非行少年と無人島物語

 問題解決への選択肢が少ないこと。イメージ化がうまくできないこと。無人島に行ったら何を持ってゆき、何をするかという「無人島物語」では、非行少年や家庭内暴力少年は思いつくものが少ないことを私は経験している。知的に普通と思われるの少年なのに島ですると思いつくことが瑣末的なこと一つであった例がある。なお、私の経験では、箱庭で全くの模倣テーマ、たとえば「宝塚遊園地」を造るのは非行少年、特に嗜癖少年であった。これは極端例であるが、選択肢の少なさはかなり一般にいえるそうである(東京家裁主任調査官・藤川洋子による)。選択肢がわずかしかない人ほど、踏み越えが簡単であるはずである。手近な選択である 嗜癖にもなりやすいだろう(中井久夫「「踏み越え」について」『徴候・記憶・外傷』みすず書房、2004年(初出2003年)、p315)。


*日本社会でも広がりつつある「薬物依存」の問題を考えるうえで、示唆的です。