夢色パティシエール&夢色パティシエールSP プロフェッショナル 総感

1年3ヶ月続いたシリーズも、とうとう終わりの日がやって来ました。1クールアニメにすっかり慣れた昨今だから、長期シリーズが終わると自分の体の一部を失うような感覚があります。でも、当たり前に見ていたいちごやバニラ、ショコラたちにもう会えないことが信じられない。「終わりですよ!」という明確な盛り上がりのない結末だったからか、今だに終わった実感が湧いてないんですよね。


前置きはともかく。今までの話を振り返りつつ、まとめていくことにします。

この作品の印象を大きく決定づけた1話2話。長期シリーズらしい地に足の着いた構成と、人の思いを重ねることで物語を作っていく丁寧さに感動したっけ。実は読み返してみるまですっかり忘れていましたが、これこそが「夢パティ」の魅力だったんだよね。そして、主人公のいちごの頑張りや、パートナーのバニラのラブリーさにすっかり引きこまれてしまいました。

今でこそ悠木碧竹達彩奈なんて夢のキャスティングだけど、当時は主演作も少なくて・・・というか、特に竹達彩奈あずにゃん以降はじめてのメインキャストで、そういう意味でも貴重な作品でしたね。

っと、キャラと声優の話は後でしよう。本筋に戻して・・・。聖マリー学園への進学を決めたいちごは、スイーツ王子やスイーツ精霊と出会う。王子様とお供の動物は、ザ・少女漫画って感じのモチーフで好き。妖精みたいなちっちゃいキャラがチョコチョコ画面を動いてるアニメが大好きなもので。本作品でも、時には本筋に貢献し、時にはスイーツ用語の解説をし、時には人間が話を進める横で遊んでたりするスイーツ精霊がちょう可愛かった!ただのマスコットというだけでなく、全員のキャラが立ってて楽しかったです。

序盤の山場にしてシリーズ屈指の名エピソードだったのが10話。いちごが挫けそうになって実家に帰るお話。いちごを支える家族と、キャリアモデルとしてのヒカルおじさん。いちご視点で見たお話を、ヒカル叔父さん視点で再構成してみると違った世界が見えてくる。そういう深みもまた魅力でした。

試練を乗り越えた後は、ひたすらスイーツ対決をするスポ根展開に!サクサク進む展開は見やすく、スイーツというあまり詳しくない世界への興味もあって楽しかったです。さすがに対戦相手の掘り下げは甘くなりがちでしたが、最大のライバル・天王寺さんを含めたメインキャラのエピソードは光るものがありました。

小城美夜ことオジョーさんが出てきたのもその辺りだっけ。この子はもう、作品全体のバランスを壊しかねない勢いがあったよね。超金持ちで、行動力もあって、テンションも高くて、油断してたら話を一気に持って行かれるようなパワーがすごかった。スタッフにも相当愛されてるようで、最後の最後まで敵キャラとしての存在感を発揮してくれました。矢作紗友里のハイテンション演技もすごかったなあ・・・。

グランプリも終わり、新シリーズ突入の51話。いちごたちが少し大人になって、ビジネスや恋愛といった方向を押し出していくシリーズ。安堂や花房もそれぞれの道を歩み、成長した姿で最終決戦に集合する!という構想だったのかなあ・・・。いちごの成長物語として素晴らしい話を見せてくれた前シリーズに比べて、残念ながら今ひとつ振るわなかったというのが正直な感想です。

ビジネスや恋愛を中心にするのもいいし、スイーツ王子がバラバラになるのも面白いと思う。ただ、新しいネタを並べてみたはいいけど扱いかねてるようで、全てにおいて中途半端になってしまったのが残念。ビジネスの話をするのなら、チャンスロスがどうのこうのっていう前に「コンテストで優勝するスイーツ」と「売れるスイーツ」の違いを明確にして欲しかったし、恋愛に話を向けるならいちごと樫野のドキドキエピソードを増やして欲しい。何より新キャラのジョニーがイロモノすぎて、扱いかねた挙句に最後は敵キャラって、何なんだオマエはって言いたくなるよね。

ただ少し考え方を変えると、「スイーツ王国ツアー」編ではスイーツ精霊が動きまわるのを堪能できたし、「モーニング・グローリー」編は戦い敗れた天王寺さんのアフターシナリオといった意味で楽しめたし、オマケの番外編と考えるのなら何となく分かる気がします。特に天王寺さんのシナリオは切なくて、この話が見れただけでも1クール余分にやってよかったと思います。60話では色々と考えさせられました。古いたとえですが、「SPプロフェッショナル」シリーズは「マクロス」の28話以降を認めるか?に近いものを感じますね。

ストーリーについてはこんなところかな。キャラクターは・・・いちごとバニラは上で書いたとおり。恥ずかしながら、竹達彩奈は「けいおん!」の梓しか聞いたことがなかったので、初回のバニラのキャラは軽い衝撃でした。おお、こんなハイテンションなキャラもやるのかーと驚いた記憶は今でも覚えてます。

そしてもう一つの大きな収穫は、山岡ゆりだなー。実は当初は「キンキン声でうるさい奴だな」などとヒドイことを思っていたショコラさんでしたが、24話辺りから気になり始めて。一度気になっちゃうと、そこからはもう早い。ショコラの台詞が出るたびに、一言も聞き漏らすまいと耳を澄ませるようになってしまいました。幸いなことに、ショコラのいじられキャラ属性が定着し始めた頃だったので、ショコラのいい声が沢山堪能できて嬉しかった。竹達の声はいつだって聞けるけど、山岡ゆりの声は当分聞けなくなるんだよ!どうしよう!

ショコラと言えば。樫野に対する感情にはパートナー以上のモノを感じられて、スイーツ精霊と人間との恋愛という深いテーマに入っていくのか?などと期待していたのに、カッシーなどという精霊とくっついてしまったのは残念です。ヘンな期待をしていた俺が悪いのですが。

当然ながら、主役の悠木碧もよかった。今でこそ(以下略)だけど、当時はこのくらいの高い年齢の役は初めて聞いたし、本人としても慣れないようで最初の数回は手探り感がありありでした。そこから段々といちごが馴染んでいくにつれて、ピュアな中学生らしさの中にも、さすが悠木碧と言うべき演技が随所に聞けるようになってきて楽しかったです。しかしまあ、今や「それ町」のトシ子ちゃんみたいな高校生も演じるようになってんだから、この1年ですごく成長してるよね。俺は悠木碧を度々「天才だ」と言うことがありますが、それは努力を否定する意味ではない。とこの場を借りて言っておきたいです。いちごをモノにしていく過程をずっと聞いてたら、才能だけでやってるなんてとても言えないよ。

あ、そうそう。忘れちゃいけないED。チビキャラが動きまわる初代EDが大好きでした。2クール目過ぎまでスタッフロールがど真ん中に入ってたのは悔しかったですね。

さて。長くなりましたが、大体そんなところかな。スポ根スイーツアニメを核にして、人の心を積み重ねたエピソードをしっかり土台に持ってる名作としての初代。1クールの後日談、余韻を感じさせるSPプロフェッショナル。まとめを書くに当たって今までの感想を全て読み返したのですが、こうして思い返してみると、俺は本当にこのアニメが好きだったんだなということを改めて思い知りました。