女性のPTSD治療について

 治療における患者の特性であるが、統合失調症患者を診なれてきた私は、統合失調症患者に比べて、外傷系の患者は、治療者に対して多少とも「侵入的」であると感じる。この侵入性はヒントのひとつである。(中略)
 特に、男性治療者に対する誘惑的態度は、不幸にもレイプによって女性としての歴史を始めた場合に多い印象がある。(中略)
 それが思春期の事件であった場合だけでなく、幼児の性的虐待の再演である場合もある。(中略)彼女は「結局はこの人も男性にすぎないのだ」と結論し、隠微な方法でこれを世間に暴露する。男性一般への一つの復仇である。こういう場合に「境界型人格障害」という診断を下すのはまだしも、インテンシヴな治療を試みて難症化が起こることは大いにありうるのではないか。
 犠牲者は聖者ではない。彼女が傷口に塩を塗るような「精神的リストカット」を行うことも、外傷の再演を強迫的に求めることも、どんな男性もしょせん男性であることを確認しようとすることも、これらがすべてないまぜになっていることもありうる(中井久夫「トラウマとその治療経験」『徴候・記憶・外傷』みすず書房、2004年(初出2000年)、pp.106-107)。


*やはり私には、木嶋佳苗被告は性的虐待による外傷系の患者ではないか、と思えてなりません。