戦いをする物語がアルスラーン戦記には必要なのだと。

そして、それを描くためには、ナルサスの死をこれ以上先延ばしにはできないのだと。

ソードアート・オンラインの作者・川原礫は、7巻「マザーズ・ロザリオ」の後書きで、小説家の知己を得て相談に乗ってもらったことを告白しています。

貴重なご教唆をたくさん頂戴して今でも感謝しているのですが、中でも最も強く印象に残っているのが、「たとえ小説でも、人間の不幸を書く時は、それをなぜ書く必要があるのか、よくよく考え抜かなければならない。」というひと言です。

私には、<<物語の都合を最優先して、物事の蓋然性を軽んじる>>というクセがたくさんあります(ご都合主義とも言いますが…)。

まあ、アルスラーン戦記は戦記ファンタジーですので、不幸というか、死というものが相対的に現代物より軽いことは言うまでもありませんが、しかしナルサスの死は、それがなぜ描かれなければならないのかという点において明らかであると考えます。

主人公たるアルスラーンが新たな成長を迎えるために、パルス最高の頭脳を失うことは必然であった、と。

一方で、アルフリードはナルサスへの愛に殉じたと言えますが、そもそもナルサスがこのタイミングでアルフリードを娶ることを決めたこと自体が描写もなく不自然さがあるためか、ナルサス以上にその死を受け入れがたい気持ちをぬぐいきれません。

言うなれば、「ナルサスが死ぬから希望がかなって(まだ正式に式は挙げてないけど)妻になって、妻になったからこそ性格的にこの場で死なざるを得なかった」と思える理不尽さがそこにはあります。

しかし、アルフリードがナルサスの死の現場にいる以上、ナルサスの言うとおりにアルフリードがその場から逃げるとは思えず、これまで15巻という冊数によって積み上げられてきたその性格によって、彼女もヒルメスの手にかかるという死に様を選んだとも言えます。

15巻「戦旗不倒」が示したもの

ナルサスの死によって、この後のアルスラーンが迎える困難は想像を超えるものとなることは明白です。

しかし、15巻におけるナルサスの死が読者に示したものは、実はパルス軍において真に替えの効かないものは頭脳たるナルサスではない、ということでもあります。

―――ダリューン

ナルサスの知謀は、エラムやアルスラーン自身がつとめることができる。しかし、大将軍ダリューンだけは、ダリューンだけは誰にも代えがたい。そのことは、ナルサスがすでに示しています。

「(中略)おぬしは陛下のお傍を離れるな」(P62)

「万が一、億が一にも、ヒルメス殿下の刃が陛下にせまったら、陛下をお守りできるのはおぬししかおらぬ」(P64)

「キシュワード卿やクバート卿の技量は、ヒルメス殿下に劣らぬだろう。だがヒルメス殿下の怨念と憎悪は、技や力を超えるかもしれぬ。ヒルメス殿下を討ち取ることができるのは、おぬしだけだ」(P64)

ダリューンこそが、アルスラーン戦記という物語の中で、アルスラーンを除いてもっとも欠かすことのできないキャラクターであることを作者自身が示した、それが15巻の持つ裏の意味だったのではないかとあたしは考えます。

おわりにかえて

それにしても受け入れがたい。その一言に尽きます。特にもアルスラーン戦記刊行の間隔が非常に空いているので、この巻だけでナルサスとアルフリードの死亡フラグ立てと死を一括で済ませてしまったように感じてしまうところがあります。正直、ナルサス死亡フラグって12巻くらいにしかないと思うんですよね。その12巻のフラグも、ナルサス以上にアルスラーン戦記という物語の結末のフラグというか、つまりアルスラーン自身が礎となって蛇王を封印して以後蛇王が復活することはなかった的なオチの暗示っぽいと思ったりするわけです。

その上ヒルメスに殺させて、しかもヒルメス自身に殺したことで世界が色を失った気がすると思わせてるあたりほんとひどいと思います。ヒルメス殿下におかれましてはぜひダリューンとの一騎打ちに敗れてその首をさらしていただきたいと考える次第です。

なんで生きてるんだヒルメスアルスラーンの最大の過ちは7巻でヒルメスを殺さなかったことだと思います。(今回のオチ)

*1:第7巻「王都奪還」第5章

*2:13巻第4章

2014-12-31

[]2014年に読んだ本のおすすめ 17:01 2014年に読んだ本のおすすめ - 明日はきっと。 を含むブックマーク 2014年に読んだ本のおすすめ - 明日はきっと。 のブックマークコメント

本当に今年読んだ本が少なくて、たぶん40冊くらい。しかもほとんどシリーズの続きものなんですが、今年読んでよかった本を何冊かピックアップ☆

大倉崇裕「福家警部補の挨拶」創元推理文庫

福家警部補は今日も徹夜で捜査する。

本への愛を貫く私設図書館長、退職後大学講師に転じた科警研の名主任、長年のライバルを葬った女優、良い酒を造り続けるために水火を踏む酒造会社社長――冒頭で犯人側の視点から犯行の首尾を語り、その後捜査担当の福家警部補がいかにして事件の真相を手繰り寄せていくかを描く倒叙形式の本格ミステリ。刑事コロンボ、古畑任三郎の手法で畳みかける、4編収録のシリーズ第1集。

刑事コロンボシリーズを愛する作者が自ら放った倒叙もののミステリ、ということで、コロンボや古畑任三郎シリーズのように、読者に先に犯人の犯行の様子を示し、刑事である主人公が何を根拠にどのように犯人を追い詰めていくかを楽しむ物語です。

主人公の福家警部補、飄々とした女性なのですが、日頃の言動から多岐にわたる趣味をお持ちと見え、いつ寝ているのかさっぱり見当の付かない、謎めいた方です。この福家警部補が、鋭い観察眼でもって犯人のほころびを突き、落としていく様は圧巻の一言。

本作には短編4本が収録されているほか、文庫で続編「福家警部補の再訪」、四六判で「福家警部補の報告」とシリーズが続いています。あたしは文庫の「再訪」まで読みましたが、どれもクオリティの高いミステリだと思いました。特に「挨拶」に収録された『オッカムの剃刀』という短編が秀逸です。

福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)

福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)

福家警部補の再訪 (創元推理文庫)

福家警部補の再訪 (創元推理文庫)

麻耶雄嵩「貴族探偵」集英社文庫

自称「貴族」で趣味は「探偵」という謎の男が、コネと召使いを駆使して事件解決! 斬新かつ精緻なトリックと過去に例のない強烈なキャラクターが融合した、奇跡の本格ミステリ集。

設定の強烈さに仰け反りながら読み進めたら、甲乙付けがたい短編ミステリが収録されていたでござる!

もうこのあらすじ以外、信じて読んでいただくしかないと思います。何を書いてもネタバレとはこのことだ!

強烈な、本当にとんでもないキャラクターが繰り出すエピソードとその結末をぜひ楽しんでいただきたいです。いやほんと。あらすじ読んで安楽椅子探偵ものかと思ってたら…(絶句)って感じです。はい。

貴族探偵 (集英社文庫)

貴族探偵 (集英社文庫)

田中芳樹「天地鳴動 アルスラーン戦記14」カッパノベルス

中世ペルシアによく似た異世界の英雄物語―。

シンドゥラ国王・ラジェンドラは空城となったパルス国の要衝・ペシャワール城に入った。押し寄せてきたチュルク軍と一触即発かと思われたそのとき、魔軍が襲来する! 未知の脅威にさらされた両軍の運命は!? そして、魔軍を率いるイルテリシュの狙いは? ミスル国を掌握したヒルメスは南方へ進軍し、蛇王ザッハークの完全復活をもくろむ魔道士たちが暗躍する。パルス国土の再建に邁進するアルスラーンにも、兇悪なる魔手が迫る!! 超絶ヒロイック・ファンタジー小説、驚愕の書下ろし最新作、第14弾!

荒川弘先生による漫画化で話題となり、来年アニメになる田中芳樹先生のファンタジー小説の新刊。やっと出た…!と喜び勇んで購入して、そして死に行く愛着あるキャラクターに慟哭する、そんな感じです。

それにしても、まさかアニメ化するとは…。昔角川文庫で出版してたときに劇場版があったと思いますが、ここにきてアニメになることに喜びを隠せません。なにしろ、ちゃんと完結させてくれる可能性が高まったってことですから…!(本シリーズ第1巻の初版:昭和61年。2年に1冊ペース?)

すばらしい漫画化により、本作へ触れる方が増えてるんじゃないかと思いますので、ぜひぜひ原作に手を伸ばし、アルスラーンという少年の行く末を共に見守っていただけたらいんじゃないかと。

あと、ダリューンの勝ちっぷりと、ナルサスの知略と、アルフリードのけなげさと…(以下話が終わらないので強制終了)

2013-12-28

[]2013年に読んだ本のおすすめ まとめ 12:03 2013年に読んだ本のおすすめ まとめ - 明日はきっと。 を含むブックマーク 2013年に読んだ本のおすすめ まとめ - 明日はきっと。 のブックマークコメント

というわけで、毎年の恒例、読んだ本のなかでおすすめ本を紹介するエントリです。

今年はあまり新規に手を出せなかったように感じていて、というか、なかなか本を読む時間が確保できなくなってきてきついなあと。

昨年に引き続き、公式サイト等のあらすじを引っ張ってご紹介していきたいと思います。

櫛木理宇「ホーンテッド・キャンパス」角川ホラー文庫

八神森司は、幽霊が「見えてしまう」体質の大学生。片想いの美少女こよみのために、仕方なくオカルト研究会に属している。ある日オカ研に、女の顔の形の染みが、壁に浮き出るという悩みが寄せられ……。

まずは角川ホラー文庫で昨年始まった「ホーンテッド・キャンパス」シリーズから。6月にエントリを起こしましたが*1、その後4巻が出てさらに安定的におもしろくなってきました。

「視える」体質のヘタレ主人公・八神森司くんと霊に狙われやすい片思いの美少女こよみちゃんを巡るラブコメ的バタバタと、彼らが巻き込まれる心霊体験的ミステリーは、巻を重ねるにつれキャラクターの魅力でさらに輝いているように思います。

一個の青春物語としてもおすすめです。心霊的にはそこまで怖くないと思いますが。

あと4巻のラストとかマジ必見です。あれを外堀を埋める、という。

伊坂幸太郎「バイバイ、ブラックバード」双葉文庫

星野一彦は〈あのバス〉で連れていかれる事が決まっており、体型から態度まで何もかもが規格外の繭美に監視されていた。

星野は五股をかけており、連れていかれる前に5人に別れ話をしに行きたいと頼んだ。幼少期に母親が出先で交通事故に遭って死んでしまい、待たされることの心細さを身を持って知っていたからだ。仕方なく繭美が仲間に確認すると「面白そうだから」と言う理由で許可が下り、繭美は仕方なく星野に付き添う事になった。だが星野は〈あのバス〉で連れていかれる事を相手に言いたくないと言い、代わりに繭美と結婚するからという理由で5人に別れ話をしに行く事になった。

なんというハーレム。

じゃなくて、主人公の星野一彦はなにかやらかして連れて行かれることになり、繭美というなんともいえぬすごさの女の人に監視されながら、5股かけてた5人の女性1人1人にさよならをつげに行くという謎展開が織りなす物語が、あまりにもおもしろくておもしろくて。

そして読みながら、今時のラノベにあふれているハーレム展開の行く末の一つになりそうだなあと思って、ちょっと背筋が寒くなったり。

また、『辞書』がキーアイテムになって最後につながるのがnice!でした。

米澤穂信「折れた竜骨」創元推理文庫

ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。

自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、「走狗(ミニオン

)」候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年――そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ?魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?

2011年に日本推理作家協会賞を受賞した米澤ミステリが今年文庫に…!ということで。

今まで読んできた米澤作品とはうってかわって、魔法が存在する十二世紀のヨーロッパを舞台にということで、最初は意表を突かれるというか、正直面食らいましたが、しかし魔法があれば完全犯罪なんて楽勝と思わせつつ徐々に犯人に迫る様は圧巻の一言です。

また、主人公のアミーナがとてもいいキャラしてて、惚れそうでした。

上巻でも前提が覆される先の読めないミステリ、おすすめです。

折れた竜骨 上 (創元推理文庫)

折れた竜骨 上 (創元推理文庫)

折れた竜骨 下 (創元推理文庫)

折れた竜骨 下 (創元推理文庫)

結び

十二国記はこんなまとめエントリでおすすめするまでもなくおすすめなのでやめて上記の3つになりました。

近年、本屋に行ってもなかなか新しい本に手が出なくなったなあという印象ですが、来年はちょっとずつ読めたらいいなあと思っております。

今年もお付き合いいただき、ありがとうございました!

2013-06-25

[]ラブコメ+オカルト+ミステリ=甘酸っぱい!「ホーンテッド・キャンパス」 22:46 ラブコメ+オカルト+ミステリ=甘酸っぱい!「ホーンテッド・キャンパス」 - 明日はきっと。 を含むブックマーク ラブコメ+オカルト+ミステリ=甘酸っぱい!「ホーンテッド・キャンパス」 - 明日はきっと。 のブックマークコメント

5月にシリーズ新刊が出たタイミングで紹介すればよかったと思いつつ、「ホーンテッド・キャンパス」を簡単に紹介したいと思っていました。ほんと、余裕があれば5月のタイミングで書こうと思ってたんです。ほんと。

ホラーは味付け

本作は、第19回角川ホラー小説大賞で「読者賞」を受賞して刊行された作品です。したがって、中身は一応「ホラー」になりますし、実際舞台はとある大学のオカルト研究会だし、扱う事件も基本的に超常現象ものであります。

ただ、そういう要素はあくまでも「味付け」に近い感じで、主眼は人間関係におかれていると感じています。

あらすじを簡単に示すと、主人公の八神森司くんは「視える」体質(視えるだけで何もできない)。高校のときに悪い者に取り憑かれそうになった女の子に声をかけて救ったら、あらかわいい!その女の子に一目惚れするも何もできないまま卒業、しかも一浪しちゃう!でも、なんとか大学に入ったら、そこにはあの女の子が…!仲良くなるために、あの子のいるサークルに入ろう、オカルト研究会だとしても…。

そしてそこで出会う事件の数々、というのが本作の形であります。事件も、オカルト要素も、怖さも、どれも高いレベルで「まとまっている」話でありますが、読み進めるごとに「とってもヘタレな主人公が特定の女の子と仲良くなるために奮闘する」という絵があって、それを表現するための事件であり、オカルトであるように思えてくるのです。

森司くんとこよみちゃんの成長を愛でる

森司くんが籍を置くことになるオカルト研究会に、除霊ができるような強い霊能力を持つ人は誰もいません。「視える」人が森司くんを含めて2人だけ、あとはみんな「視えない」し祓えない。そんな研究会に相談しにくる学生や先生とコミュニケーションを取りながら、研究会のメンバーが極めて現代的な手法で解決に導くのが本作の特徴と思います。

必然的に多くの人(だけではなく霊とも)と接することになり、そこで様々な経験をし、支え支えられ、守り守れらという中で森司くんは成長し、好きな女の子との距離を縮めていきます。その好きな女の子、名前をこよみちゃんといいますが、彼女は人一倍霊に取り憑かれやすい性質でありつつも、彼女もまた成長を見せるのです。この二人の成長と、それを生暖かい目で見守る他のオカルト研究会の面々という構造がとても温かく作品を包み込んでいて、ホラーという分野でありながら甘酸っぱいラブコメを体現している、非常によい作品です。

時々混じる怖い話に要注意

温かいなあと思って読んでいると、うっかり怖い話が混ざってたりするので油断できない作品でもあります。個人的には、1巻の3話、2巻の最終話あたりは結構怖く仕上がっているので、油断していると「げっ…」て思うこと請け合いです。