始まった座席の快適性向上競争

近年の飛行機は航続距離が伸びたため、日本から米国東海岸や欧州まで十四時間もノンストップで飛ぶので、ますますシートの快適性が重要になっている。エアラインは、ファーストクラスは「個室化」を、ビジネスクラスは「フルフラット化」に乗り出した。

夜行便や長距離便でのフルフラット・シート(水平に倒せる座席)はほんとうに身体が楽で、疲れ方が全然違う。これまでビジネスクラスが違う点は、座席間隔が広いことと、リクライニングの角度がエコノミーよりも深いことくらいだった。しかし、BA、スイス、シンガポール航空などはビジネスクラスでもフルフラット座席の装備に踏み切った。

一方、プライベート旅行で圧倒的に利用頻度の高いエコノミークラスは窮屈で苦しんでいたが、ここにも改善の兆しがみられる。ひとつはエコノミークラスを正規運賃客と格安・団体客に分けて正規運賃客を優遇しようという動きだ。

BAは正規運賃客をビジネスとエコノミーとの中間クラスと位置づけ(名称は「ワールド・トラベラー・プラス」)、座席スペースを広げた。ジャンボ機を例にとると、横一〇列を八列(2−4−2の配置)にしてシート幅を四七センチ(以前は四三センチ)に、前後の間隔(ピッチ)を七九センチから九七センチに広げた。同様な動きは他社でもある。

さらに、アメリカンはエコノミークラス全体のピッチの拡大に乗り出した。一般的なシートピッチは七九―八六センチが標準なのだが、アメリカンの計画によれば、二〇〇一年の夏頃までに八八−九〇センチに広げるという。こんな競争ならどんどんやってもらいたいものだ。

また、コンチネンタルは一五〇〇万ドルをかけて荷物スペースを拡張して機内持ち込み手荷物の制限をなくし、荷物の多い観光客からは好評を得ているが、機内への乗り込み、荷物を整理するのにこれまで以上に時間がかかるので、素直に喜んでばかりもいられない。

日本の空は長年「三社体制」といわれてきたが、実は日本には二〇社以上のエアラインが存在する。といっても、一九九八年に三五年ぶりにスカイマークエアラインズと北海道国際航空(エア・ドゥ)が参入するまでは、三社のグループに属しているか、離島などを結ぶ地域内の小規模なエアラインしかなかったのも事実である。


新規参入には二〇〇〇年に仙台を本拠地にするフェアリンクも加わり、大手ではできないニッチ市場を狙っているが、大手は市場規模に合わせた機種、コスト、サービスの航空輸送会社をつくることによって、グループとして国際・国内、小規模から大規模市場に対応しようとしている。